転職して「昇給」したのに、初任給の“社会保険料”が引かれすぎて手取り減…! 会社の計算ミス!? どうしてこんなに“税金”が引かれなきゃいけないの!?
CFP(日本FP協会認定会員)
1級FP技能士(資産設計提案業務)
住宅ローンアドバイザー、住宅建築コーディネーター
未来が見えるね研究所 代表
座右の銘:虚静恬淡
好きなもの:旅行、建築、カフェ、散歩、今ここ
人生100年時代、これまでの「学校で出て社会人になり家庭や家を持って定年そして老後」という単線的な考え方がなくなっていき、これからは多様な選択肢がある中で自分のやりたい人生を生涯通じてどう実現させていくかがますます大事になってきます。
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そもそも社会保険料とは?
給与明細の社会保険料は、仕組みを理解すると見え方が変わります。まずは、社会保険料がどのように決まるのかを押さえておきましょう。
社会保険料には健康保険・厚生年金などが含まれる
給与明細に記載される社会保険料には、主に以下が含まれます。
・健康保険料
・厚生年金保険料
・介護保険料(40歳以上)
・雇用保険料
会社員の場合、健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料は会社と従業員が原則折半で負担しますが、雇用保険料については会社負担がやや高くなっています。このうち、特に負担額が大きいのは健康保険料と厚生年金保険料です。
また、2026年4月からは健康保険料に上乗せして徴収される「子ども・子育て支援納付金制度」も始まっています。そのため、会社によっては2026年4月からの健康保険料に子ども・子育て支援金の分が上乗せされている場合があります。
なお、社会保険には「労災保険」も含まれますが、こちらの保険料は会社が全額負担しているため、会社員本人の負担はなく、そのため給与明細にも記載がありません。
社会保険料は「基本給だけ」では決まらない
「基本給は前職と同じなのに、なぜ社会保険料が違うの?」という疑問の大きな理由がここにあります。社会保険料の計算基準になるのは、基本給だけではありません。健康保険や厚生年金では、基本給に加えて以下のような手当なども含めて判断されます。
通勤手当、残業手当、役職手当、皆勤手当、家族手当、住宅手当など
(賞与は原則として標準賞与額として別途保険料を算出)
つまり、基本給が同じでも、各種手当の構成が前職と異なれば、社会保険料も変わる可能性があるのです。
転職後に社会保険料が高く感じやすい理由
転職直後の給与明細では、以前より社会保険料が増えたように見えることがあります。その背景には、制度上の仕組みが関係しています。
標準報酬月額という仕組みで決まる
健康保険料と厚生年金保険料は、実際の給与額そのものではなく、「標準報酬月額」という区分によって計算されます。標準報酬月額とは、給与を一定の幅で区切った等級制度です。
例えば、給与が数千円変わっただけでも、等級が1段階上がることがあります。すると、保険料も上昇します。そのため、前職と比べて基本給がほぼ同じでも、手当込みの金額が等級の境目を超えると、社会保険料に差が出ることがあります。
入社時は「見込み給与」で保険料が決まることがある
通常、社会保険料は年に1回見直されます。これを「定時決定」と呼び、毎年4月、5月、6月の3ヶ月間に支払われた給与の平均額をベースに、その年の9月から翌年8月までの社会保険料が決定します。
しかし、転職してすぐの時期は、まだ4~6月の給与実績がありません。そのため、転職初月の社会保険料は、入社時に会社と交わした雇用契約書に記載されている「見込み給与」をベースに、入社時の標準報酬月額を算出して決定します。これを「資格取得時の決定」といいます。
例えば、基本給に加え、固定残業代や各種手当を含めた給与設計になっている場合、その想定額をもとに保険料等級が決まるケースがあります。そのため、実際の初月の勤務日数が少なかったり、支給額が想定より少なかったりしても、「思ったより社会保険料が高い」と感じることがあります。
勤務先の健康保険組合によって保険料率が異なる場合も
転職で会社が変わると、加入する健康保険制度が変わることがあります。勤務先によっては、全国共通の協会けんぽではなく、独自の健康保険組合に加入している場合があります。
健康保険料率は加入先によって異なるため、同程度の給与でも保険料負担に差が生じることがあります。つまり、「前職と給与は同じなのに、社会保険料だけ高くなった」という現象は、制度上、十分起こり得るのです。
通勤手当の支給方法や金額が変わった
見落としがちなのが、「通勤手当(交通費)」の影響です。社会保険料の計算において、通勤手当は全額が報酬としてカウントされます。
例えば、前職では自宅の近くで働いていて通勤手当が月5000円程度だった人が、転職して遠方に通勤することになり、通勤手当が月3万円になったとします。基本給が同じでも、社会保険料の計算元となる金額が2万5000円もアップするため、標準報酬月額の等級が上がり、社会保険料が高くなってしまいます。
また、半年分の定期代をまとめて支給する会社の場合も、1ヶ月あたりの通勤手当として標準報酬月額の算定に含まれるため、前職より通勤手当が増えれば保険料に影響することがあります。
給与明細を見るときに確認したいポイント
社会保険料が高いと感じたときは、単純に「引かれ過ぎでは?」と思う前に、給与明細の内訳を確認してみることが大切です。
基本給以外の手当を確認する
まず確認したいのは、給与構成です。前職と比較して、以下のようなポイントを確認してみましょう。社会保険料は総合的な報酬で決まるため、基本給だけを比較しても実態は見えません。
・住宅手当や家族手当などが増えていないか
・固定残業代が含まれていないか
・通勤手当の扱いが変わっていないか
標準報酬月額の改定タイミングを知っておく
社会保険料は毎月自由に変わるわけではなく、一定のタイミングで見直されます。そのため、転職直後に「高い」と感じても、後日の改定で変わる可能性があります。制度の仕組みを理解しておくと、給与明細を見たときの疑問や不安が減るでしょう。
まとめ
転職後の給与明細で社会保険料が思ったより高く感じるのは、決して珍しいことではありません。社会保険料は、基本給だけではなく、手当を含む給与全体や標準報酬月額、加入する健康保険制度など、複数の要素によって決まります。
そのため、前職と基本給が同じでも、社会保険料に差が出ることは十分あり得ます。給与明細を見る際は、基本給だけに注目するのではなく、手当の内容や社会保険料の計算の仕組みにも目を向けることが大切です。
出典
協会けんぽ 令和8年度保険料額表
日本年金機構 厚生年金保険の保険料
厚生労働省 雇用保険料率について
こども家庭庁 子ども・子育て支援金制度について
日本年金機構 資格取得時の決定
執筆者 : 小山英斗
CFP(日本FP協会認定会員)
