更新日: 2019.06.17 その他保険

「死亡リスクから生きるリスクへ」時代と供に変化する保険の保障内容

「死亡リスクから生きるリスクへ」時代と供に変化する保険の保障内容
保険について、必要性は理解しているけど面倒くさい。よく分からない。何かと忙しいし、優先すべきことが多くて後回しにしてしまいがちな保険。
 
実は、医療技術の進歩、高齢化社会、保険会社の努力、経済事情など、保険を取り巻く環境は時代とともに変化し、「保険」事情も変わってきています。
 
大竹麻佐子

執筆者:大竹麻佐子(おおたけまさこ)

CFP🄬認定者・相続診断士

 
ゆめプランニング笑顔相続・FP事務所 代表
証券会社、銀行、保険会社など金融機関での業務を経て現在に至る。家計管理に役立つのでは、との思いからAFP取得(2000年)、日本FP協会東京支部主催地域イベントへの参加をきっかけにFP活動開始(2011年)、日本FP協会 「くらしとお金のFP相談室」相談員(2016年)。
 
「目の前にいるその人が、より豊かに、よりよくなるために、今できること」を考え、サポートし続ける。
 
従業員向け「50代からのライフデザイン」セミナーや個人相談、生活するの観点から学ぶ「お金の基礎知識」講座など開催。
 
2人の男子(高3と小6)の母。品川区在住
ゆめプランニング笑顔相続・FP事務所 代表 https://fp-yumeplan.com/

加入率の変化

生命保険文化センターの平成28年(2016年)度の調査によると、生命保険の加入率は全体で81.0%(男性80.6%、女性81.3%)となり、平成3年(1991年)年の76.5%(男性82.7%、女性71.2%)より増加しています。
 
興味深いのは、女性の加入率の増加です。女性の社会進出の影響でしょうか。万一の場合を考え、妻として、母として、それまでと同様の生活を送るために保険の必要性を感じる方が増えています。
 

加入経路の変化

昭和から平成初期は、親の代からの担当者、職場の昼休みにやってくる営業職員を通しての加入が多数でした。
 
インターネットの普及や外資系保険会社、店頭型保険代理店の進出は、情報収集や保険への取り組み方に変化を与えています。モデルプランといわれる画一的な「提案型」から、個人ごとの家族状況や価値観による多様な生き方を軸とした「コンサルティング型」へとシフトしています。
 
また、パソコンで完結する「ネット型」も選択肢のひとつです。
 

保障内容の変化 「死亡リスク から 生きるリスク へ」

医療技術の進歩、有効薬の開発により、日本は世界でも有数の長寿国となりました。寿命は、男性81.09歳、女性87.26歳(平成29年簡易生命表)に伸びています。昭和22年(1947年)の男性50.06歳、女性53.96歳と比較すると、驚異的ですね。
 
50年前には予想もできなかった「人生100年時代」には、「生きる」ことに対して向き合っていく必要がありそうです。
 
死亡の場合の保障に加えて、がん・脳卒中・急性心筋梗塞等で生活に支障がでた場合の保障も追加されるようになりました。さらに、認知症や介護状態まで考慮した保障も充実してきました。
 

時代が変わっても、変わらない 「公平性の原則」

保険の起源は「たすけあい」です。みんなで少しずつお金を出し合い、困っている人にお金を渡して助ける、応援するというもの。困っている人、つまり、家族を失った人、病気になった人ですね。「保険料」を払うことで、死亡時、もしくは病気になったときに「保険金」を受け取ることができます。
 
ここで重要なのが、公平であること。いつ、何が起こるか予測できない人生だからこそ、もしもに備えたい。でも、健康な人と病気の人が同じ条件で共通のオサイフに保険料を貯めていっても、受け取る可能性を考えると、差が生じてしまいます。年齢や性別、職業によってもリスクは異なります。
 
そこで、このオサイフを管理しているのが保険会社です。これが、告知による診査といわれるもので、入場制限を行っているのです。
 

持病があっても入りたい

健康なときには万一のこと、病気になることは、なかなかイメージできないもの。必要性を理解できても後回しにしてしまうのは、具体的に何が困るのか、どのくらい困るのかが想像できないからではないでしょうか。病気になって「保険の有り難さ、必要性が分かった」とおっしゃる方は多いものです。
 
ただし、上記の「公平性の原則」から、病気になった後では保険加入へのハードルが高くなります。
 
「持病があっても保険に入りたい」という声から、 「引受基準緩和型保険」や「無選択型保険」といった保険商品が販売されるようになりました。
 
健康状態に問題がある場合でも加入できる可能性とパターンをみてみましょう。
 
パターン(1)【通常の保険商品】告知書提出後、保険会社の診査により標準体とよばれる健康状態に問題のない方と同様の条件で引受可能。
パターン(2)【通常の保険商品・特別条件付き契約】商品としては(1)ですが、保険料割増、保険金額削減、契約延期(給付延期)、部位不担保など、条件付きで加入できる。
パターン(3)【引受基準緩和型保険】持病があっても、簡単な告知で問題なければ加入できる。
パターン(4)【無選択型保険】医師による診査や告知なし。
 
(1)→(2)→(3)→(4)と進むにつれ、負担する保険料が高くなります。(3)(4)については専用商品となるため、保障内容にも制限があります。
※ 保険会社により独自の基準やルールがあります。詳細は各保険会社もしくは担当者にお問い合わせください。
 

保険料の変化 ~死亡率低下による保険料改定

保険会社は生命表をはじめ、さまざまな統計データをもとに調査・分析し、公平となるように保険料を算出しています。死亡保障に関して、2018年の春、各社は保険料改定を行い、驚くことに、死亡率の低下の影響を受けて、どの保険会社も保険料の値下げに踏み切ったのです。
 
保険は契約ですので、加入時に申込書に記載された保険料が変わることはありません。あくまでも、新規契約時の保険料が適用されます。
 

保険会社独自の基準

生命保険(万一の場合の保障)、医療保険(病気やケガの場合の保障)といっても、保険会社により商品内容、保障内容はさまざまです。同じ保険会社のなかでも、商品、販売の年によって内容(規定)に相違がみられます。
 
各社、それぞれの特徴や特色があり、独自の基準に沿って運営しています。ポイント制度の導入、貯蓄口座の設定、タバコ喫煙の有無、優良体(健康診断結果の数値による)、運転免許証の色による割引など、さまざまです。無料付帯サービスが充実している場合もあります。
 

「がん」罹患歴あっても、死亡保障の引受基準緩和

保険会社によっては「がん」罹患歴への対応が変わりつつあります。早期発見や早期治療により、「治る病気」という認識の高まりと考えられます。
 
対象となるがんの種類は、患者数の多い5つ(子宮頸がん、甲状腺がん、大腸がん、胃がん、乳がん)に限られ、すべての治療終了後という基準が設けられていますが、これまで諦めていた方、高い保険料を払っていた方にとって朗報といえるでしょう。
 
またこういった動きは、保険業界全体に波及すると予測します。
 

保険の見直しで、保険料負担が下がる可能性も。

一般的に、年齢が上がると保険料は上がります。年齢とともに死亡や病気リスクが高まるためです。
 
ただ、昨年の保険料改定により、タバコを吸わなくなった、メタボも問題なくなった、という方は、もしかしたら保険料が下がるかもしれません。
 
今一度、保障内容が今の自分に合っているか確認するよい機会かもしれません。
 
参照・出典
(公財)生命保険文化センター「平成28年度生活保障に関する調査(速報版)」
厚生労働省「平成29年簡易生命表の概要 1 主な年齢の平均余命」
 
執筆者:大竹麻佐子(おおたけまさこ)
CFP🄬認定者・相続診断士

PR
FF_お金にまつわる悩み・疑問 ライターさん募集