70歳で退職する予定です。「失業手当」は65歳までのイメージなのですが、この年齢でも受給できる給付はありますか?
今回は、基本手当と高年齢求職者給付金について詳しく解説します。
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士
元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
https://www.wing-fp.com/
雇用保険の求職者給付
雇用保険では、離職した被保険者が安定した生活を送りつつ、1日も早く再就職できるよう、一般被保険者を対象とした基本手当と65歳以上の高年齢被保険者を対象とした高年齢求職者給付金などの求職者給付があります。
基本手当とは
1.給付対象者
原則として離職の日以前2年間に12ヶ月以上(倒産や解雇などによる離職の場合は離職の日以前1年間に6ヶ月以上)の雇用保険の被保険者期間がある65歳未満の方で、以下の要件を満たす場合に基本手当が支給されます(※1)。
(1)就職したいという積極的な意思と、いつでも就職できる能力(健康状態・家庭環境など)があること
(2)積極的に求職活動を行っているにもかかわらず、就職できない状態にあること
なお、自営業を開始した方や家業に専念する方などは、就職する意思がないものとして対象者にはなりません。
2.給付手続き
基本手当を受給するためには、住所地を管轄するハローワークに離職票、マイナンバーカードなどを提出して、求職の申込みを行う必要があります(※1)。
3.給付日額
失業手当の給付日額(基本手当日額)は、原則として、離職以前6ヶ月の賃金の合計を180で割った賃金日額と給付率を基に、下式により求められた額になります(※1)。
賃金日額=離職以前6ヶ月の賃金の合計÷180
給付率=50~80%(60~64歳は45~80%)
基本手当日額=賃金日額×給付率
したがって、基本手当日額は、賃金日額のおよそ5~8割で、賃金の低い方ほど高い給付率となっています。また、基本手当日額には、上限額・下限額が定められています。
4.給付日数
給付日数は、離職理由によって2つの基準があります(※1)。
(1)定年、契約期間満了や自己都合による離職
| 離職時の年齢\被保険者であった期間 | 10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
|---|---|---|---|
| 65歳未満 | 90日 | 120日 | 150日 |
(※1を基に筆者作成)
(2)特定受給資格者および一部の特定理由離職者
| 離職時の年齢\被保険者であった期間 | 1年未満 | 1年以上 5年未満 |
5年以上 10年未満 |
10年以上 20年未満 |
20年以上 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | ― | |
| 30歳以上 | 35歳未満 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 | |
| 35歳以上 | 45歳未満 | 150日 | 240日 | 270日 | ||
| 45歳以上 | 60歳未満 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 | |
| 60歳以上 | 65歳未満 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 | |
(※1を基に筆者作成)
5.支給開始時期と給付期間
基本手当は、離職票を提出して求職の申込みをしてから、7日間の失業している日(待期期間)が経過した後に支給が開始され、離職の日の翌日から1年間経過するまでの間に、支給日数分が支給されます(※1)。
なお、自己都合や懲戒解雇で離職した人の7日間の待期期間後に、1ヶ月(注)の給付制限があります。
注:離職日が令和7年4月1日以降である場合は原則1ヶ月、同年3月31日以前である場合は原則2ヶ月となります。ただし、離職日からさかのぼって5年間のうちに2回以上正当な理由なく自己都合離職し受給資格決定を受けた場合または懲戒解雇された場合の給付制限期間は離職日にかかわらず3ヶ月となります。
高年齢求職者給付金とは
1.給付対象者
65歳以上の方で、次の要件を満たす場合に給付対象者となります(※2)。
(1)離職の日以前1年間に、被保険者期間が6ヶ月以上あること
(2)就職したいという積極的な意思と、いつでも就職できる能力があり積極的に求職活動を行っているにもかかわらず、就職できない失業の状態にあること
なお、自営業を開始した方や家業に専念する方などは、就職する意思がないものとして対象者にはなりません。
2.給付手続き
高年齢求職者給付金を受給するためには、住所地を管轄するハローワークに離職票、マイナンバーカードなどを提出して、求職の申込みを行います(※2)。
3.給付日額と日数
高年齢求職者給付金は、被保険者であった期間に応じて、次表に掲げる日数分の基本手当に相当する額が給付されます(※2)。
| 被保険者であった期間 | 1年未満 | 1年以上 |
|---|---|---|
| 高年齢求職者給付金 | 30日分 | 50日分 |
(※2を基に筆者作成)
4.支給時期
高年齢求職者給付金は、離職票を提出して求職の申込みをした後、7日間の待期期間を経て支給されます。受給期限は離職の日の翌日から1年を経過する日までです(※2)。
なお、自己都合や懲戒解雇で離職した人の7日間の待期期間後に、1ヶ月(注)の給付制限があります。
まとめ
70歳で退職しても、要件を満たせば、失業手当に相当する高年齢求職者給付金が支給されます。
なお、65歳前後で退職する場合、65歳未満であれば基本手当が、65歳以上であれば高年齢求職者給付金が支給されます。勤務年数が20年以上で会社都合により退職した場合、基本手当であれば240日分(自己都合でも150日分)、高年齢求職者給付金であれば50日分となりますので、注意が必要です。
出典
(※1)厚生労働省 離職されたみなさまへ
(※2)厚生労働省 離職されたみなさまへ <高年齢求職者給付金のご案内>
執筆者 : 辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士