会社員で「月収60万円」ですが、来年に定年で収入がゼロになります。「健康保険料」の負担が心配ですが、子どもの会社の健康保険は利用できますか?

配信日: 2023.12.25

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会社員で「月収60万円」ですが、来年に定年で収入がゼロになります。「健康保険料」の負担が心配ですが、子どもの会社の健康保険は利用できますか?
定年退職後、再就職せず無収入になると、社会保険料など今までは毎月の給料から引き落とされていた支出を自分で支払うことになります。特に心配なのは健康保険料の負担ではないでしょうか。
 
例えば、子どもの扶養に入り、子どもが加入している会社の健康保険に被扶養者として入ることができれば保険料の負担はないのですが、年収の要件などが厳しくて諦めている人も多いかもしれません。
 
ただ、健康保険の扶養に関する年収要件は、十分に理解されていない場合もあります。そこで、本記事では、退職後の健康保険としてどのような選択肢があるかを紹介し、誤解されがちな健康保険の扶養要件をわかりやすく解説します。

退職したら、健康保険はどうなるの?

会社員・公務員であれば勤め先の健康保険に加入していますが、退職すると、それまでと同じ健康保険に全く同じ条件で加入し続けることはできません。
 
次の勤務先があれば新しい勤務先の健康保険に加入しますが、定年退職して無職になる場合は、どのような選択肢があるのでしょうか? 答えとしては、次の代表的な3つの制度から、自分で選んで加入することになります。3つの制度について詳しく解説します。
 

国民健康保険

国民健康保険はフリーランスや自営業などの人、さらには無職の人が加入する健康保険です。日本の医療制度は「国民皆保険」と呼ばれ、すべての国民が何らかの公的医療保険に加入しなければなりませんが、国民健康保険はその根幹を広く支えています。
 
国民健康保険料は前年の所得額をベースに、市区町村で定められた保険料率を掛け合わせて算出されます。退職直後で前年の収入が多い人の場合、保険料は高くなります。
 
また、国民健康保険には「扶養」という概念がなく、一人ひとりが加入するため、会社員時代に配偶者を自分の扶養に入れていた人が退職後に国民健康保険への加入を希望する場合、自分と配偶者それぞれが国民健康保険へ加入することになります。世帯の中で加入する家族が増えると負担が大きくなります。
 

健康保険任意継続制度

退職する人にとって、もう1つの有力な選択肢は「任意継続制度」への加入です。任意継続制度とは、退職する人が希望すれば、2年間に限定して、退職前に加入していた健康保険にそのまま加入できる制度です。加入手続きも退職前の会社で簡単にでき、退職前と保険給付の内容も変わらず、退職する人には安心感がある制度といえます。
 
ただ、保険料は関しては、退職前は加入者と会社で折半していたものが、任意継続時は加入者の全額負担となるため、わかりやすくいうと会社員時代の2倍の負担になってしまうのがネックです。
 

家族の健康保険の被扶養者になる

家族の誰かが勤め先の健康保険に加入している場合に検討したいのが、その家族の被扶養者になり、家族の健康保険に加入する方法です。家族の健康保険に入れば「保険料の負担がない」という大きなメリットがあります。扶養に入れる家族の要件は、以下のとおりとなっています。
 

・75歳未満の人で被保険者に生計が維持されている3親等以内の親族
・扶養される人の年収が60歳未満では130万円未満、60歳以上か障がい者では180万未満
(別居の場合は被保険者からの仕送りより少ないことも条件)

 

健康保険の扶養に入るための「年収」の定義

家族の健康保険への加入を検討する際に、気をつけなければならないのは「年収」の定義です。多くの人は「年収」といわれると、国民健康保険の保険料や、税金などの算定同様、「前年の所得」や「今年の所得」を思い浮かべて、「自分の年収は条件より多いだろうから該当しない」と考えてしまいます。
 
確かに退職後無収入であっても、退職直前まで収入があるわけですから、「前年の収入」や「今年の収入」で考えれば、130万円未満や180万未満という条件は厳しく感じられるでしょう。
 
しかし、健康保険の被扶養者の「年収」の定義は、「これから先(被扶養者に該当する時点および認定された日以降)の年間見込み収入額」となっています。つまり、健康保険の扶養に関する年収は過去や現在ではなく、「これから1年間」であり、退職して再就職せず、今後の収入がなくなった場合は年収要件を満たす可能性もあります。
 

健康保険の扶養に入る年収要件の勘違いしやすい実例

実際に勘違いしやすい例を見てみましょう。
 

・60歳の会社員で、今年の3月に定年退職予定
・前年の年収は900万円(毎月額面60万円、年間賞与額面180万円)
・今年1~3月は月60万円の給与で180万円の収入を得る予定

 
この例では、前年も今年も収入は180万円以上になるため、「60歳以上で180万未満という年収要件をクリアできない」という勘違いが起こります。
 
しかし、先述したように、健康保険の年収の定義は「これから1年間」であり、今後1年間に得る収入が180万円未満であれば、家族の健康保険の被扶養者に入れる可能性は大いにあります。
 

まとめ

定年退職して会社勤めでなくなった場合の健康保険には、いくつか選択肢がありますが、家族の誰かが会社員で健康保険に入っていれば、その人の扶養に入り、その人の会社の健康保険に加入できれば、保険料負担の心配はありません。
 
年収要件などで、加入を諦めている人も多いかと思いますが、健康保険の扶養に関する年収要件は、あくまで「今後1年間の見込み」です。今後、再就職しない人は、年収要件など健康保険の加入要件を正しく理解して、健康保険は家族の扶養に入ることをまずは検討されてみてはいかがでしょうか。
 

出典

全国健康保険協会(協会けんぽ) 被扶養者とは?
日本年金機構 従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き
 
執筆者:松尾知真
FP2級

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