4月に入社した娘が「思ったより手取りが少ない…」とため息。住民税は引かれないはずなのに一体なぜ!?
しかも、その金額は、想像以上に大きいのが実情です。これが、「思ったより少ない初任給」の正体です。
ファイナンシャルプランナー、CFP(R)認定者、1級ファイナンシャルプランニング技能士、DC(確定拠出年金)プランナー
社会保険料は、入社月からフルでかかる
会社員になると、加入が義務付けられるのが次の制度です。
・健康保険
・厚生年金保険
・雇用保険
これらは、入社と同時に加入するため、最初の給与から天引きされます。なお、社会保険料は会社によって「当月徴収」と「翌月徴収」があり、初任給から引かれる場合と、翌月給与から引かれる場合があります。
特に大きいのが、厚生年金と健康保険です。この2つだけで、給与の約15%前後(本人負担分)が差し引かれるのが一般的です。
なお、厚生年金保険料と健康保険料は、原則として会社と本人が半分ずつ負担しています。雇用保険料は、本人と会社の双方が負担しますが、負担割合は同じではありません。例えば、額面20万円の新入社員で手取りはどうなるでしょうか?
・健康保険:約1万円(約5%)
・厚生年金:約1万8000円(約9%)
・雇用保険:約1000円(約0.5%)
社会保険料の負担は合計3万円前後で、手取りは17万円前後になります。このほか住民税は前年の所得に対して課税されるため、通常は2年目から負担が始まりますが、会社によっては社宅費や社員食堂の利用代なども加わることがあります。
新人のうちは、所得税はそれほど高くはありません。そのため、手取りが減る主な原因は「税金」ではなく、「社会保険料」です。「税金より社会保険料のほうが重い」現実があります。特に、厚生年金は、将来の年金原資になるとはいえ、毎月の負担としては、かなり重く感じる部分です。
なぜ、こんなに引かれるのか?
理由として、社会保険は下記のような「将来」と「万一のとき」に備えるための仕組みだからです。
・病気やけがをしたときの医療費(健康保険)
・失業時の保険(雇用保険)
・老後の年金(厚生年金)
つまり、手取りは減りますが、見えない形で「将来の生活の安心」を先に買っているともいえます。
「2年目の手取り減少」に驚く若手社員
入社1年目を何とか乗り切り、少し仕事に慣れてきたころ、多くの若手社員が、再び驚く瞬間があります。それが、「あれ? 昨年より手取りが減っている」という現実です。昇給したはずなのに、なぜか自由に使えるお金が増えていないと感じる人も少なくありません。
その大きな原因が、「住民税のスタート」です。住民税は、所得税と仕組みが異なります。所得税は毎月の給与に応じてその場で計算されますが、住民税は「前年所得」を基準に計算されます。つまり、新社会人の場合は以下のようになります。
・1年目は、前年は学生で所得が少ないため、住民税はほぼかからない
・2年目は、1年間働いた給与実績ができるため、住民税が本格的に発生する
例えば、若手社員の年収が1年目と同じ年収240万円の場合、住民税は年間約8万6000円前後です。これを毎月の給与から天引きすると、毎月約7200円前後、手取りが減ることになります。若手社員が「昨年のほうが生活はラクだった」と感じるのは、この影響が非常に大きいでしょう。
さらにややこしいのは、昇給と住民税が重なることです。例えば、「月給が1万円上がった。しかし住民税の納付が始まった」とすると、「額面は増えたのに、手取りはほとんど増えない」という現象が起こります。これが、会社員生活で最初に経験する「手取りの壁」ともいえるでしょう。
残業代が増えても「そのまま手取り」にはならない
若手社員のなかには、「残業を頑張れば収入がかなり増える」と考える人もいます。もちろん残業代によって給与は増えます。しかし、実際は、増えた分が「そのまま自由に使えるお金」になるわけではありません。
会社員の給与は、所得税や社会保険料、住民税などが差し引かれます。つまり給与が増えれば、差し引かれる金額も増えるという仕組みです。例えば、残業代で3万円増えても、所得税や社会保険料なども増えるため、実際の手取り増加は「2万円台前半程度」となります。
まとめ
「社会保険料は入社直後から引かれること」「手取りの少ない主因は“税金”より“社会保険料”であること」「ただし将来の安心のためのコストであること」「住民税は通常2年目から本格的に始まること」「昇給しても手取りは思ったほど増えないこと」「残業代もそのまま全部は受け取れないこと」などを、親として、新社会人の子どもに伝えることは、とても大切です。
「会社員は“額面”ではなく、“手取り”で生活を考えるのが基本だよ」。この感覚を若いうちに身につけることが、将来のお金の管理力につながっていくでしょう。
出典
日本年金機構 年金の制度・手続き
総務省 地方税制度 個人住民税
執筆者 : 水上克朗
ファイナンシャルプランナー、CFP(R)認定者、1級ファイナンシャルプランニング技能士、DC(確定拠出年金)プランナー
