更新日: 2024.02.09 その他保険
母が「子どもに迷惑かけたくないから認知症保険に入ろうかな」と言っています。掛け捨てなのでもったいなくないでしょうか?
認知症保険は、いわゆる「掛け捨て」であることが多い保険です。保険料が掛け捨ての保険だと、もったいないと思われるかもしれません。しかし、そんなことはありません。
本記事では、掛け捨ての保険がもったいなくない理由を、保険のしくみを踏まえて解説します。認知症保険だけでなく、保険全般についていえることですので、ぜひ最後までお読みください。
執筆者:中村将士(なかむら まさし)
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー
私がFP相談を行うとき、一番優先していることは「あなたが前向きになれるかどうか」です。セミナーを行うときに、大事にしていることは「楽しいかどうか」です。
ファイナンシャル・プランニングは、数字遊びであってはなりません。そこに「幸せ」や「前向きな気持ち」があって初めて価値があるものです。私は、そういった気持ちを何よりも大切に思っています。
保険の本質は相互扶助の精神に基づいたものである
保険の本質は、多くの人がお金を出し合って、その中の誰かが思いがけない不幸な出来事に遭遇したとき、集めたお金をその人に支払うことでその人を経済的に助けるという、相互扶助の精神に基づいたものです。
不幸な出来事に遭遇しなかった人たちは、自分たちが出したお金を受け取ることはできません。このしくみを、一般に「掛け捨て」といいます。しかし、保険の本質から考えると、本当に「捨て」たわけではありません。
「掛け捨て」という言葉で「もったいない」という認識になってしまうのかもしれません。しかし、「誰かの役に立っている」「自分は不幸な出来事に遭遇しなかった」と考えれば、「もったいない」という気持ちにはなりづらいのではないでしょうか。
保険は掛け捨てを基本としている
ところで、保険料がどのように構成されているかをご存じでしょうか。保険料は、純保険料と付加保険料で構成されています。純保険料は、将来の保険金の支払いに充てられる保険料です。付加保険料は、保険会社の経費の支払いに充てられる保険料です。
保険料の構成が分かると、保険制度において、以下の式が成り立つことが分かります。
保険料(純保険料+付加保険料) = 保険金の支払総額 + 経費
これを収支相等(しゅうしそうとう)の原則といい、保険会社は、収入(式の左側)と支出(式の右側)が同じになるよう運営しています。
保険料が掛け捨ての保険と掛け捨てでない(満期保険金や解約返戻金がある)保険の違いは、上の式に「貯蓄」部分があるかどうかです。掛け捨ての保険には、貯蓄部分はありません。掛け捨てでない保険には、貯蓄部分があります。
掛け捨ての保険と掛け捨てでない保険の違いを、以下のように表すこともできます。
・掛け捨ての保険 = 保障 + 保障に係る経費
・掛け捨てでない保険 = 保障 + 保障に係る経費 + 貯蓄 + 貯蓄に係る経費
= 掛け捨ての保険 + 貯蓄 + 貯蓄に係る経費
つまり、保険は、掛け捨ての保険をベースとしているということです。このように考えると、加入する保険が掛け捨てであるかどうかは、あまり問題とはならないのではないでしょうか。
まとめ
本記事では、最近検討されることが多いであろう認知症保険を皮切りに、保険のしくみについて解説しました。
認知症保険は「掛け捨て」の保険であることが多く、それを「もったいない」と思われることもあるかもしれません。しかし、保険の本質やしくみを理解すると、決してそうではないと考えることができます。
保険はあくまでセーフティネットであり、将来への備えです。保険への加入の要否は、個人の考え方により異なります。ただ、「損するかしないか」より、「安心できるかどうか」を判断基準にしていただくのが良いのではないかと思います。
出典
内閣府 「平成29年版高齢社会白書(概要版)」
執筆者:中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー