月々の介護費用の平均は約8万円・・・ 民間介護保険は入っていたほうが良い?
配信日: 2018.06.20 更新日: 2019.01.10
長寿化で要介護状態になるリスクが高まっています。一方、公的介護保険の保険料や自己負担は上がり続け、受けられる介護サービス(生活援助など)は縮小化されています。
介護費用は貯蓄で賄うのが基本ですが、それだけでは不安な人は民間介護保険を検討してみてはいかがでしょうか。
Text:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/
要介護状態になる確率
生命保険文化センター「介護保障ガイド」(2017年11月改訂)によると、人口に占める要支援・要介護認定者数(要介護認定率)は、65~69歳2.9%、70~74歳6.1%、75~79歳12.9%、80~84歳28.1%、85~89歳50.4%、90歳以上76.9%となっています。
厚生労働省簡易生命表によると、日本人の平均寿命は平成28年には男性80.98歳、女性87.14歳となっています。要介護認定率は加齢とともに上昇しますので、女性のほうが要介護状態になるリスクが高いといえます。
介護が必要となる原因は「認知症」がトップ
厚生労働省「平成28年国民生活基礎調査」によると、介護が必要となった主な原因は、認知症18.0%、脳血管疾患(脳卒中)16.6%、高齢による衰弱13.3%、骨折・転倒12.1%、関節疾患10.2%、心疾患(心臓病)4.6%となっています。
注目すべきは、認知症がトップになった点です。認知症は2001年調査では6位、2004年調査では4位、2007年以降では2位(1位は脳血管疾患)でしたが、2016年調査で初めて1位になりました。
認知症介護では認知症のない人の介護に比べ、見守りなどのためにデイサービスやショートステイなどを多く使うケースがありますので、介護費用が増大する可能性があります。
介護期間の平均は約5年
生命保険文化センター「平成27年度生命保険に関する全国実態調査」によると介護期間の平均は59.1カ月(4年11カ月)となっています。
一方、10年以上も15.9%あります。医療の進歩により、介護期間が長期化する可能性は高くなるでしょう。
公的介護保険のメニューにある介護サービスを受けた場合、利用限度額の範囲内であれば、自己負担は費用の1~3割で済みます。
さらに、自己負担額には月単位の上限(高額介護サービス費)などがあり、負担が軽減されます。
しかし、月単位では、たとえ大きな負担ではなくとも介護が長期化すれば家計を大きく圧迫します。貯蓄を取り崩しながら生活している平均的な高齢者世帯では、介護の長期化は死活問題です。
公的介護保険対象外のサービスを利用した場合や、利用限度額を超えてサービスを利用した場合は全額自己負担ですので、貯蓄を取り崩すスピードが加速します。
介護にかかった費用の実際は月平均7.9万円
同調査によると、介護経験がある人が実際に支払った費用は、住宅のリフォーム費用などの一時費用が平均で80万円となっています。
また、月々の費用の平均は7.9万円です。介護が長期化した場合、月々の費用は5年なら474万円、10年なら948万円になります。この数字はあくまで平均です。
介護付き有料老人ホームに入居した場合には、入居一時金として数百万円、月額費用として20~30万円程度はかかりますので、早めの資金準備が必要です。
貯蓄が少ない人は、保険料が安い40代から介護保険に加入するのも1つの選択肢です。
民間介護保険の特徴
公的介護保険が現物(サービス)支給であるのに対し、民間介護保険は、使途自由の現金支給である点が特徴です。支払条件は、公的介護保険の要介護度に連動したもの、保険会社独自の基準、両者の併用の3つのパターンがあります。
公的介護保険の要介護度に連動したタイプでは、要介護度2が主流です。保険金の受取りは大きく一時金タイプと年金タイプがり、一時金タイプは300~500万円、年金タイプは年額60万円で加入する人が多いようです。
この数年、認知症に特化した認知症保険も販売されています。
民間介護保険加入する場合は、有料老人ホームなどの入居一時金に備えるのか、月々のランニングコストに備えるのかなど目的を明確にしましょう。
また、公的介護保険は、65歳以上の人は要介護になった原因を問いませんが、40~64歳は、脳血管疾患、末期がんなど16種類の特定疾病によって要介護状態になった場合にしかサービスを受けることができません。
したがって、65歳未満の人が交通事故で要介護状態になっても公的介護保険は使えません。
また、40歳未満は公的介護保険を使えません。公的介護保険でカバーできない部分の介護リスクに備えるには、支払基準が保険会社独自の基準の介護保険で備えるしかありません。
どういう場合の介護リスクに備えるのかもよく考えましょう。
Text:新美 昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。