乾燥が続き火災相次ぐ。「もらい火」への金銭的な備えは火災保険で

配信日: 2019.01.30 更新日: 2019.07.02

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乾燥が続き火災相次ぐ。「もらい火」への金銭的な備えは火災保険で
年末からほとんど雨が降っていない太平洋側では、火災が相次いでいます。
 
隣接する建物も「もらい火」により被害を受けています。日本の法律では、失火の場合、火元に損害賠償の請求をすることは難しく、火災保険に加入するなど自己防衛する必要があります。
 
新美昌也

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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火災の発生原因

総務省消防庁の資料によると、平成29年の総出火数は39,373件。出火原因別にみると、「たばこ」3,712件(9.4%)、「放火」3,528件(9.0%)、「こんろ」3,032件(7.7%)、「たき火」2,857件(7.3%)、「放火の疑い」2,305件(5.9%)の順となっています。
 
自分の家は大丈夫だと思っていても、放火や隣家からの「もらい火」は防ぎようがありません。「もらい火」の場合は、火元に損害賠償を請求すれば良いと思うかもしれませんが、この後説明するように、失火者からの損害賠償は受けることができません。
 

失火者からの損害賠償は受けられない

不法行為によって被害を受けた場合、相手に対して損害賠償を求めることができます。
 
民法709条では「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」と定めています。
 
しかし、失火の場合には、明治にできた失火ノ責任ニ関スル法律(失火責任法)で「民法第七百九条ノ規定ハ失火ノ場合ニハ之ヲ適用セス但シ失火者ニ重大ナル過失ニアリタルトキハ此ノ限ニ在ラス」とされています。
 
つまり、この規定により、失火の場合、相手に故意または重過失がない限り損害賠償を請求することはできません。木造家屋の多い日本では延焼しやすく、賠償責任が過大になることから軽過失を免除したのです。
 
では、責任を問える重過失とはどんな場合でしょうか。
 
過去の裁判例では、重過失が認定されたケースとして、「電熱器(ニクロム線の露出しているもの)を布団に入れ、こたつとして使用し火災が発生した」「電気こんろを点火したまま就寝したところ、ベッドからずり落ちた毛布が電気こんろにたれさがり、毛布に引火し火災になった」「主婦が台所のガスこんろにてんぷら油の入った鍋をかけ、中火程度にして、台所を離れたため、過熱されたてんぷら油に引火し、火災が発生した」「寝たばこの火災の危険性を十分認識しながらほとんど頓着せず、何ら対応策を講じないまま漫然と喫煙を続けて火災を起こした」などがあります。
 

火災保険で自己防衛

このように隣家からの「もらい火」で自宅が焼失しても、多くの場合、隣家に対して損害賠償を請求することは難しいので、火災保険で備える必要があります。多くの方は火災保険に加入していることと思いますが、補償内容を十分に理解している方は多くないのではないでしょうか。
 
火災保険の補償内容の中でも、保険の対象の評価額がどうなっているかの確認が大切です。評価額は保険金額を決定するための基準や損害保険金を支払う際の基準になるからです。
評価額の算出基準には「新価」と「時価」があるのをご存知でしょうか。
 
「新価」は、保険の対象である建物や家財を再取得、再築等するのに必要な額をベースにした評価額です。「時価」は新価による評価額から、経過年数による減価や使用による消耗分を差し引いた額をベースにした評価額です。
 
「時価」で契約していた場合、火災で家が焼失しても、建て直すことができないので、「新価」での契約をおすすめします。放火や隣家からの「もらい火」に備えて「新価」で火災保険に加入しているかチェックしましょう。
 
なお、火災保険では、地震・噴火またはこれらによる津波を原因とする火災・損壊・埋没・流出による損害は補償されません。これらの補償は火災保険と地震保険をセットで加入する必要があります。
 
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
 

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