毎月天引きされる社会保険料は労使折半ではない? ~狭義の社会保険について~

配信日: 2023.10.10

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毎月天引きされる社会保険料は労使折半ではない? ~狭義の社会保険について~
正社員としてお勤めの方は、給料から所得税や住民税などの税金のほかに、社会保険料(雇用保険料・厚生年金保険料・健康保険料・40~64歳の人は介護保険料)が天引きされているのはご存じだと思います。また天引きがないもの、つまり全額会社(=使用者)が負担する労働者災害補償保険(いわゆる労災保険)があります。
 
雇用保険と労災保険は併せて「労働保険」とよばれることもあり、また広い意味での社会保険には労働保険を含みます。一方、労働保険を含まず、厚生年金保険・健康保険・介護保険(40~64歳の人)の3点を総称して「狭義の社会保険」とよばれることもあります。本記事では、狭義の社会保険について取り上げます。
大泉稔

執筆者:大泉稔(おおいずみ みのる)

株式会社fpANSWER代表取締役

専門学校東京スクールオブビジネス非常勤講師
明星大学卒業、放送大学大学院在学。
刑務所職員、電鉄系タクシー会社事故係、社会保険庁ねんきん電話相談員、独立系FP会社役員、保険代理店役員を経て現在に至っています。講師や執筆者として広く情報発信する機会もありますが、最近では個別にご相談を頂く機会が増えてきました。ご相談を頂く属性と内容は、65歳以上のリタイアメント層と30〜50歳代の独身女性からは、生命保険や投資、それに不動産。また20〜30歳代の若年経営者からは、生命保険や損害保険、それにリーガル関連。趣味はスポーツジム、箱根の温泉巡り、そして株式投資。最近はアメリカ株にはまっています。

労使折半の社会保険料

毎月の給料明細や賞与明細の「控除」の欄には、税金と雇用保険料のほかに、「狭義の社会保険料」ともよばれる、厚生年金保険料や健康保険料(40~64歳の方は介護保険料を含む)の控除額が載っています。
 
狭義の社会保険料とよばれる理由は、ともに同じ「保険料額表」を用いて控除額を計算しているため、と考えられます。また、給料明細の控除額と同額の社会保険料を会社(=使用者)が別途払っています。この仕組みは、一般的に労使折半(=労働者と使用者が半分ずつ負担)といわれています。
 

子ども・子育て拠出金

厚生年金保険料や健康保険料(40~64歳の方は介護保険料を含む)と同じ保険料額表を用いている社会保険料に、「子ども・子育て拠出金」があります。しかし、皆さんの給料明細や賞与明細の控除額の欄には「子ども・子育て拠出金」は載っていません。「子ども・子育て拠出金」は全額を使用者が負担し、労働者の負担がないからです。
 
使用者が負担する「子ども・子育て拠出金」の額は、厚生年金保険で用いる標準報酬月額(=通勤手当等を含み、税金等の控除を引く前の月給の大まかな金額。上限あり)や標準賞与額(=税金等の控除を引く前のボーナスの額)に0.36%を掛けた金額です。
 
給料から引かれていない(控除されていない)からホッとした、という方もいらっしゃるかもしれません。しかし、「子ども・子育て拠出金」の額は「わたし(自分自身)」という従業員がいなければ、使用者も負担しなくてもよいものです。
 
つまり、使用者が負担する「子ども・子育て拠出金」の出どころは、「わたし」という従業員の働きによるもの(要件にあった従業員が在籍していること)なのです。ほかの社員にとっては、ご家庭に子どもがいる、いないにかかわらず、使用者を通じて子育て支援に参加している、といえるかもしれません。
 

子ども・子育て拠出金の使い道

令和3年度決算(年金特別会計 子ども・子育て支援勘定)の歳入額(3兆5791億8000万円)のうち、事業主拠出金収入(子ども・子育て拠出金)が6826億34 00万円と、およそ2割を占めています。
 
そして、その使い道は、同じく令和3年度決算(年金特別会計 子ども・子育て支援勘定)の歳出の内訳によると、児童手当等交付金が1兆2491億9200万円、子ども・子育て支援推進費1兆5019億300万円、地域子ども・子育て支援および仕事・子育て両立支援事業3539億4600万円のほか、業務取扱費や諸支出費、予備費となっています。
 

まとめ

「独身だから」「うちには子どもがいないから」という方であっても、これまで述べてきたように、全額使用者負担とはいえ、自分自身の働きによって使用者は子ども・子育て拠出金を負担していることを知っておきましょう。
 

出典

厚生労働省 令和3年度決算(年金特別会計 子ども・子育て支援勘定)

全国健康保険協会 令和5年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表

 
執筆者:大泉稔
株式会社fpANSWER代表取締役

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