妻は保険金1000万円の終身保険に入っています。最近保険金額を減額したので解約返戻金200万円を受け取ったのですが、税金はかかるのでしょうか?
配信日: 2024.12.11
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/
「その収入を得るために支出した金額」とは
減額とは、保障額を減らす方法です。減額は、保障の一部を解約したものとして取り扱われるため、解約返戻金を受け取れるケースもあります。また、減額後、払い込む保険料が安くなります。
減額に伴って受け取る解約返戻金は、一時所得として所得税の課税対象です。一時所得の金額については、以下のように計算します。
総収入金額-その収入を得るために支出した金額-特別控除額(最高50万円)
そして、この所得金額の2分の1に相当する金額を、給与所得などの他の所得の金額と合計することで金額を求めた後、納める税額を計算します。
さて、「その収入を得るために支出した金額」とは、法人契約では「既払保険料×(減額部分の保険金額÷減額前の保険金額)」ですが、個人契約では「既払保険料のうち清算金(取得する解約返戻金)の金額に達するまでの金額」となります。
「既払保険料のうち清算金(取得する解約返戻金)の金額に達するまでの金額」とする理由
国税庁のホームページによると、理由は以下のとおりです。
(1) 一時所得は、臨時・偶発的な所得であることから、継続的に収入があることを前提とした「あん分方式」は、その所得計算になじまないと考えられること
(2) 生存給付金付養老保険や生命保険契約の転換により、責任準備金が取り崩された場合には、以下の記述のように、すでに支払った保険料のうち、一時金の金額に到達するまでの金額を支出額に算入するとしており、本件においても異なる取り扱いをする特段の理由はないこと
■ 生存給付金付養老保険(満期前に複数回、生存給付金が支払われる養老保険)について、その保険金の控除額は先取方式(払い込みした保険料の額を給付の早いものから順次配分するという考え方)により取り扱っている
■ 保険契約の転換時に、契約者に対する貸付金が責任準備金をもって清算された場合には、保険契約者は、転換前の契約に係る保険金を支払うための資金として「責任準備金」の取り崩しを受けて、借入金を返済したということになる(生命保険契約の一部解約によって解約返戻金のが支払われたことと同様に考えられる)から、一時所得額の計算上、収入金額から控除する保険料額は、すでに支払った保険料のうち収入金額(貸付金の額)に到達するまでの金額に相当する金額として取り扱っています(昭53直資2-36)
(出典:国税庁「一時払養老保険の保険金額を減額した場合における清算金等に係る一時所得の金額の計算」)
冒頭のご相談では、既払保険料は580万円で解約返戻金は200万円とのことなので、既払保険料は580万円のうち解約返戻金と同額の200万円が「その収入を得るために支出した金額」となります。つまり、一時所得はなく、減額に伴う解約返戻金を取得しても課税は生じません。
まとめ
減額に伴って個人が取得する解約返戻金は一時得ですが、「その収入を得るために支出した金額」とは、法人契約では「既払保険料×(減額部分の保険金額÷減額前の保険金額)」ですが、個人契約では「既払保険料のうち清算金(取得する解約返戻金)の金額に達するまでの金額」となります。
保険金額の減額を検討している方は、以上のことを留意しておきましょう。
出典
国税庁 一時払養老保険の保険金額を減額した場合における清算金等に係る一時所得の金額の計算
国税庁 No.1490 一時所得
公益財団法人生命保険文化センター 保障内容の変更と対応方法
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー