「実費補償タイプ」の医療保険ってどんな仕組み? 加入するメリットについても解説
配信日: 2022.07.12
特に近年、実費補償タイプが増えていますが、実費補償の補償内容を知らない人もいるかもしれません。また、加入した場合、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。
加入を検討する上での注意点を含めて解説します。
執筆者:荒木和音(あらき かずね)
2級ファイナンシャルプランニング技能士
実費補償タイプの医療保険とは?
実費補償タイプの医療保険とは、病気やけがで入院したときにかかる費用のうち、公的医療保険から支払われない自己負担分をカバーする保険です。主に損害保険会社で取り扱っています。
一方、日額保障するタイプの医療保険は、入院日数や手術の有無などに応じて、あらかじめ決められた一定の保険金が支払われます。一般的に、生命保険会社から発売されています。
両タイプの違いについて、20日間入院して手術した場合に、公的医療保険適用後の医療費自己負担が20万円となった場合を例に考えてみましょう。実費補償タイプの医療保険で支払われる金額は、20万円です。これに対して、日額保障タイプの医療保険で支払われるのは、20日間分の入院給付金と手術給付金の合計額となります。
実費補償タイプの医療保険に加入するメリット
治療費を心配せずに安心して治療に専念できるのが、実費補償タイプの医療保険に加入する大きなメリットです。
入院日数が年々短くなってきている反面、入院時の1日当たりの自己負担費用は高額化する傾向にあります。生命保険文化センターによると、1日当たりの入院費用の平均は2万3300円です。日額保障タイプの医療保険に加入している場合、短い入院では十分な金額の給付金を受け取れない可能性があります。
例えば、10日間入院して、公的医療保険適用後の医療費自己負担が20万円となった場合、日額5000円の医療保険から支払われるのは、5000円×10日=5万円です。15万円の不足が生じてしまい、この部分は自己負担になってしまいます。
また、医療費以外に自己負担となる費用として、主に個室を利用する場合にかかる「差額ベッド代」があります。差額ベッド代の平均は6354円(2019年7月1日時点のデータ)となっているため、自己負担は決して少なくありません。実費補償タイプの医療保険であれば、差額ベッド代についてもオプションで補償する商品があります。
なお、実費補償タイプのがん保険であれば、がんにかかり、公的医療保険制度の対象外となる「自由診療」を受ける場合でも補償対象となるのもメリットの一つです。
実費補償タイプの医療保険に加入するデメリット
実費補償タイプの医療保険は、保険期間が1年や5年といった短期に設定されているケースが一般的です。更新をするたびに保険料が上がるため、年齢を重ねて病気やけがのリスクが高くなるタイミングで保険料負担が重くなり、契約を継続しにくくなるのがデメリットです。
これに対し、一般的な日額保障タイプの医療保険は、終身型も選べるため、若いうちに加入しておけば比較的安価な保険料で一生涯、保険を継続できます。
また、治療にかかった実費分しか補償されないため、入院に伴う収入の減少分の補填はできません。日額保障する医療保険では、入院日額を多めに設定していれば、受け取った給付金で収入を補填できる場合もあります。
公的保険でカバーされる範囲を考慮した上で加入を検討しましょう
入院中の治療費については、高額療養費制度の給付対象です。高額療養費制度があることで、多額の医療費がかかったとしても、自己負担する金額には所得によって上限があります。そのため、所得が少なく自己負担の上限額が低い場合には、金銭的な負担も少なくなるため、あえて実費保障タイプの医療保険に加入するメリットは少ないでしょう。
また、実費補償の医療保険では1回の入院で支払われる保険金額に上限が設けられているケースがあります。長期間の入院が心配な方は日額保障タイプの医療保険に加入し、入院日額を大きく設定した方が受け取れる保険金額は多くなる可能性があるでしょう。
出典
厚生労働省 平成29年(2017)患者調査の概況3 退院患者の平均在院日数等
公益財団法人 生命保険文化センター 平成22年度 生活保障に関する調査
公益財団法人 生命保険文化センター 平成25年度 生活保障に関する調査
公益財団法人 生命保険文化センター 平成28年度 生活保障に関する調査
公益財団法人 生命保険文化センター 令和元年度 生活保障に関する調査
厚生労働省 主な選定療養に係る報告状況
損害保険ジャパン株式会社 入院パスポート(医療保険)
セコム損害保険株式会社 補償内容
一般社団法人日本再生医療学会 自由診療
AIG損害保険株式会社 医療保険(実費補償型)パンフレット
厚生労働省 高額療養費制度を利用される皆さまへ
執筆者:荒木和音
2級ファイナンシャルプランニング技能士