保険の基本をおさらいしよう! 火災保険の保険金額の2つの設定方法について
配信日: 2024.01.15
執筆者:大泉稔(おおいずみ みのる)
株式会社fpANSWER代表取締役
専門学校東京スクールオブビジネス非常勤講師
明星大学卒業、放送大学大学院在学。
刑務所職員、電鉄系タクシー会社事故係、社会保険庁ねんきん電話相談員、独立系FP会社役員、保険代理店役員を経て現在に至っています。講師や執筆者として広く情報発信する機会もありますが、最近では個別にご相談を頂く機会が増えてきました。ご相談を頂く属性と内容は、65歳以上のリタイアメント層と30〜50歳代の独身女性からは、生命保険や投資、それに不動産。また20〜30歳代の若年経営者からは、生命保険や損害保険、それにリーガル関連。趣味はスポーツジム、箱根の温泉巡り、そして株式投資。最近はアメリカ株にはまっています。
契約金額の設定方法
損害保険において、保険金額とは契約の時に設定する金額を指します。そして、火災などの保険事故が発生した時に、保険会社が契約者もしくは被保険者に支払う保険金の限度額のことを保険金額と言います。
火災保険の契約の時に保険金額を設定するには「再調達価額」を基に設定する方法と、「時価」を基に設定する方法の、2つ選択肢が考えられます。特に「時価」を基にした保険金額で火災保険を検討する場合、保険金額は時価いっぱいにしておいたほうが良いでしょう。
<時価とは>
時価とは再調達価額から、年月による経過や使用による消耗分(価値の目減り分)を差し引いた金額をベースにした評価額、すなわち「時価=再調達価額―消耗分」のことです。
<再調達価額とは>
今、建っている建物と同等の建物を新たに建築もしくは購入するのに必要な金額をベースにした評価額で、時価とは異なり消耗分を考慮しない額です。
保険金の支払事例
例えば、新築当時2000万円だった物件の現在の再調達価額が2500万円だとします。火災保険を再調達価額で検討する場合、2500万円が保険金額となります。このケースでは、この建物が全焼してしまった場合、受け取ることができる保険金額は2500万円となります。
では、同じ建物で、火災保険の保険金額を時価で検討することにします。新築当時2000万円で、再調達価額は2500万円、そして消耗分を600万円とします。この場合保険金額を時価いっぱいで設定すると1900万円となります。
保険金額を時価で検討した場合、時価を上回る保険金額だと、どうなるのか?
先ほどから「時価いっぱい」という表現を用いていますが、火災保険の保険金額を「時価」で検討する場合、「時価を上回る」保険金額だと、どのような問題が生じるのでしょうか?
例えば、新築当時2000万円で、再調達価額は2500万円、そして消耗分を600万円とします。この建物を、火災保険を「時価」で検討することにし、本来なら時価いっぱいの1900万円で保険金額を検討するはずのところを、2500万円の保険金額で検討することとします。そして、不幸にして火災で全焼した場合、支払われる保険金額はいくらになるのでしょうか?
やはり、時価いっぱいの1900万円しか保険金額としては支払われません。つまり、時価を超えた保険金額の分、この例では600万円分の保険料が無駄になってしまうのです。
まとめに代えて
火災はあってはなりませんが、あってはならないことが現実になった時に役に立つのが保険です。しかし、あってはならないことが起きてしまった時に、保険金額の不足が生じないのが望ましいのはいうまでもありません。
火災保険の保険金額の設定方法は2通りありますが、ここでは再調達価額で検討したほうが良さそうです。
執筆者:大泉稔
株式会社fpANSWER代表取締役