相続対策のための生命保険の活用

配信日: 2022.12.06

この記事は約 3 分で読めます。
相続対策のための生命保険の活用
被相続人の死亡に伴い支払われる「生命保険金」は、相続などによって取得したものとみなされますが、民法上は相続財産ではないので受取人の固有の財産となります。相続税を計算する際には、相続財産とみなして相続税を課税する財産として扱います。
 
今回は、相続対策の視点から生命保険について紹介します。
仁木康尋

執筆者:仁木康尋(にき やすひろ)

日本FP協会CFP(R)認定者、国家資格キャリアコンサルタント

人事部門で給与・社会保険、採用、労務、制度設計を担当、現在は人材会社のコンサルトとして様々な方のキャリア支援を行う。キャリア構築とファイナンシャル・プランの関係性を大切にしている。

生命保険金の相続税の取り扱い

生命保険金は相続税計算上相続財産としてカウントされますが、非課税枠があります。「500万円×法定相続人の数を乗じた額」を保険金から差し引くことができます。

(例)相続人が配偶者と2人の子がいる場合の非課税枠

・法定相続人の人数  : 配偶者と子が2人ですので合計3人
・非課税限度額の計算 : 500万円×3人=1500万円

このケースでは1500万円までは相続税が課税されません。
 

相続税の納税資金対策としての生命保険

2013年度税制改正によって、2015年1月1日以降に発生した相続の基礎控除額が従来の60%に引き下げられています。今までは相続税がかからなかったケースでも納税になる可能性が出てきました。
 
相続人の将来の納税リスクに備えるために、被相続人が契約者および被保険者となり、相続人を受取人として生命保険を活用できます。納税資金として保険金で確保したい額が非課税限度額を超える場合には、超えた分に伴う相続税の増加分も加味して保険金の額を設定します。

契約者:被相続人
被保険者:被相続人
受取人:相続人

 

妻の生活資金の不足分を補うための夫の生命保険

納税資金の心配がない場合でも、残された遺族(特に妻)の生活資金に不安が生じる場合があります。
 
子どもが独立している前提で、残された妻の生活資金の不足額は以下の算式で見積もることができます。

(1) 老後資金としての貯蓄額
(2) 公的年金の額の平均余命年数分
(3) 現在の1ヶ月あたりの生活費×50%×12ヶ月×夫死亡時の妻の平均余命年数
(4) 不足額 =(1)+(2)-(3) ※ 結果がマイナスであれば不足です

 
夫が契約者および被保険者となり、妻を受取人とする生命保険に加入することで、将来妻が生活資金不足になるリスクに備えることも可能です。

契約者:夫
被保険者:夫
受取人:妻

 

代償分割の原資としての生命保険

遺産の分割にあたって、相続財産が土地のように分割することが難しい財産のみしかない場合など、複数の相続人のうち1人が代表して相続をするケースも出てきます。
 
一方では、民法で保証されている相続によって取得できる最低限の財産があります。それを遺留分といいます。場合によっては遺留分の侵害請求を起こされることも考えられます。
 
このようなことのないように、他の相続人に対して本来相続されるべき財産に見合う財産を、土地を相続した相続人が自身の財産から渡すことにより、遺産分割を円滑に行う方法を代償分割といいます。代償分割で難しいのは、代表して相続財産を受け取る相続人が代償交付金を持ち合わせていない場合があることです。そこで、生命保険の活用が考えられます。

契約者:代表相続人
被保険者:被相続人
受取人:代表相続人

 

相続放棄と生命保険金

被相続人が借入金や負債などマイナスの財産が多い場合、相続人は相続放棄を選択することもあります。相続放棄した場合でも、生命保険金は相続税計算上相続税とみなして扱いますが、本来の相続財産でありませんので受取人の固有の財産になるため受け取ることができるのです。
 
このようにマイナス財産が多い場合には、遺族のために生命保険を活用することもできます。

契約者:被相続人
被保険者:被相続人
受取人:相続人

 

まとめ

生命保険は相続対策としてさまざまな場面で活用できます。今後の相続対策の選択肢のひとつになりそうです。
 

出典

国税庁 No.4105 相続税がかかる財産
国税庁 No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金
国税庁 No.4173 代償分割が行われた場合の相続税の課税価格の計算
 
執筆者:仁木康尋
日本FP協会CFP(R)認定者、国家資格キャリアコンサルタント

PR
FF_お金にまつわる悩み・疑問 ライターさん募集