更新日: 2024.07.27 その他保険

友人から病院への交通費が公的保険から受け取れたと聞きました。そんなことってあるんでしょうか?

友人から病院への交通費が公的保険から受け取れたと聞きました。そんなことってあるんでしょうか?
病院に行くための交通(移送)費は、公的な保険から受け取ることができるのでしょうか?
 
元気な時なら歩くのが苦にはならない距離でも、病気になったり、ケガをしたりしたときには、病院に行くのも苦労することもあるかもしれません。本稿では、病院に行くための交通費を公的な保険から受け取るができるか否かのお話です。
大泉稔

執筆者:大泉稔(おおいずみ みのる)

株式会社fpANSWER代表取締役

専門学校東京スクールオブビジネス非常勤講師
明星大学卒業、放送大学大学院在学。
刑務所職員、電鉄系タクシー会社事故係、社会保険庁ねんきん電話相談員、独立系FP会社役員、保険代理店役員を経て現在に至っています。講師や執筆者として広く情報発信する機会もありますが、最近では個別にご相談を頂く機会が増えてきました。ご相談を頂く属性と内容は、65歳以上のリタイアメント層と30〜50歳代の独身女性からは、生命保険や投資、それに不動産。また20〜30歳代の若年経営者からは、生命保険や損害保険、それにリーガル関連。趣味はスポーツジム、箱根の温泉巡り、そして株式投資。最近はアメリカ株にはまっています。

健康保険の移送費

病気やけがで乗用車や公共交通機関(鉄道・バス・タクシー・船)等で病院まで移動することが難しい患者が、医師の指示で一時的かつ緊急的な必要があり、また保険治療を目的として移送された場合は、健康保険から移送費が現金給付として支給されます。
 
支給される額に上限がありますが、実費です。いわゆる3割負担などではありません。では、上限はどのように計算するのでしょうか? 最も経済的で、通常の経路と方法により移送された場合に掛かる旅費に基づいて計算した額が上限です。
 
では、医師等が付き添った場合はどのようになるのでしょうか。医師等が付き添う必要がある場合に限って、付き添った人の人件費は健康保険から療養費として支給されます。ただし、健康保険の移送費は、「医師の指示で一時的かつ緊急的な必要」が前提ですので、健康保険の移送費を受け取ることができるのは稀なケースだといえそうです。
 

労働者災害補償保険(労災保険)の移送費

労働者災害補償保険(労災保険)でも移送費の請求ができる場合があります。では、どのような場合でしょうか?
 
まずは、労働災害や通勤災害に遭った現場等から病院への移送です。なお、災害に遭った直後は入院しなかったものの、その後、症状が悪化し入院が必要になった場合、自宅から入院先の病院までの移送も対象になります。
 
転院等に伴う移送も対象となります。なお、転院に伴う移送等には労働基準監督署長の勧告による場合と医師の指示による場合とがあります。転地療養も含みます。また、医師の指示による退院に伴う移送も対象です。
 
<労災保険の移送費は通院も対象になる場合も>
労災保険の移送費は通院も対象になる場合もあります。片道2km以上の通院が原則です。では片道2km未満の通院は対象外になるのでしょうか?労働災害や通勤災害に遭った人が、交通機関を利用しなければ通院が困難なときは、片道2km未満の通院でも、移送費が請求の対象となる場合があります。
 
健康保険に比べると、労災保険のほうが対象となる移送の範囲が広いことが分かります。
 

通院の費用が医療費控除の対象となる場合も

公的な保険から受け取ることができるものではありませんが、所得税には医療費控除があります。医療費控除の対象となる通院費用もあります。これは、医師等による治療を受けるために電車やバスなどの公共交通機関を利用した場合の交通費です。
 
タクシー代は電車やバスなどの公共交通機関を利用できない場合に限り、医療費控除の対象となります。また、自家用車で通院する場合のガソリン代や駐車場の料金などは、医療費控除の対象とはなりません。
 
医療費控除は確定申告が必要です。通院の費用も忘れずに申告しましょう。
 

出典

厚生労働省 移送費(通院費)について
全国健康保険協会 移送費
国税庁 No.1122 医療費控除の対象となる医療費
 
執筆者:大泉稔
株式会社fpANSWER代表取締役

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