離婚時の疑問。あれ?財産分与の対象に「生命保険」ははいるのか?
配信日: 2018.04.18 更新日: 2019.01.10
Text:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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財産分与のポイント
まず、財産分与について確認しておきましょう。
財産分与は、婚姻期間に夫婦の協力によって築いた財産を、離婚時に2人で分けるものです(清算的財産分与)。
このほか、専業主婦(夫)であった者が、離婚後、仕事を始めるときまで生活を援助する趣旨で、分与されるものもあります(扶養的財産分与)。また、慰謝料の支払いとして、財産分与が行われることもあります。
財産分与の対象となるのは、不動産や預貯金など財産的価値のあるものです。財産分与は、婚姻期間中に夫婦の協力によって築いた財産を分けるものなので、結婚前に築いた財産や別居後に築いた財産は対象外です。
また、親から贈与された財産や、相続した財産も財産分与の対象となりません。住宅ローンや借金がある場合は、これら負債を財産の額から控除した金額が、財産分与の対象となります。厚生年金の納付記録も対象です(年金分割制度)。
財産分与の割合は、原則として2分の1です。専業主婦(夫)も2分の1請求できます。内助の功があるからです。年金分割も財産分与も、離婚後2年以内に請求する必要があります。
貯蓄型の生命保険も財産分与の対象となる
財産分与の対象となるのは、不動産や預貯金など財産的価値のあるものです。生命保険には、掛け捨て型と貯蓄型があります。貯蓄型は財産的価値がありますので、財産分与の対象となります。具体的には、離婚時の解約返戻金が対象です。
結婚前から生命保険に加入している場合は、結婚時点の解約返戻金と離婚時の解約返戻金の差額が、婚姻期間中に築いた分ですので、この婚姻期間中の増加分が財産分与の対象となります。
解約返戻金はどこを見ればわかるかですが、解約返戻金は、保険証券に記載があります。
ただし、通常は、1~5年は1年ごと、それ以降は5年刻みで記載されています。より詳しいデータは、保険の設計書に書かれていますので、保険証券と一緒に保管しておきましょう。
設計書がない場合、最近であれば契約を媒介した営業マンに、契約当時の設計書のコピーを頼んでみましょう。保険会社が、解約返戻金の推移の資料を出してくれる場合もあります。
生命保険を名義変更するという手も
生命保険を財産分与するときに、保険を解約して現金化して分けるという方法のほか、名義変更するという方法もあります。
例えば、契約者:夫、被保険者:妻、受取人:夫、の契約形態で生命保険に加入している場合、契約者と受取人を妻に名義変更します。名義変更後の保険料は妻が支払う必要があります。
この場合のメリットは、若いうちから加入していた保険であれば、新たに入り直すよりも保険料が安い点です。また、新規に加入し直す場合は、健康状態によっては加入できない場合もあります。
貯蓄型の保険は、掛け捨ての保険に比べ保険料が割高ですが、保険料が負担になったときには払済保険に変更することも可能です。
契約者:妻、被保険者:妻、受取人:夫、の場合、離婚後、そのまま放置しておくと、もし、妻に万が一の場合、元夫が死亡保険金を受け取ることになります。受取人を子どもに変更するなど忘れずに手続きをしましょう。
子ども保険(学資保険)の名義変更は複雑です。子ども保険(学資保険)は、契約者が死亡したときに、以後の保険料が免除されるのが特徴です。満期保険金は契約どおり支払われます。また、満期まで育英年金が支払われるタイプもあります。
したがってほかの保険と異なり、被保険者の子どもだけではなく、契約者の年齢や性別によって保険料が変わってきます。親の健康状態によっては加入できません。
このような事情があるので、簡単に名義変更することはできません。子ども保険(学資保険)の名義変更については、保険会社に確認しておきましょう。
Text:新美 昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。