【円安の今だからこそ】外貨建保険のリスクとは?
配信日: 2022.08.19
しかし、一般社団法人生命保険協会によりますと、外貨建保険に関する苦情は統計の収集を始めた2012年度から7年連続で増えて、約5倍になりました。
苦情を寄せる消費者の多くが高齢者とされます。外貨建保険の苦情が収まらない背景にある特有のリスクとはなんでしょうか。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
ファイナンシャルプランナー
FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。
編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。
FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。
このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。
私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。
外貨建保険とは?
外貨建保険とは、米ドルやユーロ、豪ドルといった外貨で保険料を払い込み、運用を行う商品です。運用されたお金は、円もしくは外貨で保険金や「解約返戻金」として受け取ることができます。
外貨建保険の種類としては、終身保険、個人年金保険、養老保険などがあります。外貨にはさまざまな種類がありますが、米ドルで運用される保険が最もポピュラーです。外貨建保険は、為替の影響を受けることが特徴です。
例えば、1万ドルの解約返戻金を受け取る時に1ドル=90円の場合、受け取る円貨は90万円ですが、円安が進み、1ドル=110円だと110万円になります。超低金利の日本と比べると、米ドルやユーロなどは金利が高いので、高い利率で運用できることが魅力です。
苦情が多い!? 外貨建保険
高い利率で運用できる外貨建保険に魅力を感じる方は少なくありません。また、円貨以外にも外貨を持つことで、資産を分散させることもできます。
このような魅力のある外貨建保険ですが、購入した消費者から苦情が寄せられていることもまた事実です。2020年7月に生命保険協会が公表した報告書によりますと、外貨建保険の苦情は2019年度に2822件と過去最高を記録し、その後減少に転じています。
図表 銀行等代理店で発生した外貨建て保険・年金の新契約に関する苦情件数
年度 | 苦情件数 | 苦情発生率 |
---|---|---|
2014 | 922 | 0.12% |
2015 | 1239 | 0.10% |
2016 | 1665 | 0.10% |
2017 | 1888 | 0.09% |
2018 | 2543 | 0.08% |
2019 | 2822 | 0.08% |
2020 | 1866 | 0.05% |
2021 | 1375 | 0.04% |
一般社団法人 生命保険協会 生命保険各社の苦情受付情報・保険金等お支払情報について
外貨建保険のリスク
外貨建保険は通常の円貨建保険にはない特有のリスクがあります。商品の購入時に商品性やリスクを理解しないまま購入してしまうことが、苦情につながっているものと考えられます。満期時や解約時に思わぬ損失をこうむらないようにしっかりリスクを理解しておきましょう。
為替リスク
銀行の窓口で外貨建保険を購入する消費者の中には、銀行預金と同じ感覚で購入する人がいます。しかし、外貨建保険は預金どころか通常の円貨建の保険とも大きく異なります。最も大きな違いは為替変動の影響を受ける点です。
例えば、ドル建保険に加入する場合、円ドルレートの影響を受けます。為替は毎日変動しており、契約時よりも解約時や満期時に円高が進行していると、外貨から円貨に両替する時に受取額が減少してしまいます。結果的に受け取る保険金が払込保険料よりも少なくなることがあります。
外貨の高い利率に魅力を感じて、加入しても為替変動の影響で運用益が帳消しになることもあるのです。このように外貨建保険は為替次第で高い運用益を実現したり、損失が発生したりといったハイリスク・ハイリターンの保険と言えます。
ただし、商品によっては保険金や解約返戻金を外貨で受け取れます。この場合、受け取った外貨を口座に持っておき、為替が有利に変動してから円貨に両替することができます。
手数料がかかる
外貨建保険は円貨建保険では発生しないさまざまな手数料が発生します。
・保険料の支払時や保険金の受取時に円と外貨を交換する手数料(為替手数料)
・保険契約・維持手数料
・短期間で解約した際の解約手数料
・年金で受け取る時の管理手数料
このように手数料が発生することで、為替変動の影響を受けなかった場合でも解約返戻金が払込保険料を下回ることがあります。これらの手数料についても銀行の窓口で十分な説明がされないことで後の苦情につながるようです。
受取額が予想できない
保険加入の目的は、人によってそれぞれですが、将来の教育資金や老後資金など元本割れを許容できない目的の場合には、外貨建保険は適していません。
通常、保険が満期を迎えるのは10年以上先ですが、将来の為替相場を予想することはプロのトレーダーであっても不可能です。高い運用益を狙える可能性がある反面、将来的な受取額が不確実であり、正確な受取額を予想することができません。
外貨建保険の「元本保証」とは?
外貨建保険が為替相場の変動によって元本割れのリスクがあると説明しました。しかし、銀行の窓口では、「元本保証」と勘違いを起こしかねない商品説明をする場合があります。
ただ、ここで言う元本保証とは、米ドルやユーロなどの「外貨ベース」の話であり、「円貨ベース」で元本が保証されているわけではありません。したがって、保険金の受取時や解約時に円貨で受け取る時に為替相場の影響によって元本割れを起こす可能性があることを理解しておきましょう。
ドル建保険なら安全?
外貨建保険で最も人気な外貨は米ドルです。米ドルは世界最大の経済大国であるアメリカの経済力に裏打ちされた信用力を持ちます。通貨の価値が安定しており、安定性が将来にわたって期待できます。
したがって、銀行の窓口では、「外貨建保険の中でもドル建保険はリスクが小さい」と説明されることがあります。
しかし、米ドルも外貨ですので、為替変動の影響を受けることに違いはありません。アメリカの利上げや日本のデフレ対策といった諸要因によって為替相場は簡単に変動します。ドル建保険であっても他の外貨建保険と同様にリスクがあることを理解しておきましょう。
出典
三菱UFJ銀行 ドル建て保険のメリット・デメリット!どんな人が向いている?
金融広報中央委員会 保険で貯めるメリットとデメリット
一般社団法人生命保険協会 生命保険各社の苦情受付情報・保険金等お支払情報について
独立行政法人国民生活センター 外貨建て生命保険の相談が増加しています!
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部