【生命保険】契約者・受取人変更と課税関係
配信日: 2023.03.17
この記事では、保険契約を保険期間の途中で契約者や受取人を変更した場合の課税関係について解説します。
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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生命保険の課税関係の基本的な考え方
(1)死亡保険金に対する課税
被保険者が死亡し保険金受取人が死亡保険金を受け取った場合、保険料負担者、被保険者、保険金受取人が誰であるかによって、所得税・住民税、相続税、贈与税のいずれかの税金が課税されます。通常、契約者が保険料を負担していたものとされます。
【相続税が課税される場合】
契約者(保険料負担者)と被保険者が同一人の場合は相続税の課税対象です。
【所得税・住民税が課税される場合】
契約者(保険料負担者)と被保険者が同一人の場合以外で、契約者(保険料負担者)と保険金受取人が同一人の場合は所得税・住民税の課税対象です。
【贈与税が課税される場合】
契約者(保険料負担者)と被保険者が同一人の場合以外で、契約者(保険料負担者)と保険金受取人が異なる場合は贈与税の課税対象です。
一般的には、課税される税金のなかで贈与税が一番高い税額となります。したがって、贈与税が課税される契約形態は避けましょう。
(2)満期保険に対する課税
満期保険金は、保険料負担者と満期保険金の受取人との関係により所得税・住民税または贈与税のいずれかの税金が課税されます。契約者(保険料負担者)と満期保険金受取人が同一人であれば、所得税・住民税の課税対象、異なれば贈与税の課税対象となります。
(3)解約返戻金に対する課税
解約返戻金の受取人は契約者(保険料負担者)ですので、所得税・住民税の課税対象です。
契約者変更時の課税関係
契約者・受取人を変更した場合、その時点では課税されません。変更後、保険金や解約返戻金を受け取ったときに課税されます。その際、変更前と変更後に分けて次のように課税されます。
前提:契約者(保険料負担者)=死亡保険金受取人:夫、被保険者:妻とします。
●契約者(夫)が生存中に契約者を妻に変更した場合、次の課税関係が生じます。
(1)変更前に前契約者(夫)が負担した保険料に相当する部分は一時所得に該当し、所得税・住民税の課税対象
(2)変更後に新契約者(妻)が負担した保険料に相当する部分は相続税が課される
(1)変更前に前契約者(夫)が負担した保険料に相当する部分は贈与税の課税対象
(2)変更後に新契約者(妻)が負担した保険料に相当する部分は所得税・住民税が課される
●契約者(夫)の死亡により契約者をBに変更した場合、次の課税関係が生じます。
被保険者(妻)が死亡したわけではありませんので、死亡保険金は支払われません。妻は相続により「生命保険契約の権利」を取得します。この権利は相続開始時の解約返戻金相当額で評価されます。変更後、妻は夫の保険料を引き継ぎます。
この権利として評価された金額のうち前契約者(夫)の負担した保険料に相当する部分は相続税の課税対象です。その後、妻が解約返戻金や満期保険金を受け取った場合、前契約者(夫)の負担した保険料も妻が保険料を負担したものと扱われ、所得税・住民税の課税対象となります。
受取人変更時の課税関係
保険金受取人を契約期間の途中で変更しても、その時点では課税されません。保険金等受取時に保険料負担者、被保険者、保険金受取人が誰であるかによって課税関係が決まります。
離婚時に受取人を元配偶者にしているケースがありますので、受取人を変更しておきましょう。このようなケース以外でも、ご自身の生命保険の契約内容を改めて確認し、理解しておくことをお勧めします。
出典
国税庁 No.1750 死亡保険金を受け取ったとき
国税庁 No.1755 生命保険契約に係る満期保険金等を受け取ったとき
国税庁 No.4660 生命保険契約に関する権利の評価
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。