両親が2泊3日のツアー旅行に「保険証のコピー」を持っていきましたが、現地のクリニックで「不可」とされ「10割負担」になったようです。保険証のコピーではダメなのでしょうか?

配信日: 2024.12.11

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両親が2泊3日のツアー旅行に「保険証のコピー」を持っていきましたが、現地のクリニックで「不可」とされ「10割負担」になったようです。保険証のコピーではダメなのでしょうか?
ツアー旅行に参加するときには、万が一の事態に備えて、保険証のコピーを持参する人はいるのではないでしょうか。
 
そもそも保険証のコピーを持参する目的は、不測の事態に備えるためなのですが、いざ、保険証を使う段階になって、コピーでは10割負担になってしまったら、経済的にも精神的にも負担は大きくなります。保険証のコピーは、どのような扱いになるのでしょうか?
飯田道子

執筆者:飯田道子(いいだ みちこ)

ファイナンシャル・プランナー(CFP)、海外生活ジャーナリスト

金融機関勤務を経て96年FP資格を取得。各種相談業務やセミナー講師、執筆活動などをおこなっています。
どの金融機関にも属さない独立系FPです。

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保険証のコピーは、健康保険に加入している証明にすぎない!?

いざというときに備えて、旅行先に保険証のコピーを持参する人は少なくありません。とはいえ、クリニック等で診察を受けるときには、コピーではなく、原本を提出しなければ、クリニック等の窓口では、かかった医療費の全額を支払わなければならなくなってしまいます。
 
その理由としては、保険証のコピーは、あくまでも健康保険に加入していることを証明するためだけのものであり、悪用されるトラブルが多いこともあるからなのです。トラブルの例としては、保険証の期限が切れている、勤務先を退職等に伴う無効、保険種別の健康や負担割合の変更などが考えられます。
 
海外旅行の場合も、保険証のコピーを持参する人は多いですよね?
 
しかしながら、海外では日本の保険証そのものが利用することができず、かつ、海外旅行保険に加入していることがほとんどです。このような場合は、コピーした保険証が使えた(有効であった)というのではなく、あくまでも海外旅行保険によって補償が受けられたにすぎません。保険証のコピーが使えたということではありません。
 

保険証のコピーで受診したときには自由診療になる

保険証の原本ではなく、コピーの保険証を提出しても診察は受けられますが、この場合は自由診療となってしまい、原則、全額自己負担となります。
 
自由診療になってしまうと、原本を持っていれば医療費の負担額が2~3割負担で済んだものが、10割負担、つまり全額を自分で負担しなければならないため、金銭的な負担が大きくなってしまいます。
 
もし、旅行先で保険証のコピーしか持っておらず、全額自己負担で医療費・受診料を支払ったときには、払い過ぎた医療費・受診料を取り戻すこと(払い戻し)も可能になっています。
 
では、医療費・受診料を取り戻すためには、どのようにすればよいのでしょうか?
 

10割支払って医療費(療養費)は、払い戻しを受けることができる

そもそも健康保険を利用するときには、保険医療機関の窓口に保険証を提示して診療を受けることが原則です。これを、「現物給付」といいます。
 
しかしながら、保険証のコピーしか持参していないとき等のやむを得ない事情のもと、現物給付を受けることができないときや、治療のために各種装具が必要になってしまったとき等がある場合は、まず、かかった医療費・受診料の全額を自分で支払い、その後から、請求することにより、療養費(被扶養者の場合は家族療養費)として、払い戻しを受けることができます。
 
ただし、療養費は支払った医療費が全額払い戻しされるわけではありませんので、注意が必要です。
 
療養費は、被保険者や被扶養者が保険医療機関で保険診療を受けた場合を基準に計算した額となります。つまり、実際に支払った額が保険診療基準の額より少ないときには、実際に支払った額から一部負担金相当額を差し引いた額が払い戻されるため、医療費の全額が払い戻されるわけではないのです。
 
払い戻しを受けるためには、勤務先の総務、国民健康保険であれば、住まいのある住所地の役所に出向いて手続きをします。
 
万が一のときに10割負担はキツイというのなら、保険証のコピーではなく、原本も持参すると安心でしょう。
 

出典

全国健康保険協会 医療費の全額を負担したとき(療養費)
 
執筆者:飯田道子
ファイナンシャル・プランナー(CFP)、海外生活ジャーナリスト

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