更新日: 2024.02.14 損害保険
【保険の基本】マンションの地震保険ってどうなっているの?
しかし、マンション用に特別な地震保険が用意されているわけではありません。地震保険単独で契約することができず、火災保険とセットで地震保険を契約するのも同じです。
マンションには「専有部分」と「共有部分」とがあります。「専有部分」とは、201号室や405号室などの部屋番号が付された室内のことです。つまり「壁や扉によって区切られた住むための空間」ということです。
「共用部分」とは、マンションの住人同士がともに利用する場所のことで、具体的にはエレベーターや廊下、階段などのことです。マンションの場合、保険契約はどのようになるのか解説します。
執筆者:大泉稔(おおいずみ みのる)
株式会社fpANSWER代表取締役
専門学校東京スクールオブビジネス非常勤講師
明星大学卒業、放送大学大学院在学。
刑務所職員、電鉄系タクシー会社事故係、社会保険庁ねんきん電話相談員、独立系FP会社役員、保険代理店役員を経て現在に至っています。講師や執筆者として広く情報発信する機会もありますが、最近では個別にご相談を頂く機会が増えてきました。ご相談を頂く属性と内容は、65歳以上のリタイアメント層と30〜50歳代の独身女性からは、生命保険や投資、それに不動産。また20〜30歳代の若年経営者からは、生命保険や損害保険、それにリーガル関連。趣味はスポーツジム、箱根の温泉巡り、そして株式投資。最近はアメリカ株にはまっています。
地震保険で補償されるものは?
マンションを購入した時、もしくは入居時に火災保険を契約することが多いと思います。火災保険の契約の時に併せて地震保険を契約したり、契約済みの火災保険に地震保険を中途付帯したりした場合、地震保険の補償の対象となるのは「専有部分」のみです。
もし、「専有部分」で地震・噴火・津波によって(地震保険で対象となる)損害が生じた場合には、地震保険の保険金支払いの対象となるかもしれません。しかし「共有部分」が地震・噴火・津波によって損害が生じても、「専用部分」を対象とした地震保険の対象にはなりません。
<特にこういう場合には?>
もし、地震・噴火・津波によって「ベランダ」に損害が生じてしまった場合は、地震保険の対象になるのでしょうか?マンションの管理規約にもよりますが、ベランダは「共用部分」の「専用使用部分」です。よって、ベランダは「専用部分」を対象とした地震保険の対象外となります。
<では、「共用部分」は?>
マンションの「共用部分」についても、地震保険を契約することが可能です。もちろん、先述のとおり、地震保険単独で契約はできませんので、「共用部分」を対象とした火災保険とセットで地震保険を契約します。なお、すでに「共用部分」を対象とした火災保険を契約済みの場合、地震保険を追加することもできます。
「共用部分」の地震保険を契約したとしても
地震保険の対象となる損害の1つに「建物の主要構造部(軸組、基礎、屋根、外壁等)」の損害が挙げられます。
例えば、地震の揺れなどによってエレベーターの扉が動かなくなったとしましょう。エレベーターは建物の主要構造部には該当しませんので、地震保険の保険金支払いの対象にはなりません。
もし「共用部分」の地震保険がなかったら
マンションの管理規約にもよると思いますが、マンションの外壁は「共用部分」に該当すると思われます。地震や噴火などによってマンションの外壁に、地震保険の保険金支払いの対象となるほどの亀裂が入ったとします。もし、「共用部分」の地震保険があれば、その保険金を修理費用に充てることができます。
しかし、「共用部分」の地震保険の契約がなかった場合は、どのようになるのでしょうか? 修繕積立金を修理費用に充てるか、修理費用を区分所有者から集金することになります。
大きな地震に見舞われ、住んでいるマンションの共用部分に損害が生じた場合に、その修繕費用をどうするのか……修繕費用を修繕積立金で賄うか、あるいは地震保険の保険金で賄うかのシミュレーションを行うと良いでしょう。もし、地震保険を契約すれば保険料を払わなくてはなりません。その保険料を、どのように捻出するかも検討しましょう。
ないことを祈っていますが、大きな地震はいつ襲ってくるかは誰にも分かりません。いつ遭うか分からない災害に備えて、十分なシミュレーションをしておきましょう。
出典
e-GOV 法令検索 昭和三十七年法律第六十九号 建物の区分所有等に関する法律
執筆者:大泉稔
株式会社fpANSWER代表取締役