4月に就職した娘が「親の健康保険」で受診したら“7万円”返還請求!? 扶養外しが遅れると「過去の医療費」を返還させられることも…就職しても自動では外れない! 正しい手続きと注意点
「後で手続きすれば大丈夫」と軽く考えていると、思わぬ金額の返還を求められることがあります。本記事では、扶養削除の手続きが遅れた場合のリスクと、正しい対処法について解説します。
2級ファイナンシャルプランナー技能士
目次
就職したら「健康保険の扶養」は自動的には外れない
子どもが就職すると勤務先の健康保険(被用者保険)に加入することになり、それまで親の健康保険の扶養に入っていた場合はその資格を失います。ただし、この手続きは自動的には行われません。
親が加入する健康保険組合や日本年金機構に対して、親自身(または勤務先)が「被扶養者削除届」を提出する必要があります。一般的に、子どもの就職日(健康保険の資格取得日)から5日以内などの期限が設けられていることが多く、手続きを忘れたままにしていると、形式上「親の扶養」と「職場の保険」に二重加入している状態になってしまいます。
手続き漏れで病院を受診!「7割分の医療費」を返還することに!?
特に注意が必要なのは、就職後に新しい保険証が手元に届くまでの間に、つい手元にある「親の保険証」で受診してしまうケースです。健康保険証に有効期限の記載がなくても、就職した時点で親の保険の資格はすでに失われています。
資格のない保険証で受診した場合、健康保険組合が負担した「7割分(または8割分)」の医療費は、後日、不当利得として返還を求められることになります。
例えば、総医療費が10万円だった場合、窓口での自己負担(3割)は3万円ですが、残りの7万円は本来、新しい職場の保険が負担すべきものです。親の保険証を使ってしまった場合、後日「本来支払うべきではなかった7万円を返してください」という通知が届くことになります。
返還請求の具体的なシチュエーション
実際にどのくらいの請求が届く可能性があるのか、具体的なケースで確認してみましょう。
就職直後に体調を崩し、検査や点滴を受けたケースを例にとります。初診料・血液検査・点滴・処方薬などで総医療費が3万円の場合、保険組合の負担分(7割)は2万1000円となり、後からこの金額の返還請求が届きます。
さらに、大きなけがで手術や入院が必要になり、総医療費が100万円に達した場合、返還額は70万円にのぼります。後から新しい健康保険に「療養費」として請求すれば、7割分は戻ってきますが、手続きには時間がかかります。
一時的とはいえ数十万円単位の現金を用意しなければならない負担は、家計にとって決して軽くありません。
また、健康保険の給付を受ける権利には、「2年」という時効があります。返還請求が受診から1年以上たってから届くケースも珍しくなく、手続きを放置して2年が過ぎてしまうと、新しい保険組合から7割分を取り戻せなくなる可能性があります。
結果として、「7割分の医療費を丸々損してしまう」という事態になりかねないため、早めの対応が欠かせません。
正しい「扶養外し」の手続きと注意点
こうしたトラブルを防ぐには、何よりも早めの手続きが大切です。
・子どもが就職したらすぐに親の勤務先へ連絡する
・新しい健康保険証のコピーなど、必要書類を提出する
・親の保険証を確実に回収し、保険組合へ返却する
子どもが離れて暮らしている場合は、古い保険証をすぐに送り返すよう伝えておきましょう。新しい保険証が届くまでに受診が必要になった場合は、病院の窓口で「保険証の切り替え中である」ことを伝え、一度10割分を支払っておくのが最も安全な方法です。
まとめ
子どもの就職という喜ばしい出来事の陰で、事務的な手続きはつい後回しになりがちです。しかし、健康保険の扶養削除を怠ると、数万円から場合によっては数十万円もの医療費を一時的に返還しなければならないリスクが生じます。
「知らなかった」では済まされない事態を避けるためにも、新生活が始まった忙しい時期こそ、家族で保険証の取り扱いについて確認し合っておくことをおすすめします。
出典
全国健康保険協会 事業主・加入者のみなさまへ「令和7年度被扶養者資格再確認について」
日本年金機構 従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き
執筆者 : 高橋祐太
2級ファイナンシャルプランナー技能士