残業をしなくなると、来年の社会保険料にはどれくらいの影響がある?

配信日: 2022.12.23

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残業をしなくなると、来年の社会保険料にはどれくらいの影響がある?
働き方改革にともない、勤務先から残業を減らすよう通達された人もいらっしゃるのではないでしょうか。
 
残業が減ると賃金が減りますが、影響はそれだけではありません。賃金をもとに算出される社会保険料の金額も少なくなるのが一般的です。
 
本記事では、社会保険料の改定の仕組みをおさらいするとともに、残業をしなくなると社会保険料にどのくらいの差が出るのかをシミュレーションします。自身のケースではどの程度影響があるのか、イメージしてみてください。
FINANCIAL FIELD編集部

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社会保険料の金額が変更される仕組みをおさらい

各社会保険料の金額は、それぞれ次のような方法で変更されます。
 

■健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料

健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料の変更方法には「定時決定」と「随時改定」の2種類があります。
 
定時決定とは毎年1回決まった時期に保険料の見直しが行われるものです。7月1日時点の被保険者を対象に、原則として4・5・6月の報酬の平均額から当年9月~翌年8月の標準報酬月額を算出して、保険料が決められます。
 
随時改定とは、定時決定の対象期間以外に固定賃金の変動があった際に、臨時に行われるものです。固定的賃金が変動した月から3ヶ月間の報酬額の平均と現在の標準報酬月額との差が2等級以上であり、3ヶ月とも報酬の支払基礎日数が17日以上あるときの場合に、4ヶ月目以降の保険料が改定されます。
 

■労働保険料

労働者の自己負担が発生するのは、労働保険料のうちの雇用保険料です。雇用保険料の自己負担率は、農林水産・清酒製造・建設などの業種では0.6%、それ以外の一般的な業種では0.5%と定められています。毎月の賃金に雇用保険料を掛けた額が、雇用保険料の金額です。
 
以上を踏まえると、健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料の定時決定の基礎となる4・5・6月の残業時間が変動した場合が、最も社会保険料に影響を及ぼす可能性が高いと考えられます。
 

残業の有無で社会保険料にどれくらい差が出る?

残業時間が月40時間から0時間になったケースを例に、社会保険料にどれくらいの差が出るのかを月給の金額別にシミュレーションしてみましょう。ここでは、条件を次のとおり設定します。

<条件>

・東京都内勤務の30代会社員
・1ヶ月平均所定労働時間数は160時間(年間所定休日125日、1日の所定労働時間8時間)
・月給に家族手当、通勤手当、住宅手当、別居手当、子女教育手当、臨時で支払われた賃金は含まない
・時間外手当の割増率は25%として計算

 

月給30万円の人の場合

月給30万円の人の1ヶ月平均所定労働時間数が160時間の場合、1時間当たりの賃金は、1875円です。月に40時間の残業をした場合の月額賃金は次のように計算できます。
 
30万円+1875円×125%×40時間=39万3750円
 
残業40時間(月額賃金39万3750円)と残業0時間(月額賃金30万円)の社会保険料は、おおよそ図表のとおりです。
 
【図表1】

残業40時間
(月額賃金39万3750円)
残業0時間
(月額賃金30万円)
健康保険料 1万8639円 1万4715円
厚生年金保険料 3万4770円 2万7450円
雇用保険料 1968円 1500円
合計 5万5377円 4万3665円

全国健康保険協会「協会けんぽ 令和4年度保険料額表(令和4年3月分から)」、厚生労働省「令和4年度の雇用保険料率のご案内」より筆者作成
 
月給30万円のケースでは、残業が減ることで社会保険料に月額約1万2000円の差が生じる計算となります。
 

月給50万円の人の場合

月給50万円の人の場合、160時間働くと1時間当たりの賃金は3125円です。月に40時間の残業をした場合の月額賃金は次のように計算できます。
 
月額賃金:50万円+3125円×125%×40時間=65万6250円
 
月の残業が40時間(月額賃金65万6250円)と0時間(月額賃金50万円)のケースを比較すると、図表2のとおりです。
 
【図表2】

残業40時間
(月額賃金65万6280円)
残業0時間
(月額賃金50万円)
健康保険料 3万1882円 2万4525円
厚生年金保険料 5万9475円 4万5750円
雇用保険料 3281円 2500円
合計 9万4638円 7万2775円

全国健康保険協会「協会けんぽ 令和4年度保険料額表(令和4年3月分から)」、厚生労働省「令和4年度の雇用保険料率のご案内」より筆者作成
 
月給50万円のケースでは、残業の有無で社会保険料に月額約2万2000円の差が出る計算です。
 

月給80万円の人の場合

月給80万円で160時間働くと、1時間当たりの賃金は5000円となります。月に40時間の残業をした場合の月額賃金は次のとおりです。
 
月額賃金:80万円+5000円×125%×40時間=105万円
 
月の残業が40時間(月額賃金105万円)と0時間(月額賃金80万円)の場合の社会保険料は、それぞれ図表3のとおりです。
 
【図表3】

残業40時間
(月額賃金105万円)
残業0時間
(月額賃金80万円)
健康保険料 5万521円 3万8749円
厚生年金保険料 5万9475円 5万9475円
雇用保険料 5250円 4000円
合計 11万5246円 10万2224円

全国健康保険協会「協会けんぽ 令和4年度保険料額表(令和4年3月分から)」、厚生労働省「令和4年度の雇用保険料率のご案内」より筆者作成
 
厚生年金保険料は報酬月額66万5000円で頭打ちとなるため、このケースでは残業ありでもなしでも同額の保険料です。保険料全体の差は、およそ1万3000円となります。
 

残業が減ると社会保険料が下がる可能性がある

残業をすると時間数に応じた時間外手当が賃金に加算されるため、賃金額に保険料率を掛けて算出される社会保険料はアップする計算です。反対に残業が減れば、多くの場合社会保険料もダウンします。
 
特に定時決定によって保険料の見直しが行われる4・5・6月の残業時間が前年と比べて減ると、それが大きな変動ではなくても社会保険料に反映されることになります。
 
残業時間が変動する時期や月給の額などに合わせて、影響をシミュレーションしてみるとよいでしょう。
 

出典

全国健康保険協会 協会けんぽ 標準報酬月額の決め方
厚生労働省 令和4年度の雇用保険料率のご案内
厚生労働省 しっかり学ぼう!働くときの基礎知識 働く方へ 時間外・休日労働と割増賃金
全国健康保険協会 協会けんぽ 令和4年度保険料額表(令和4年3月分から)
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部

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