医療保険は効率よく入ろう 年齢別、見ておきたいポイントとは(50代編)
配信日: 2018.05.15 更新日: 2021.10.08
特に男性は下図のように50代が、がんの罹患率(りかんりつ・発症する人の割合)が急激に上がるタイミングとなり、男女ともに高齢になるほどその割合が増加します。
これまで加入してきた、医療保険やがん保険を再度見直したいと思われていても、どこから手を付けたらよいのか迷うこともあるでしょう。
あるいは、新たな保険に入ろうしても、持病があることや年齢が上がることで、保険料が高くなるため、躊躇する場合もあるでしょう。
公的な健康保険制度でまかなわれるものでは足りない部分を、民間の医療保険で補うのが、効率よい保険のかけ方であることは30代編でお話ししたとおりですが、40代とも人生の局面が違う反面、病気にかかるリスクが高まる中で、効率的に保険に入るにはどうしたらよいでしょうか。
執筆者:岩永真理(いわなが まり)
一級ファイナンシャル・プランニング技能士
CFP®
ロングステイ・アドバイザー、住宅ローンアドバイザー、一般財団法人女性労働協会 認定講師。IFPコンフォート代表
横浜市出身、早稲田大学卒業。大手金融機関に入行後、ルクセンブルグ赴任等を含め10年超勤務。結婚後は夫の転勤に伴い、ロンドン・上海・ニューヨーク・シンガポールに通算15年以上在住。ロンドンでは、現地の小学生に日本文化を伝えるボランティア活動を展開。
CFP®として独立後は、個別相談・セミナー講師・執筆などを行う。
幅広い世代のライフプランに基づく資産運用、リタイアメントプラン、国際結婚のカップルの相談など多数。グローバルな視点からの柔軟な提案を心掛けている。
3キン(金融・年金・税金)の知識の有無が人生の岐路を左右すると考え、学校教育でこれらの知識が身につく社会になることを提唱している。
ホームページ:http://www.iwanaga-mari-fp.jp/
若い頃に加入した終身保険に医療特約をつけている場合
現在50代の人が30年前の20代だったころ、昼休み時などに保険会社の外交員が、一般企業の社内へ入ることが許可されている時代でした。外交員に勧められるままに終身保険に入り、その後も持ち続けている人は幸運です。
なぜなら、当時の生命保険は予定利率が5.50%程度と高水準で、いわゆるお宝保険とも呼ばれるものだからです。予定利率とは、保険会社が契約者に対して約束する運用利回りのことです。
ちなみに、2017年4月からの予定利率は0.25%と、当時と比べると圧倒的に低いです。
こうした終身保険に定期保険や医療保障の特約をつけている人は、何度か更新期を迎えたことと思います。当然、同じ条件で更新すると保険料が高くなります。
一般的には、お子さんが成長すれば今後かかる教育費も少なくなる、あるいは自活できるようになることから、死亡保障額は減額できると考えられます。そのため、生命保険の定期部分の保障額を減らし、医療保障の特約はほぼ同じ条件にする方法があります。
例えば、死亡保障3500万円(終身部分500万円、定期部分3000万円)に医療保障の特約(入院1日1万円、手術5~10倍など)をつけていたとします。
この場合、死亡保障の定期部分3000万円を500万~1000万円等へ減額して、医療特約はそのまま残して、トータルの保険料をこれまでと同金額程度に抑えることができる可能性があります。
ただし、トータルの保険料には納得がいく場合でも、古い保険なので現代医療に保障内容が則していないと考えられることもあります。
例えば、入院費の支給が入院4日目以降からで、先進医療補償がついてないことがほとんどでしょう。
現代の医療保険への新規加入を希望するなら、生命保険の主契約(死亡保障)だけ必要な保障額へ更新をして、医療特約を外す方法もあります。古い保険では、特約で付けた医療保障も、掛け捨てではなく解約返戻金がある場合がありますので、確認することをお勧めします。
すでにお宝保険を解約や下取りに出してしまった人も、次に続く解説をご覧ください。
新たに医療保険に入る場合
50代になると病気のリスクも高まることから、新規加入は保険料も当然高くなります。公的な医療保険で足りない部分は貯蓄で賄うというのも1つの考え方です。
しかし、貯蓄や年金などが少ない場合は、医療保険に終身で入るというのも選択肢の1つになります。
払込期間が短いと月あたりの保険料が高額になります。
年金生活に入る前に支払いを終えたい思い、65歳までに払い済みを選択すると、一例では54歳女性の場合、83歳まで生きなければ、終身払いの方が支払い保険料は少なくなるケースが多いようです。
83歳という年齢は、平均寿命(88歳)よりは低いハードルですので長生き家系の人にはよいでしょう。どちらを選択するのが得かは、亡くなるまでわからないので、終身を選択することもあるでしょう。
終身払いは、生涯支払う月額保険料は変わらなくても、年金暮らしになれば、保険料は安いに越したことはありません。保険を最も効率的に利用するには、貯蓄には時間がかかり、自己負担が重い「大きな保障」を買うことです。
保険料を安くするには、保障を削るしかありませんが、大きな保障は削ってはいけません。
例えば、公的医療保険の適用外である「先進医療」保障などです。
では、何を削るのか、というと入院期間です。近年、医学の進歩や政府の方針などから、入院期間は短縮傾向にあります。
かつては、1つの病気での入院は120日や180日まで保障されるものが一般的でしたが、最近では60日や120日が多く、30日というものも販売されています。
3大疾病のうち、がんや心疾患では平均入院(在院)日数30日以内という厚生労働省の調査結果があります(上図)。
脳疾患は89.5日と長めですが、こうした長期入院への備えは、入院給付金ではなく、入院一時金をもらうことでカバーする方法もあります。予算が許せば、入院一時金の特約をつけることができる保険もありますので、検討に値するでしょう。
また、新規加入には告知が必要です。保険加入の条件は保険会社や商品によっても異なります。特に持病がある人は、保険会社の提示している加入の条件に合っているかどうか確認が必要です。
一般の医療保険の加入条件を満たさない場合は、保険料は高くなりますが、引受基準緩和型の医療保険もありますので比較してみましょう。
Text:岩永 真理(いわなが まり)
一級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®
ロングステイ・アドバイザー、住宅ローンアドバイザー、一般財団法人女性労働協会 認定講師。IFPコンフォート代表