更新日: 2022.08.11 その他保険

妻や子どもが扶養から抜けると、社会保険料は安くなる? いまさらだけど社会保険料の仕組みとは?

妻や子どもが扶養から抜けると、社会保険料は安くなる? いまさらだけど社会保険料の仕組みとは?
先日、会社勤めをされており、かつ不動産所得がある方から、扶養している妻(配偶者)とお子さんの収入が増えるため、その方の会社の健康保険の扶養を抜けて、別途国民健康保険に入る手続きをしたいとの相談を受けました。
 
企業の健康保険は、中小企業では「全国健康保険協会(協会けんぽ)」、大手企業では「健康保険組合」に加入することになります。日本は国民皆保険制度を採用しているため、企業に属しない場合は、自治体が運営する国民健康保険に加入します。
 
後日、ご相談者さまと話したところ、その方は、妻が自分の健康保険から抜けた分、保険料が安くなるのではないかと考えられていました。
 
通常、あまり意識されていない健康保険を含む社会保険の負担額について確認をしたいと思います。
高畑智子

執筆者:高畑智子(たかばたけ ともこ)

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP認定者

社会保険とは

会社員の方の社会保険とは、病気・けがをしたときのための「健康保険」と、老後の年金を確保するための「厚生年金保険」があります。
 
そのほかに、失業したときのための労働保険がありますが、監督官庁が違い、かつ、計算も健康保険および厚生年金とは異なります。
 
また、健康保険では40歳以上64歳までの方は、介護保険の負担も必要となります。
 
健康保険と厚生年金は、報酬月額によって保険料が変わります。収入により等級が区分されており、例えば、愛知県の場合、標準報酬月額20万円(報酬月額19万5000円~21万円)の人は健康保険17等級、厚生年金14等級です。
 
令和4年3月から健康保険料9.93%、介護保険料1.64%、合わせて11.57%となっており、介護保険負担がない人で健康保険料全額1万9860円になりますが、会社と折半になるので、個人負担額は9930円です。
 
介護保険の負担がある方は全額2万3140円、個人負担額1万1570円。厚生年金保険18.3%全額3万6600円、個人負担額1万8300円となります(※1)。
 
健康保険(介護保険含む)も厚生年金も、算定基礎になっているのは報酬月額で、この報酬月額は扶養による控除額等がないため、扶養者がいたとしても負担額に影響はでません。また、事業主と折半で半額負担となります。
 
国民健康保険は市町村補償をする保険となり事業主がいないため、全額自己負担です。会社を辞めて会社の任意継続をした場合も事業主の負担がないため、全額負担となります。
 
これ以外に、事業主は「子ども・子育て拠出金」の負担をしています。これは、事業主のみの負担となり、労働者には負担がありません。「子ども・子育て拠出金」は、児童手当の支給に要する費用等の一部として、事業主が納付するものです。
 
労働保険料は、労働者と事業主負担が違います。
 
令和4年4月1日~9月30日で、一般事業の場合、労働者が0.3%、事業主が0.65%となっています。令和4年10月1日~令和5年3月31日は、労働者0.5%、事業主0.85%となっています(※2)。これは、コロナの影響で雇用調整助成金の拠出額が増えたため、保険料率が上昇したと考えられます。
 
しかし、保険料率が上がったとはいえ、厚生年金負担率からみると、まだまだ小さいといえるかもしれません。
 

健康保険とは

会社員が加入する「全国健康保険協会(協会けんぽ)」や「健康保険組合」は、月給を基準とした「標準報酬月額」をもとに保険料が決まります。扶養される方が1人であっても、2人であっても月給が基準となるため、扶養者が何人いても支払金額は変わりません。
 
また、不動産を売却して譲渡所得があったとしても、これについては月給とは関連のない所得とされ、健康保険料への影響はありません。
 
自営業の方や無職の方、雇用者でも企業の健康保険に加入していない方などは、自治体が運営している国民健康保険に加入します。
 
国民健康保険では、まず1年間の総収入から「所得」を算定します。そして、それを基にして、翌年の保険料を決定します。
 
そのため、不動産所得(不動産収入や不動産譲渡)があった場合は、「所得」金額から保険料が決定されるため、上がることがあります(※3)。
 
(※3)不動産譲渡において損失が出る場合は、この限りではありません。
 

まとめ

今回、冒頭に記載したご相談者さまの場合は、妻とお子さんをそのままご自分が加入されている会社の健康保険に継続加入していれば、妻とお子さんの健康保険の保険料は負担がなかったはずですが、2人の国民健康保険の加入手続きをされたため、別途保険料の負担が増えることになりました。
 

出典

(※1)全国健康保険協会 令和4年度保険料額表(令和4年3月分から)
(※2)厚生労働省 令和4年度雇用保険料率のご案内
全国健康保険協会 ホームページ
 
執筆者:高畑智子
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP認定者
 

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