民間介護保険は必要ない? 必要性やメリット・デメリット、加入タイミングを解説!
配信日: 2024.03.28
内閣府の「令和5年版高齢社会白書」によると、令和4年10月1日時点で、65歳以上の人口は総人口の29.0%です。そして、高齢化率は今後も上昇が見込まれ、令和19年には33.3%と、国民の3人に1人以上が65歳以上になると推計されています。
高齢者の割合が増えると、多くの人が介護費用を準備する必要がありますが、そこで検討したいのが民間介護保険です。
本記事では、「民間介護保険」と「公的介護保険」の違いや、民間介護保険に加入するメリット・デメリット、民間介護保険の必要性が高い人の特徴などについて解説しています。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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目次
民間介護保険とは?
「民間介護保険」とは、生命保険会社などの民間企業が販売する保険商品です。介護に関する保障については公的介護保険がありますが、公的介護保険で介護費用の全てをまかなえるとは限りません。
民間介護保険に加入していると、公的介護保険の不足した部分を補い、介護の経済的な負担を減らすことが期待できます。公的介護保険は社会保障であるため、原則として40歳以上全ての方が加入が必須ですが、民間介護保険は自助努力の位置づけですので、加入するかどうかは自由です。
また、民間介護保険に加入する場合には、さまざまな民間企業が販売する保険商品の中から、自分に合った商品を選ぶ必要があります。
「認知症保険」にも注目
高齢化が進むと、その分認知症を発症する人の数も増えていきますが、民間介護保険の中には被保険者が認知症になった際に給付金を受け取れる認知症保険もあります。
認知症保険に加入していれば、認知症の初期段階から進行段階まで幅広いサポートを受けられ、介護の負担軽減が期待できるでしょう。
認知症保険には主に2つのタイプがあります。1つは、認知症が原因で与えてしまった損害に対する賠償金への補償や、徘徊(はいかい)による捜索費などに対応できるタイプです。もう1つは、認知症と診断された際に一時金が払われるといったように、医療費への対応が可能なタイプです。
公的介護保険とは?
公的介護保険とは、国や地方自治体が運営する介護保険制度です。少子高齢化や核家族化の進行を背景に、社会全体で介護を支えることを目的として2000年から制度がスタートしました。
公的介護保険は日本全体としての制度ですので、40歳以降は加入することが義務付けられています。自動的に加入されるため、別途個人で手続きをする必要はありません。会社員の場合、健康保険料と一緒に保険料が徴収され、公的介護保険の保険料は原則として事業主が保険料の半分を負担しています。また、65歳以上の人は原則として年金から保険料が天引きされます。
実際に公的介護保険のサービスを受けるには、「介護を要する状態にある」という要介護認定を受ける必要があります。要介護認定を受けた場合は所得に応じて、1~3割の利用料を払うことで、「現物給付」による介護サービスを受けられるという仕組みです。
ちなみに、「現物給付」とは、介護サービスの費用の一部が直接公的介護保険でまかなわれる仕組みのことです。例えば、1万円の介護費用がかかり、自己負担が3割の場合、7000円については公的介護保険が負担し、3000円を自己負担で支払うという流れです。
民間介護保険と公的介護保険の違い
民間介護保険と公的介護保険はどちらも介護費用への備えという点では同じです。ただ、両者ではいろいろな点が異なります。民間介護保険と公的介護保険の違いについて、まずは表で概要を確認しつつ、主なものについてみていきましょう。
【民間介護保険と公的介護保険の違い】
図表1
民間介護保険 | 公的介護保険 | |
---|---|---|
運営者 | 保険会社 | 各自治体 |
加入義務 | 任意加入 | 強制加入(40歳以上) |
給付方式 | 現金給付 | 現物給付 |
給付額 | 金額設定は任意 | 要介護度によって変動 |
給付対象者 | 被保険者 | 65歳以上:要介護度に合わせて支給 40歳~65歳:特定疾病を患った場合のみ |
税制優遇 | 介護保険料の一部控除 | 社会保険料の全額控除 |
保険料支払い免除 | 保険商品次第 | なし |
厚生労働省「介護保険制度の概要」などを基に筆者作成
民間介護保険と公的介護保険の違い1:加入義務
民間介護保険と公的介護保険とでは、加入義務が違います。
民間介護保険は個々の必要に応じて、加入するかどうかを選択できます。そもそも、民間介護保険は保険会社が販売する保険商品ですので、「誰もが加入すべき」というものではありません。
なお、加入が任意ということは、「入りたい」と思っていても自動で入れることはありません。加入したい場合、自分から保険会社と契約を結びましょう。
一方、公的介護保険は国や地方自治体が運営する公的な制度であり、40歳以上の全ての人が加入する義務があります。そして、公的介護保険の保険料は生涯支払う必要があり、一部の人を除いて支払い免除はありません。
民間介護保険と公的介護保険の違い2:給付方式
民間介護保険と公的介護保険では、給付方式も異なります。
民間介護保険では、給付の対象となった場合には、契約内容に応じた現金が支払われます。具体的には、保険会社との契約に定められた所定の要介護状態に該当した時点で、契約時に定めた金額を給付金受取金として受け取れるという仕組みです。なお、給付金の受け取り方としては一時金や年金などがあります。
一方、公的介護保険は、介護サービスそのものが給付される現物給付です。実際には、要介護認定を受け、利用した介護サービスの費用の一部が公的介護保険でまかなわれ、それ以外の自己負担分を支払います。介護サービスの中身としては、訪問介護やデイサービス、施設への短期入所などがありますが、公的介護保険を利用するには要介護認定を受けなければなりません。
民間介護保険と公的介護保険の違い3:給付対象者
給付対象者も、民間介護保険と公的介護保険で異なります。
民間介護保険では、基本的に給付の年齢制限はありません。そのため、保険料さえ支払っていれば、契約次第で40歳未満であっても給付が受けられます。保険会社との契約内容によって、給付対象者が決まるといえるでしょう。
一方、公的介護保険の給付を受けられるのは40歳以上です。そして、その中でも年齢によって条件が異なります。具体的には、40歳以上65歳未満は特定疾病のみ、65歳以上は要介護度に応じて給付がされます。
民間介護保険の種類
民間介護保険と一口にいってもさまざまな商品があります。それぞれの商品は保険の適用期間や受給方法、貯蓄性の有無、給付条件といった形式の中で分類が可能です。
今回は「保険適用期間」、「受給方法」、「貯蓄性の有無」によって、それぞれどのような民間介護保険の種類があるのかをみていきます。
民間介護保険を保険適用期間で分類
保険適用期間による分類としては、「定期型」と「終身型」があります。
「定期型」の民間介護保険とは、保険料の支払期間が「10年間」「60歳まで」といったように、期間が定められている保険です。そして、定められた期間内に要件を満たせば、給付金が受け取れます。「定期型」は終身型よりも保障期間が短い分、保険料が安いというメリットがあります。ただ、満期で更新した際には保険料が上がってしまう面も認識しておきましょう。
「終身型」の民間介護保険は、被保険者が生涯を終えるまで保障が続くため、生きている中で要介護となれば給付金が受け取れます。「終身型」の中には、保険料を一生払い続けるものもあれば、一定年齢までで保険料の支払いが終わるものもあります。
民間介護保険を受給方法で分類
民間介護保険で給付金を受け取る際の受給方法の選択肢としては、「年金」と「一時金」そして、「併用型」の3種類です。
「年金」では、給付金を毎月年金形式で受け取れます。そのため、長期間の介護にも対応が可能です。ただし、「一時金」と比べると短期間で受け取れる金額が低くなる点や、想定よりも介護が早く終わった場合には、給付金額の合計が思ったよりも少なくなる可能性があります。
「一時金」は、被保険者が要介護になった時点で、まとまった給付を受け取るタイプの保険です。年金と異なり、給付は1回のみですが、多くの給付金を受給できます。ただし、「年金」とは違い長期間の介護になればなるほど、お金が足りなくなるリスクが増えていきます。
「併用型」は「年金」と「一時金」両方の給付金を受け取れる保険です。要介護になった際の初期費用に加え、長期的な介護にも対応が可能です。ただし、支払う保険料は「年金」や「一時金」よりも高額であることを覚悟する必要があります。
民間介護保険を貯蓄性の有無で分類
民間介護保険では、貯蓄性の有無によっても分類が可能です。「貯蓄型」と「掛け捨て型」の特徴についてみていきましょう。
「貯蓄型」の民間介護保険では、要介護状態にならなかった場合でも、遺族への保障がもらえます。また、解約した場合にも、支払った保険料と同程度の返戻金がもらえる場合もあります。ただし、掛け捨てに比べると保険料が割高で、返戻金は支払った保険料の総額よりも少ないこともある点には注意が必要です。
「掛け捨て型」は要介護状態になった場合のみ保障が受けられる保険です。解約時の返戻金がもらえる場合もありますが、通常は「貯蓄型」よりも少なく設定されています。「貯蓄型」よりも保険料が安いので、シンプルで手軽な民間介護保険に入りたい人におすすめです。
民間介護保険に加入するメリット
民間介護保険を検討する際には、メリットとデメリットを理解しておくことが大切です。まずはメリットについてみていきましょう。
民間介護保険のメリット1:介護の経済的な負担を軽減できる
民間介護保険に加入すると、介護にかかる経済的な負担を軽減できます。もしも介護が必要になった場合、介護サービスの費用以外にもさまざまなお金が必要です。バリアフリーにするための自宅の改修費やタクシーなどの移動費、おむつなど、多くの費用がかかります。
もちろん、公的介護保険でも、介護費用の軽減は図れます。ただし、公的介護保険では、介護サービスにかかる費用の1~3割は自己負担です。また、要介護度に応じてサービス受給の限度額があるため、限度額を超える分は全額自己負担です。
民間介護保険に加入していれば、このような介護にかかる経済的な負担を軽減することができるでしょう。
民間介護保険のメリット2:現金で給付が受けられる
公的介護保険の場合、介護サービスの一部の費用を自己負担する形です。そのため、保険の利用用途は限定的です。
一方、民間介護保険では現金が支給されるため、そのお金は介護サービスの利用料に使っても良いですし、おむつ代や自宅のリフォーム代、車いすの購入費用、生活費など、さまざまな費用に活用できます。
民間介護保険では、状況に合わせて、必要な使い道を選択できるでしょう。
民間介護保険のメリット3:公的介護保険の給付対象外の人も給付できる可能性がある
公的介護保険の場合、給付の対象者は65歳以上では要介護度に合わせて、40歳~65歳では特定疾病を患った場合のみ給付を受けられます。実際問題として、65歳未満でも特定疾病以外の理由で介護が必要になってしまう可能性はゼロではありません。
もしもそうなってしまうと、収入が減るだけでなく、介護費用もかかり、家計に大きなダメージを与えてしまいます。
民間介護保険では、公的介護保険の給付対象外の人でも、契約内容次第では保障の対象です。40歳以下の人や、交通事故など特定疾病以外の人でも給付対象となり得る場合があるように、給付対象者の幅が広い点はメリットです。
民間介護保険に加入するデメリット
続いて、民間介護保険のデメリットについてみていきます。
民間介護保険のデメリット1:保険料を負担しなければならない
民間介護保険は民間の企業が運営しており、当然ながら加入すると保険料を支払わなくてはなりません。保険料は保険会社や商品によってさまざまですが、負担が増えることは同じです。
一般的に、掛け捨てタイプは割安な保険料で加入できますが、その分所定の状態にならなければ、支払った保険料は戻ってきません。貯蓄型でも、保険料は掛け捨てタイプ以上に割高になります。そのため、保険に加入した人全員が得をするというようなことはありません。
保険は介護以外でも、死亡保険や医療保険、子どもの学資保険などさまざまです。他の保険商品との優先順位を決めながら、無理のない範囲の保険に加入しましょう。
民間介護保険のデメリット2:要介護認定を受けても給付がされない場合もある
公的介護保険は、要介護度に応じて介護サービスが受けられます。一方、民間介護保険の給付条件は保険の商品によって異なります。
もちろん、商品によっては公的介護保険と給付条件が同様の場合もありますが、独自で基準を決めている場合も少なくありません。そのため、高い保険料を支払っていても、条件次第では給付を受けられない場合も考えられます。
要介護認定を受けたからといっても、全ての民間介護保険で必ず給付が受けられるわけではないことは認識しておきましょう。
民間介護保険のデメリット3:健康状態によっては加入できない
公的介護保険は40歳以上の誰もが加入できますが、民間介護保険は全員が加入できるとは限りません。
具体的には、けがや病気などの既往歴がある場合、民間介護保険に加入できない場合もあります。
誰でも100%加入できるわけではないことは注意しておきましょう。
民間介護保険の必要性が高い人の特徴
続いて、ここまで紹介した民間介護保険のメリット・デメリットなどを踏まえ、民間介護保険の必要性が高い人の特徴を解説しています。
民間介護保険の必要性が高い人の特徴1:貯蓄や年金などで介護に必要な費用を準備できない
介護に必要な費用は、人によってさまざまですが、もしも貯蓄で費用をまかなえるなら、民間介護保険に入る必要はないでしょう。それでは、だいたい介護に必要な費用はどれくらいなのでしょうか? 公益財団法人生命保険文化センターの「2021年度生命保険に関する全国実態調査」によると、介護にかかった平均の費用と期間は次のとおりです。
●毎月の費用:8.3万円
●一時的な費用(介護用ベッドなど):74万円
●介護期間:5年1ヶ月
介護期間5年1ヶ月、毎月8.3万円がかかるとすると、総額で約506万円です。一時的な費用を加えると、600万円程度は必要といえるでしょう。
あくまでも目安ですが、これくらいの金額について、貯蓄や年金などで対応することが難しい人は、対応可能な人よりも民間介護保険の必要性が高いといえます。
民間介護保険の必要性が高い人の特徴2:介護が必要になった際に頼れる親族がいない
もしも介護が必要になったとしても、近くに頼れる親族がいれば、そこまでお金もかからないかもしれません。介護は家族がおこなう場合も多いですが、有料の介護サービスを利用すれば、その分介護費用の負担は大きくなります。
そのため、介護が必要になった際に、「家族がいない」「子どもの居住地が遠方のため頼れない」という人は民間介護保険の必要性が高くなります。
民間介護保険の必要性が高い人の特徴3:64歳以下で要介護になるリスクに備えたい
公的介護保険では64歳以下の場合、特定疾病による要介護状態のみ対象で、40歳未満はそもそも対象外です。
そのため、64歳以下で要介護状態になる可能性を考慮し、リスクに備えたいという人は、民間介護保険を検討したいところです。
民間介護保険の必要性が低い人の特徴
民間介護保険の必要性が高い人もいれば、反対に低い人もいます。民間介護保険の必要性が低い人の特徴をみていきましょう。
民間介護保険の必要性が低い人の特徴1:貯蓄が多いなどで介護費用も問題なく準備できる
介護に限らず、保険は万が一に備えるものです。そして、万が一が起きた際でも困らなければ、わざわざ保険に入って毎月保険料を負担する必要は全くありません。
そのため、預貯金や金融資産、老後の年金などが十分であれば、民間介護保険に加入する必要性は低いです。具体的には、先で紹介したとおり、介護では平均で600万円くらいかかります。もしもこれくらいのお金の捻出が容易であれば、目安としては民間介護保険の必要性はそれほど高くはないでしょう。
民間介護保険の必要性が低い人の特徴2:介護が必要になっても身近に頼れる親族がいる
もしも介護が必要になったとしても、身近に住んでいる親族が助けてくれるのであれば、民間介護保険の必要性は低いです。
実際、介護は自宅でおこなわれることも少なくありません。公益財団法人生命保険文化センターの「2021年度生命保険に関する全国実態調査」によると、介護をおこなった場所は「自分の家」が40.2%、「親や親族の家」が16.6%と、両方合わせると半分を超えます。
これらの場合、有料老人ホームや介護サービス付き住宅などを利用する場合よりも、経済的な負担は基本的には少ないです。
とはいえ、身近に普段頼りにしている親族がいるとしても、実際に介護をしてくれるとは限りません。介護と一口にいっても、実際にはやることが多く、苦労も多くあります。例えば、排せつの介助については、においや処理に抵抗を持つ人も少なくないでしょう。認知症の場合、コミュニケーションが取れなかったり、徘徊(はいかい)への対応が困難だったりするかもしれません。
身近に頼れる親族がいて、実際に介護をしてくれる場合には助かりますが、「介護をしてくれるだろう」と勝手に思い込むことは危険です。頼れる人が身近にいても、事前にしっかりと話し合いをしておくほうがよいでしょう。
民間介護保険に加入すべきタイミング
民間介護保険を検討していく中で、気になるのは「加入すべきタイミング」です。加入すべきタイミングは誰でも一概にこの年齢が最適というものはありません。
とはいえ、基本的に、若くて健康なうちに加入したほうが保険料は安いですし、公的介護保険の対象年齢に関わらず、保障を受けることも可能です。
しかし、若くして加入すると、その分保険料を長い間払わなければなりませんし、他に備えるべき保険があるかもしれません。ここでは、民間介護保険に加入すべきタイミングについて考えていきます。
80代以降、要介護リスクが高まる
保険は必要な時に加入し、万が一に備えたいところですが、そもそも、介護になるリスクは何歳くらいから高くなるのでしょうか。
厚生労働省の「令和4年度 介護給付費等実態統計の概況」で65歳以上の公的介護保険の受給者数の割合は、図表2のとおりです。
図表2
65-69歳 | 70-74歳 | 75-79歳 | 80-84歳 | 85-89歳 | 90-94歳 | 95歳以上 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
男性 | 2.3% | 4.4% | 7.9% | 14.8% | 28.2% | 46.6% | 71.0% |
女性 | 1.8% | 3.9% | 9.1% | 21.0% | 42.3% | 64.4% | 88.0% |
厚生労働省「令和4年度 介護給付費等実態統計の概況」を基に筆者作成
70代までは男女ともに10%未満ですが、80代以降、年齢が高くなるにつれて飛躍的に割合も上昇していっています。
中には、80歳未満でも公的介護保険を受給する人はいますが、70歳未満では、それ以降と比べるとまだ要介護のリスクは高くないといえるでしょう。
50代で加入している人が多い
80代以降で要介護のリスクは高くなりますが、実際に民間介護保険に加入している人はどの年代が多いのでしょうか。
公益財団法人生命保険文化センターの「2022年度生活保障に関する調査」で公開されている、民間介護保険、介護特約の年代別加入率は図表3のとおりです。
図表3
20代 | 30代 | 40代 | 50代 | 60代 | 70代 | |
---|---|---|---|---|---|---|
男性 | 4.3% | 11.6% | 9.3% | 11.5% | 7.8% | 5.1% |
女性 | 4.3% | 8.7% | 10.5% | 14.2% | 7.7% | 4.9% |
公益財団法人生命保険文化センター「2022年度生活保障に関する調査」を基に筆者作成
男性は30代が最も加入率が高いですが、50代も同じくらい高いです。そして、女性は50代が最も高く、男女の平均でも50代が最も高くなっています。50代くらいになると、親世代の介護を経験していることも増えてきているため、自身の介護についても考え始めているのかもしれません。
若いうちに加入するメリット・デメリット
50代で加入する人が多い民間介護保険ですが、若いうちから加入することによるメリットもあります。
若いうちは月々の保険料は低いので、歳を重ねてから入るよりも保険料の負担は少ないです。また、公的には40歳以降でしか介護の保障はありませんが、若いうちに加入すれば、40歳未満でもリスクに備えられます。若くて健康であれば、それだけ保険加入に必要な審査も通りやすいでしょう。
一方、若いうちに加入することにはデメリットもあります。1つは、保険料を負担しなければならない期間が長くなるという点です。また、インフレリスクもあります。具体的には、若いうちに決めた給付金額でも、将来インフレが起きて物価が上昇してしまうと、介護費用が不足してしまうかもしれません。
民間介護保険の選び方
最後に、民間介護保険を選ぶ際に押さえておきたいポイントのうち、主なものについてみていきます。
民間介護保険の選び方1.給付条件で選ぶ
民間介護保険の給付金を受け取るには、所定の条件を満たす必要があります。主な給付条件は「公的介護保険連動型」と「独自型」の2つです。
「公的介護保険連動型」とは、給付条件が公的介護保険に連動している商品です。給付条件が分かりやすい点がメリットといえるでしょう。なお、公的介護保険は40歳以上が対象ですが、民間介護保険の「公的介護保険連動型」では、所定の条件の下、40歳未満でも対象となることが一般的です。
「独自型」は保険会社が独自に決めた給付条件に該当した場合に給付金が受け取れる商品です。給付条件が細かく細分化されているため、自分に合ったものを選べる自由度の高さがメリットといえるでしょう。一方で、独自性が高いゆえ、商品選択で他社商品と比較がしづらい点には注意が必要です。
民間介護保険の選び方2.受け取り方法で選ぶ
民間介護保険の給付金の受け取り方法としては、「年金」と「一時金」、そして「併用型」の3つが選べるものが多いです。
「年金」は給付金を年金で受け取れるタイプの商品です。先に紹介した公益財団法人生命保険文化センターの「2021年度生命保険に関する全国実態調査」によると、介護期間の平均は5年1ヶ月とそれなりの期間です。また、10年以上の割合も17.6%であり、介護が長期間に及ぶことも考えられます。
「年金」では、一定期間だけ受け取れるものもありますが、生涯受け取れるタイプもあります。特に生涯受け取れるタイプについては、介護の長期化が不安な人に向いているでしょう。
「一時金」は給付金を一時金で受け取るタイプです。「2021年度生命保険に関する全国実態調査」でも、介護用ベッドなどの一時的に必要な費用の平均は74万円と、初期費用も少なくありません。一時金であれば、必要な初期費用に対する負担を軽減できるでしょう。
「併用型」は継続的な費用と一時的な費用のどちらにも対応できる商品です。両方に備えられるという手厚い保障がメリットですが、どちらか1つのタイプよりも保険料が高いというデメリットもあります。
民間介護保険の選び方3.貯蓄性で選ぶ
民間介護保険は貯蓄性の有無によって、「貯蓄型」と「掛け捨て型」に分けられます。
「貯蓄型」はメインの介護保険に死亡保険や年金保険などがセットされている商品です。基本的な介護に対する保障以外にも、高度障害や亡くなった場合の保険金、解約時の解約返戻金、年金などが受け取れます。このような貯蓄性がある点はメリットですが、その分「掛け捨て型」よりも保険料は割高です。
「掛け捨て型」は基本的には介護保障のみの商品が多く、所定の要介護状態にならなければ、保険料が掛け捨てになる商品です。保険料が割安で、シンプルな保障で分かりやすい点がメリットといえるでしょう。
民間介護保険の選び方4.迷う場合は専門家へ相談しよう
民間介護保険は種類が多く、そもそも公的介護保険がある中、入る必要性があるかどうかも判断は簡単ではありません。
自分に合った民間介護保険を選ぶには、複数の商品をしっかりと比較し、見極める必要があります。とはいえ、保障内容や給付金の受け取り方など、自分だけで考えてもなかなか決められないかもしれません。
そのような際には、保険やライフプランの専門家に相談すると、第三者的な視点と専門的な知識から、自分に合ったプランを提案してくれるでしょう。
民間介護保険まとめ
民間介護保険に加入すれば、公的介護保険で備えられない面についても手厚く対応できます。とはいえ、民間介護保険に加入すれば、保険料の負担は必要です。
また、民間介護保険の必要性や、どの商品を選べば良いのかは個々の状況によるため、一概に語ることはできません。
本記事を参考にするとともに、迷った時には専門家に相談するなど、しっかりと検討したうえで結論を出しましょう。
出典
内閣府 令和5年版高齢社会白書(全体版)
厚生労働省 令和4年度 介護給付費等実態統計の概況
厚生労働省 介護保険制度の概要
公益財団法人 生命保険文化センター 2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査
公益財団法人 生命保険文化センター 2022(令和4)年度 生活保障に関する調査
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部