パートやアルバイトでも社会保険に加入しなければならない?社会保険の加入条件とは
配信日: 2019.05.22 更新日: 2021.10.08
働き方にも影響します。社会保険の加入条件について知っておきましょう。
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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目次
そもそも社会保険とは?
社会保険とは、国民の生活を保障することを目的とした公的保険制度です。
医療保険、年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険の5つがあります。民間の保険と違って公的な制度であるため、一定の条件を満たす国民は社会保険に加入する義務があります。
社会保険の加入条件
厚生年金保険と健康保険の加入条件は同じです。パートタイマー・アルバイト等が社会保険に加入しなければならないのかの判断は、同じ事業所で同様の業務に従事する一般社員(常用雇用者)の所定労働時間および所定労働日数を基準に判断することとなります。加入条件は事業所の規模や働き方によって異なります。
【従業員数500人以下の事業所】
従業員数500人以下の事業所の場合、(1)1週の所定労働時間が一般社員(常用雇用者)の4分の3以上、および(2)1月の所定労働日数が一般社員(常用雇用者)の4分の3以上であれば、社会保険に加入しなければなりません。
例えば、一般社員の1週の所定労働時間が40時間で、1月の所定労働日数が20日である場合
(1)1週の所定労働時間30時間(40時間×3/4)以上、および(2)1月の所定労働日数15日(20日×3/4)以上の従業員は、パート、アルバイトの名称にかかわらず、社会保険に加入しなければなりません。
【従業員数501人以上(労使の合意を得た従業員500人以下の事業所を含む)の事業所】
従業員501人以上の事業所(特定適用事業所)の一般社員(常用雇用者)の所定労働時間および所定労働日数が4分の3未満であっても、下記の4条件を全て満たす方は、社会保険に加入しなければなりません。
- ★1.週の所定労働時間が20時間以上あること
- ★2.雇用期間が1年以上見込まれること
- ★3.賃金の月額が8.8万円以上であること
- ★4.学生でないこと
社会保険に加入するメリット
社会保険に加入しないパートやアルバイトは、国民年金や国民健康保険に加入することになります。国民年金や国民健康保険に比べ、社会保険は保障が手厚くなっています。これが加入するメリットです。
社会保険の保険料は事業主が半分負担してくれます。厚生年金は国民年金の基礎年金に上乗せされた比例報酬部分の年金(厚生年金)をもらうことができますので、国民年金だけに比べて将来の年金が増えます。
障害で働けない場合、障害等級1級または2級に該当する方は、国民年金から障害基礎年金が支給されます。障害等級1から3級に該当する方は、厚生年金から障害厚生年金が支給されます。障害等級3級より軽い障害が残った場合には障害手当金が支給されます。
被保険者が死亡したとき、国民年金から死亡当時生計を維持されていた子のある配偶者または子に遺族基礎年金が支給されますが、厚生年金からは、死亡当時に生計を維持されていた配偶者・子、父母、孫、祖父母に遺族厚生年金が支給されます。
健康保険からは、ケガや出産で働けなくなったとき、賃金の3分の2程度の傷病手当金や出産手当金が支給されます。国民健康保険には、働けなくなったときに賃金を補てんする傷病手当金等はありません。
社会保険に加入する場合の留意点
社会保険には、一定の条件を満たすと、自分の意思にかかわらず社会保険に加入しなければなりません。しかし、パートやアルバイトの場合は、働き方を調整することによって社会保険に加入しないことも可能です。
パートで働いている妻が夫の社会保険の被扶養者として国民年金の第3号被保険者になっている場合、年収が130万円未満でも、上記で見た社会保険の加入条件(年収106万円以上など)に該当すれば、自ら社会保険に加入することになり、新たに保険料の負担が生じます。これがいわゆる「106万円の壁」と呼ばれるものです。
パートやアルバイトで働く方は、どのような条件で働くかを慎重に検討する必要があります。
106万円・130万円の壁をクリアするには?
「手取りの金額を減らしたくない…」「夫の扶養から外れたくない…」などの理由から、社会保険への加入を希望しない方もいらっしゃることでしょう。社会保険上の壁である「106万円の壁」「130万円の壁」をクリアするにはどうしたらよいのでしょうか?
106万円の壁をクリアするには?
1ヶ月の収入が8万8000円を超えると、年間で106万円を超える収入になります。年収が106万円を超えると勤務先で社会保険に加入しなければなりません。
しかし、106万円の壁には、上記「パートやアルバイトの社会保険の加入条件とは」でご紹介したとおり、収入以外の条件があります。
したがって、106万円を超えたからといってすぐに社会保険へ加入しなければならないわけではありません。また、社会保険の加入条件における賃金には、賞与や残業代、通勤手当は含まれません。106万円を超えてしまいそうな場合、その他の条件や賃金の内訳を確認してみましょう。
130万円の壁をクリアするには?
1ヶ月の収入が11万円を超えると、年間で130万円を超える収入となります。年収が130万円を超えると配偶者の社会保険の扶養から外れます。
ただし、配偶者の扶養から外れるかどうかの判定は、年間130万円を超える収入があった時点ではなく、年間130万円を超える収入がある見込みの時点で扶養から外れるのが原則のようですので、注意が必要です。
年間130万円を超えて社会保険料などを支払う場合、手取り額は減りますが、マイナス面ばかりではありません。将来受け取る年金が増えたり、病気やケガなどのときには各種手当を受けることができます。
勤務先が社会保険の加入を怠った場合
勤務先が、社会保険の加入対象である従業員の加入手続きを怠った場合、どうなるのでしょうか?
2016年の社会保険制度改正の際に、加入対象者である者の加入手続きを怠った場合の加入指導等対策について設けられました。加入指導に従わない場合は、立ち入り検査が行われ、そこで加入手続きが行われます。立ち入り検査を拒否すると、勤務先に対して罰金等が科せられます。
※2020/8/20 内容を一部修正させていただきました。
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー