更新日: 2023.09.20 損害保険
火災保険未加入はリスクが大きい? 保険未加入の家から出火して燃え広がったらどうなるの?
火災保険に未加入の状態では、自宅が火事になったときにどんなリスクが考えられるのでしょうか。
執筆者:吉野裕一(よしの ゆういち)
夢実現プランナー
2級ファイナンシャルプランニング技能士/2級DCプランナー/住宅ローンアドバイザーなどの資格を保有し、相談される方が安心して過ごせるプランニングを行うための総括的な提案を行う
各種セミナーやコラムなど多数の実績があり、定評を受けている
火災保険の加入状況は?
マイホーム購入時に住宅ローンを組むことは多いと思いますが、住宅ローンでは金融機関の融資の条件として火災保険に加入することが一般的となっています。
そのため、住宅ローンの契約時には金融機関や住宅メーカーから火災保険を紹介されることがあります。ただし、紹介された火災保険に必ず加入する必要はなく、自分で保険を選ぶこともできますが、勧められた火災保険にそのまま加入するというパターンも多いでしょう。
では、火災保険の加入率はどうなっているのでしょうか。内閣府による推計(2015年度)では、持ち家に対して火災保険や共済に加入している世帯は約82%と高い加入率となっていますが、この状況では20%近くは火災保険に加入していないことになります。
火災保険は任意加入
住宅ローンを組む際に火災保険への加入が必要なケースは多いのですが、火災保険は強制加入ではないので、住宅ローンを完済した後や、マイホームを現金一括で購入した際は火災保険に任意で加入することになります。
そこで火災が発生した場合、火災保険に未加入の状態ではどういったリスクが起こり得るのか考えてみます。
自宅から出火してしまったとき、自分で家を修復するのは当然のことですが、延焼して隣家に燃え移った場合でも故意や重過失でない限り、隣家の修復を行う責務はありません。そのため、延焼による被害(類焼)を受けた家の修復については、その家が加入している火災保険などで対応することになります。
隣家の火事が延焼した場合は火元への責任は問えず、また火災保険は任意保険なので加入していないという状況では、自宅の修復にかかる費用は自身で負担する必要が出てしまうのです。
隣家に延焼した場合はその後の生活に支障が出ることもあるので注意
火災保険に加入する義務はなく、自宅が火元となって延焼した場合の隣家に対する損害賠償責任は前述したとおり、故意や重過失でない限りは法律によって負わないものとされています。
ただし、法律上の賠償責任はないとはいえ、火事を起こして近所に迷惑をかけてしまったあとも同じ場所で生活を続ける場合、隣人との関係が悪化する可能性もあります。
火災保険では、類焼損害補償特約や失火見舞費用特約という隣家に延焼したときの補償を付けることができます。
類焼損害補償特約は、延焼によって隣家が加入している火災保険の補償を超える損害を住宅や家財に与えた場合、修復費用の不足分を補償する特約です。
また、失火見舞費用特約は、延焼により隣家が受けた損害に対して見舞金などを支払った場合、その費用について補償限度額の範囲で保険金が支払われます。
火災保険は、自分の家が火災で受けた損害に対する補償となりますが、類焼損害補償特約や失火見舞費用特約は、自らが火事を起こした際に隣家との関係性を保つための補償であるといえます。
まとめ
火災保険に未加入の状態で自宅が火事になってしまい、隣家などに燃え移ってしまっても、法律上、その賠償責任は負わなくて済みます。ただし、その後の生活までを考えると、近所との関係性の悪化にもつながりかねません。
火災保険に加入していなければ自宅の修復にも大金が必要となりますし、隣家に延焼して多大な損害を与えてしまい、見舞金などを支払う必要もあるかもしれません。
逆に隣家からの延焼で自宅が損害を受けた場合にも、火元への賠償責任は問えないので、火災保険に加入していなければ自ら費用を負担して修復することになります。
保険は万が一のときに備えて加入するものです。火災保険に限らず、さまざまなリスクに対して必要な補償は考えておきましょう。
出典
内閣府 防災情報のページ 保険・共済による災害への備えの促進に関する検討会
執筆者:吉野裕一
夢実現プランナー