定年退職後は「国民健康保険」に変わるのでしょうか? その場合、月々の「保険料」も上がりますか?
配信日: 2025.04.14

どんな選択肢があり、どれを選ぶとご自分にとってメリットがあるか、確認していきましょう。

執筆者:馬場愛梨(ばばえり)
ばばえりFP事務所 代表
自身が過去に「貧困女子」状態でつらい思いをしたことから、お金について猛勉強。銀行・保険・不動産などお金にまつわる業界での勤務を経て、独立。
過去の自分のような、お金や仕事で悩みを抱えつつ毎日がんばる人の良き相談相手となれるよう日々邁進中。むずかしいと思われて避けられがち、でも大切なお金の話を、ゆるくほぐしてお伝えする仕事をしています。平成元年生まれの大阪人。
定年退職後の健康保険の選択肢とは
定年退職後の健康保険には、以下のような選択肢があります。
1. 国民健康保険に加入する
2. 退職時まで加入していた健康保険を任意継続する
3. 特例退職者保険制度を利用する
4. 家族の健康保険に加入する(扶養に入る)
5. 再雇用・再就職先の健康保険に加入する
「定年退職したら国民健康保険に変わる」とは限りません。本人の状況や希望によって、それ以外の方法も選べるので、それぞれの内容や条件を知っておくことが大切です。
なお、75歳以上の人は、生活保護を受給している人を除く全員が後期高齢者医療制度に加入するため、上記の選択肢があるのは定年退職後から74歳までです。
1. 国民健康保険に加入する
国民健康保険(国保)は、無職の人や自営業・フリーランスの人など、他の健康保険制度に加入していない人を対象とした健康保険です。おもに都道府県や市区町村が運営しています。
国民健康保険の保険料は、住んでいる自治体や年収などによって大きく異なります。正確に知りたい場合は自治体の窓口や公式サイトで調べるのが確実です。
ただ、一般的には他の健康保険に比べて保険料が高くなりがちで、保障内容も最低限にとどまっている傾向があります。
2. 退職時まで加入していた健康保険を任意継続する
今まで加入してきた健康保険に加入し続ける方法もあります。
任意継続を選んだ場合、前述の国民健康保険と違い、扶養している家族の分の保険料負担はありません。今までの健康保険とほぼ同じ保障内容になっていることが多いため、手厚い保障がある健康保険に加入していた人にとっては特にメリットが大きいでしょう。
ただし、これまで勤務先と折半だった保険料が全額自己負担になるので、退職後の保険料は2倍程度まで上がります。また、任意継続ができるのは退職後2年までで、それ以降は他の選択肢を選ぶ必要があります。
3. 特例退職者保険制度を利用する
加入していた健康保険によっては、任意継続とは別に「特例退職者保険制度」を用意している場合があります。
基本的に今まで長年勤務してきた人のための制度なので「加入歴20年以上」などの条件がありますが、うまくあてはまれば、任意継続同様の内容で後期高齢者医療保険に加入する(原則75歳で加入する)まで加入し続けられます。
4. 家族の健康保険に加入する(扶養に入る)
定年退職後の収入がない、もしくは少ない場合は、家族の扶養に入るのも1つの方法です。
家族が大手企業に勤めているなどで手厚い健康保険に加入している場合、扶養に入ることで、保険料の負担なしで自分もそのメリットを享受できるようになります。
保険料という面では最も有利になりますが、家族の状況や収入など加入のための要件が厳しい傾向があるため、要件を満たせるかどうかよく確認しましょう。
5. 再就職先の健康保険に加入する
定年退職後に再就職し、その再就職先の健康保険に加入することもできます。この場合、必要な手続きは再就職先が行い、保険料も折半して負担してくれます。
保険料は収入しだい、保障内容は加入する健康保険しだいですが、手間や費用の負担を比較的抑えやすい方法といえるでしょう。
選び方がわからない! 結局、どれを選ぶのがお得なの?
「選択肢が多くて、どれを選べばいいかわからない」と感じるかもしれません。そんなときはまず、自分がそれぞれの選択肢を利用できる条件にあてはまっているのか確認するところから始めましょう。
最も保険料を抑えられるのは家族の扶養に入る方法ですが、そもそも家族がいなければその選択肢はなくなります。また「特例退職者保険制度がお得そうだ」と思っても、加入中の健康保険にその制度がなければ利用できません。他の制度にもそれぞれ条件があるため、もともと選択肢が少ない人もいます。
まずはどれを利用できるのか確認し、それを選んだ場合に保険料と保障内容を調べて比較して、自分に合った方法を見つけましょう。
まとめ
定年退職後の健康保険にはさまざまな選択肢があり、必ずしも国民健康保険に加入する必要はありません。より保険料を抑えやすい他の方法を選べる可能性もあるので、よく確認してみましょう。
健康保険のこととなると専門用語も多くわかりにくくなりがちです。しかし、定年を迎えるまでに情報を集めて、慎重に判断したいところです。
執筆者:馬場愛梨
ばばえりFP事務所 代表