外貨建て保険を契約する前に知っておくべき「為替相場の長期的な推移」って?
配信日: 2019.07.17 更新日: 2020.04.07
そこで、今回は外貨建て保険を契約する前に知っておくべき為替相場の長期的な推移について解説します。
執筆者:横山琢哉(よこやま たくや)
ファイナンシャルプランナー(日本FP協会 AFP認定者)
フリーランスライター
保険を得意ジャンルとするFP・フリーライター。
代理店時代、医療保険不要論に悩まされた結果、1本も保険を売らずに1年で辞めた経験を持つ。
FPとして、中立公正な立場から保険選びをサポートしています。
外貨建て保険に関する苦情で多いのは「元本割れの可能性の説明が不十分」
生命保険協会が国内生保41社からとりまとめたデータによると、2018年度における外貨建て保険に関する苦情受付件数の総数は2543件で、過去最高となっています。2014年度の苦情受付件数は922件であるため、わずか4年で3倍くらいに増えたことになります。
新聞各社の報道によると、苦情で最も多いのが「(為替リスクによる)元本割れの可能性についての十分な説明を受けなかった」というものです。代理店からすれば為替リスクというのは当たり前すぎて、くどくど説明するまでもないという意識があったのかもしれません。
しかし、外貨建て保険は契約期間が長期にわたることが多いこと、保険料を一時払いする商品の場合は契約金額が大きいことなどをふまえると、しっかりした説明が求められるのは当然です。
為替リスクについて適切な説明をするなら、過去における相場の長期的な推移についての解説は避けられないでしょう。そこで、次に米ドル(以下、「ドル」と表記します)円の過去40年間における相場の推移を説明します。
為替相場は5年程度でも大きく動く
日本銀行のウェブサイトには、「時系列統計データ 検索サイト」というものがあります。このウェブサイトでは、1973年以降のドル円相場の推移をグラフで見ることができます。
また、このウェブサイトからはデータをダウンロードすることもできます。そこで、ダウンロードしたデータを基に、あらためてグラフを作ってみました。
以下に示したグラフは、1980年1月から2019年5月までの約40年間におけるドル円相場の推移です(データの条件は「東京市場、スポット、17時時点/月中平均」)。
この40年間で最も円高になったのは2011年10月の76.72円、最も円安になったのは1982年10月の271.33円です。1985年10月のプラザ合意によって大きく円高にシフトし、その後はおおよそ1ドル=80~140円の間で推移するようになりました。
相場の推移をもう少し分かりやすくするため、プラザ合意後の約30年間でグラフを作ると以下のとおりです(縦軸の最小値が60円になっている点にご注意ください)。
これを見ると、わずか3~5年程度の期間でも30~50%程度の大きな相場の変動が起きたことが何度もある、ということが分かるのではないでしょうか。
例えば1995年7月~1998年4月、2007年6月~2012年1月、2012年12月~2015年9月の期間はかなり大きく相場が変動しています。そのため20年、30年先となれば、為替相場がどうなるかは全く分からないと考えておくべきです。
外貨建て保険の契約前に、為替相場の長期的な推移を確認しよう
外貨建て養老保険なら10年程度で契約することもありますが、外貨建て終身保険や外貨建て個人年金保険の場合は30年を超えるような長期の契約になることも珍しくありません。
そのため、円建て保険より高い利回りが期待できることに魅力を感じて外貨建て保険を契約しても、高い予定利率で得られた外貨ベースのメリットを為替相場の影響が帳消しにしてしまうかもしれないということです。
受け取った保険金や年金は外貨のまま使うこともできますし、相場が回復するまで外貨のまま保有することもできますが、どうしても円に交換しないといけない場合は元本割れを承知で行うことが必要になります。
なお、為替相場の長期的な推移については、商品のパンフレットやホームページに相場のグラフが掲載されていることが多いです。
為替相場の推移は商品を理解するうえで最も大事と言ってもいいくらいなので、契約するときはパンフレットやホームページを流し読みせず、あらためて相場のグラフをよく眺めてください。
出典
一般社団法人生命保険協会(外貨建て保険・年金に係る苦情受付件数について)
日本銀行 時系列統計データ 検索サイト
執筆者:横山琢哉
ファイナンシャルプランナー(日本FP協会 AFP認定者)
フリーランスライター