自転車賠償保障の加入義務化! 自転車保険への加入は必要か(前編)

配信日: 2018.05.28 更新日: 2019.01.07

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自転車賠償保障の加入義務化! 自転車保険への加入は必要か(前編)
大阪府や鹿児島、兵庫県、滋賀県、京都府、埼玉県、名古屋市、相模原市など自転車事故による高額な賠償に備えて、自転車の利用者等に損害賠償責任保険への加入を義務化、推奨する自治体が増えています。
 
違反したからといって罰則規定はありませんが、自転車事故による高額な賠償リスクの責任を果たすために、損害賠償責任保険に加入しておいたほうがよいでしょう。
新美昌也

Text:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

自転車事故の実態

交通事故総合分析センターのイタルダ・インフォメーションNo.112によると、平成26年中に自転車運転中に事故の当事者となった人は11万2134人います。
 
これを相手当事者の種別で見ると、事故件数は対4輪車が最も多く9万2192件、対2輪車6071件、自転車相互2865件、対歩行者2551件、自転車単独2212件などとなっています。
 
自転車事故全体では、自転車運転者の約95%が死傷しているのに対し、相手当事者で死傷した人は約5%でした。
 
つまり、自転車事故の多くのケースでは、自転車運転者自身が被害者になっていることがわかります。自転車運転者が被害者の場合を詳細に見ると、死傷の割合は、死亡0.5%、重傷7.4%、軽傷87.5%、無傷4.6%となっています。
 
自転車運転手が加害者の場合は、相手当事者の死傷の割合は、重傷0.7%、軽傷4.8%、無傷94.5%となっています。
 
しかし、自転車相互事故、歩行者に限ってみると自転車運転者が死傷するケースは少なく、事故の相手方の死傷する割合が高くなっています。
 
詳細に見ると、自転車相互間では、自転車運転者(1当自転車)の死傷の割合は、重傷2.9%、軽傷17.5%、無傷79.5%であるのに対し、事故の相手方(2当自転車)の死傷の割合は重傷10.3%、軽傷79.3%、無傷10.3%となっています。
 
対歩行者では、自転車運転者の死傷の割合は、重傷0.9%、軽傷4.9%、無傷94.8%であるのに対し、歩行者の死傷の割合は、死亡0.1%、重傷11.8%、軽傷85.3%、無傷2.8%となっています。
 
なお、対歩行者、自転車相互事故を起こしやすい年齢について、13~18歳の自転車利用者は事故の加害者となりやすい、という結果がでています。
 

高額化する自転車による事故賠償

このように、自転車運転者が加害者になるケースは自転車事故全体の中では多くありませんし、事故の相手方の多くは軽傷です。しかし、発生率は高くありませんが、事故の相手方が死亡、重傷を負うケースもあり、高額な賠償をしなければならないケースもあります。
 
高額な賠償命令が出た裁判例を見てみましょう。
 
小学5年生(11歳)が夜間、自転車で走行中に歩行中の女性(62歳)と正面衝突し、重傷を負わせ、意識が戻らない状態になったケースで9521万円の賠償命令(神戸地裁平成25年7月4日判決)。
 
男子高校生が歩道から車道を斜めに横断し、対向車線を自転車で直進してきた男性会社員(24歳)と衝突し、重い障害(言語機能の喪失等)を負わせたケースで9266万円の賠償命令(東京地裁平成20年6月5日判決)。
 
男性が昼間、信号無視して高速度で交差点に進入したところ、青信号で横断歩道を横断中の女性(55歳)と衝突し死亡させたケースで、5438万円の賠償命令(東京地裁平成19年4月11日判決)。
 
男性が夕方ペットボトル片手にスピードを落とさず下り坂を走行し交差点に進入したところ、横断歩道を横断中の女性(38歳)と衝突し、死亡させたケースで6779万円の賠償命令(東京地裁平成15年9月30日判決)。
 

高額な賠償リスクに備えるには保険が最適

保険は、発生確率が高くなくとも、いったん発生した場合、大きな経済的損失が生じ、これを補てんするのに貯蓄では無理なケースで役立ちます。
 
相手を死傷させた場合の高額の賠償責任を果たすには保険が最適です。
 

自転車保険は必要か

保険会社や共済が販売している自転車保険は、基本的に被害者への損害を賠償する保険(個人賠償責保険)と、自分のケガや死亡に備える保険(交通傷害保険)のパック商品になっています。
 
さらに、一般的な補償のほか、示談交渉サービス、ロードサービスがついたものもあります。
 
自転車条例では、自転車を利用中に他人にケガをさせてしまった場合など、相手の生命または身体の損害を補償できる保険への加入を義務付け、推奨しているのであって、自分のケガや死亡への備えを義務付け、推奨しているわけではありません。つまり、義務付け推奨しているのは、賠償責任保険だけです。
 
保険の営業パーソンから、「○○県では自転車保険への加入が義務化されました。自転車保険に加入されていますか」などと自転車保険への契約を勧誘されたら気をつけましょう。
 
個人賠償責任保険に加入していれば、自転車保険への加入は基本的に必要ありません。火災保険や傷害保険、自動車保険に加入していれば、特約として個人賠償責任保険に加入しているケースがあります。
 
この機会に、損害保険の補償内容を確認してみましょう。
 
Text:新美 昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。

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