更新日: 2023.07.24 その他保険
「少額短期保険」って何? 一般の保険と何が違うの?
少額短期保険が登場した背景には、ライフスタイルや価値観が変化し、生活のなかでの困り事や保険のニーズも多様化してきたことが考えられます。現在、保険に加入しているので必要ないという方でも、少額短期保険について「こんな保険もあるのか?」と驚くこともあるでしょう。
今回は、少額短期保険について解説します。
佐賀FPオフィス 代表、ファイナンシャルプランナー、一般社団法人日本相続支援士会理事、佐賀県金融広報アドバイザー、DCアドバイザー
立命館大学卒業後、13年間大手小売業の販売業務に従事した後、保険会社に転職。1 年間保険会社に勤務後、保険代理店に6 年間勤務。
その後、コンサルティング料だけで活動している独立系ファイナンシャルプランナーと出会い「本当の意味で顧客本位の仕事ができ、大きな価値が提供できる仕事はこれだ」と思い、独立する。
現在は、日本FP協会佐賀支部の副支部長として、消費者向けのイベントや個別相談などで活動している。また、佐賀県金融広報アドバイザーとして消費者トラブルや金融教育など啓発活動にも従事している。
少額短期保険とは? どんな特徴がある?
少額短期保険は一定の事業規模の範囲内において、保険金額が1000万円以下、保険期間が1年または2年以内の引き受けに限定された保険商品です。
死亡保険や医療保険など一般的な保険商品もありますが、通常の保険会社では取り扱いのない特殊な種類や限定されたニーズに対応した保険が用意されているのが特徴です。
少額短期保険にはどんな保険があるの?
少額短期保険の商品の例としては、葬儀費用に備える「葬儀保険」、ペットの病気に備える「ペット保険」、所定の事由により旅行やコンサートなどキャンセルした場合の費用を補償する「キャンセル保険」のほか、自動車のタイヤの補償に特化した保険、熱中症での治療や入院が対象の保険などもあります。
一般社団法人 日本少額短期保険協会では、「あったらいいなこんな保険」「ありそうでなかったこんな保険」という少額短期保険のアイデアを募集するコンテストを開催しています。
2022年の最優秀賞となった「ヤングケアラーサポート保険」は、家族の世話や介護を行うヤングケアラーと呼ばれる子どもを対象にした進学費用のサポート、デイサービスや訪問介護のサービス提供など、少しでも子どもの負担が軽減されるような保険のアイデアです。
また、保険に詳しいファイナンシャルプランナーから募集を行った中で、優秀作品に選ばれた「仕事を続けながら介護をする人を応援する保険」は、親族が要介護認定された場合、契約者である子どもが保険金を受け取れるというものです。
介護離職を防ぐために考案された保険のアイデアであるため、保険金の受け取りには就労の継続が条件として設定されています。
ヤングケアラーや介護離職は、まさに現代社会が抱える問題ですが、新しい保険のアイデアを通して社会問題について考えていこうとする試みも少額短期保険ならではの特徴といえるでしょう。
少額短期保険のメリットについて
少額短期保険のメリットは、日常生活でありがちなリスクや、加入している保険でカバーできない部分に対して低額で備えられることです。
例えば、スマートフォンの故障時の修理費用に備える「モバイル保険」や、インターネット上での詐欺被害や高額請求といったトラブルに対応する「ネットトラブル保険」などが一例として挙げられます。
少額短期保険のデメリットは?
一方、少額短期保険のデメリットは、保険会社の経営が破綻した場合に契約者補償がないことです。
通常の保険商品を販売する保険会社は、保険契約者保護機構に加入することが義務付けられていますが、少額短期保険の場合は保険契約者保護機構による補償の対象外となっているためです。
ただし、少額保険事業者が破綻した際の損失の補てんや資金の不正利用時の対策として、業務開始時に1000万円を法務局に供託し、保険料収入の増加に伴い段階的に積み増すことが義務付けられています。
また、少額短期保険の保険料は生命保険料控除の対象外のため、所得控除は受けられません。
まとめ
2006年4月に誕生した少額短期保険は、2021年時点で契約件数、収入保険料ともに高い成長率となっています。従来にない商品を必要とする方に提供し、新たな保険市場を開拓していることがその理由の1つといえるしょう。
万が一の際の保険による備えは足りており、もう保険に加入する必要はないと思っている方でも、少額短期保険の種類やサービスの内容について調べてみると新たなニーズの発見があるかもしれません。
出典
一般社団法人 日本少額短期保険協会
執筆者:廣重啓二郎
佐賀FPオフィス 代表、ファイナンシャルプランナー、一般社団法人日本相続支援士会理事、佐賀県金融広報アドバイザー、DCアドバイザー