更新日: 2019.01.10 その他保険

大学資金の準備方法「保険で貯める」 そんなときの保険の選び方と3つの注意点って?

執筆者 : 藤孝憲

大学資金の準備方法「保険で貯める」 そんなときの保険の選び方と3つの注意点って?
大学資金の準備方法で、これまで「もらう」「借りる」を紹介していきました。
 
今回は準備方法の最後、「貯める(運用する)」方法について解説します。
 
無駄を省き、他の支出を節約するのも準備方法の一つですが、ここでは各保険商品の特徴と選び方について紹介していきます。
 
藤孝憲

Text:藤孝憲(とう たかのり)

CFP(R)認定者・VBAエキスパート(Excel)

主に小さいお子様をお持ちのご家庭からのご依頼が多く、教育費や住宅費、退職後の生活資金など長期的に考えた家計のアドバイスをしています。ご相談者は幅広く、上場企業だけでなく中小企業にお勤めの方や自営業者、公務員の方などで、年収も300万円から1,000万円までいらっしゃいます。住宅ローンや保険選び、将来の資金計画などでお悩みでしたらお気軽にお問い合わせください。

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10年以上の準備期間があるときの準備方法

大学資金の準備を、ご出産とともに始める方もいらっしゃるでしょう。
 
準備期間が長ければコツコツ準備することができ、家計への負担は軽くなります。予定外の支出などで一時的に貯蓄ができなくても、準備期間が長ければ軌道修正することもできます。
 
準備期間が10年以上ある場合の準備方法と、それぞれの特徴は次の通りです。
 
<大学資金の準備方法と特徴>

・普通預金・定期預金

安全性が高く、いつでも引き出せるため、緊急用資金の意味を含め一定金額を確保しておきたい。ただ利息がほぼつかないだけでなく、物価上昇によりお金の価値が下がる可能性はあります。

・学資保険(こども保険)

万一のときには以降の保険料が免除され、保険金も受け取ることができるため教育資金の準備方法として一般的です。契約期間が長いほど満期で受け取れる金額は多くなりますので、ご出産前(出産予定日の140日以内など)に加入される方もいらっしゃいます。

・低解約返戻金型終身保険

保険料払込満了日に支払保険料より解約返戻金が上回る特長を活かし、死亡保障を得つつ、学資保険のように教育資金の準備に充てます。学資保険よりも解約返戻率の高い商品が多かったため、利用している方も多いでしょう。

・株式・投資信託

一定の運用知識があり、リスクを理解している人にとっては、預金や保険よりも魅力があるでしょう。運用成績が大学資金に影響するようなリスクの高い投資はお勧めできません。

・外貨建て預金・外貨建て終身保険・外国株式など

商品性は同じですが、外貨で運用するため、為替変動リスクが発生します。一般的に円建てのみで運用するより外貨建てを組み入れることでリスクを軽減することが見込めます。
 
株式・投資信託はおおざっぱな分け方になっていますが、「株式投資信託」や「J-REIT」などさまざまな種類があり、NISA口座の非課税枠を利用するかどうかなどでリスクや運用成績は異なります。
 
投資経験のある方は基本的なことはご存じだと思いますので、ここでは保険の選び方について解説していきます。
 

教育資金目的の保険の選び方

多くの人は、保険の相談に行く前にネットで情報収集するかと思います。情報収集から保険契約までの流れにおいて注意すべき点を紹介しますので、保険選びの参考にしてみてください。
 
まず、保険を利用する第一の目的は、万一のときにでも教育資金を確保すること(死亡保障)にあります。第二の目的は、満期保険金や解約返戻金(解約したときに戻ってくるお金)です。保険を利用する時点で第一の目的は達成できますので、自然に第二の目的に注目するでしょう。
 
受取額は同じ商品でも、契約の仕方で変わってきます。少しでも受取額を増やすためには、次のような点に注目します。
 

(1) 保険料支払期間を短くする。

お子さまが17歳のときに満期を迎える学資保険や、17年後に解約返戻率が100%を超える「低解約返戻金型終身保険」を基本とします。いずれも保険料の支払期間を17年ではなく、10年など短くすれば、より受取額を増やすことができます。ただ毎回の支払額は増えますので、単純に短くできるわけではありません。
 

(2) 月払いより年払い

毎月決められた保険料を払うのが基本ですが、これを半年払いや年払いにすると、支払う保険料総額は安くなります。また、その分、返戻率が上がります。保険料総額が100万円、受取額が110万円なら、返戻率は110%です。しかし、保険料総額が95万円になれば、受取額が同じ110万円でも返戻率は115%程度になります。年払いの場合、1年分を支払いますので、支払いに向けて準備をしておく必要があります。
 
ちなみに、近年の低金利の影響によって、以前と比べて返戻率は高くありません。保険料の支払期間を短くしたり、年払いにしたりしないと返戻率に期待できなくなっています。そのため、最初から上記の2点で提案されることが多くなります。
 
これらを踏まえ、注意点を解説します。
 

保険を選ぶ際の注意点

保険会社のホームページでは、多くの場合、保険設計のシミュレーションをすることができます。しかし、公式ホームページのシミュレーションも、設計できるのは一部です。そのため、どのような契約がよいかについては、やはり直接相談しなければなりません。
 

(1)設定や商品が変われば、比較しなおすこと

ある程度、希望の商品を選定していたとしても、設計内容によって受取額は異なります。
 

 
仮に相談前には保険会社A社の商品の返戻率が別の保険会社B社の商品よりも高く、相談でもそのことが確認できたとします。しかし相談でA社の他の商品でより返戻率の高い商品を紹介された場合、予定していた商品より良い商品を紹介されたと思い、改めてB社の商品と比較しなおすことを忘れてしまいがちです。
 
しかし、A社の商品が変わった時点で設計内容やそれと同条件のB社の商品も変わるため、本来なら比較しなおす必要があります。なぜなら、実は同じ条件で比べると保険会社B社の商品の方が優れているといったケースがあるからです。
 

(2)予定外の商品を提案された場合は保留すること

上記の例のように、契約後も保険会社A社の商品が最も返戻率が高いと思っており、気づかないことがあります。似たような商品であればいいのですが、円建てから外貨建てに変化するなど、大きく変わる場合にはさらなる注意が必要です。
 
外貨建てを勧められる可能性が高い理由の一つは、円建て商品の返戻率に魅力がなくなっていることです。返戻率の高い外貨建て商品を見てしまうと、円建て商品を選びにくくなるものです。
 
これから商品選びをする方は、事前に為替変動リスクや為替相場の基本について調べておくことが大切です。相談する前に、外貨建て商品の特徴について学び、利用するかどうか決めておきましょう。先に説明を聞いてしまうと、適切な判断ができなくなる可能性があります。この場合は、いったん持ち帰り、十分時間をかけて検討してください。
 

(3)販売ルートによる違い

保険の相談は、各保険会社の直営店のほかに、「乗合代理店」もあります。直営店はその会社の商品しか取り扱っていませんが、乗合代理店は数十社の商品を扱っていますので、比較しやすいというメリットがあります。
 
以前からの保険専門の企業(以下、代理店)や、金融機関も乗合代理店です。よく観察すると分かりますが、金融機関で取り扱う保険会社は、代理店と同様に複数の保険会社を取り扱っていますが、商品数は代理店より少なくなっています。金融機関の行員にすべての商品研修をするのが難しく、例えば医療保険はA社、B社、C社、終身保険はA社、D社、E社のように、人気のある(魅力のある)商品に絞っているそうです。
 
また、特定の販売ルートでしか販売していない商品もあります。同じ商品名でも販売ルートによって返戻率が異なる可能性もありますので、保険選びを難しくしています。
このように注意点を挙げますと、どのように保険を選んだらよいか分からなくなるかもしれません。
 
平成28年5月29日に保険業法が改正されました。顧客のニーズに合った商品を提案するよう、具体的な相談に入る前に、アンケートで意向確認を行うなどの契約の流れに変更されています。保険代理店へのヒアリング調査を見ますと、提案方法を強化するなどしていますので、商品だけでなく「代理店も比較」し、本当にそれぞれのご家庭の立場で提案されているか見極めましょう。
 
これで大学資金の準備をテーマにした一連の記事は終わりです。
 
Text:藤 孝憲(とう たかのり)
CFPR認定者・VBAエキスパート(Excel)

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