学資保険は古い?子供が生まれたら入るべき保険とは
配信日: 2019.07.18
執筆者:国枝ゆたか(くにえだ ゆたか)
保険や投資信託等の金融商品を売らないファイナンシャルプランナー
住宅など大きな買い物の際のセカンドオピニオンとしても選ばれている。
講師としては、ライフプランやお金の知識が学べるセミナーだけでなく、人生を充実させ収入も増やすことにつながるお得なスキルを楽しく身につけるスキルアップ研修も手掛けており、行政や企業、各種団体など幅広く登壇している。
最初にやるべきは「必要保障額」の把握
世帯主が亡くなった後、家族が生活をし続けるのに必要なお金を「必要保障額」と言います。
主に「世帯主が亡くなった後の住居費、生活費」と「子どもがやりたいことや、行きたい学校を卒業するまでにかかる教育費の総額」を計算することで把握できます。(毎月の収支が現時点で既にマイナスの場合は、早急に資産形成策を講じる必要があり、収入を増やす手だてや、支出を抑える工夫を今から始めてください)
今回は、旦那さまが世帯主でお子さまがいらっしゃるご夫婦のケースを想定します。旦那さまが亡くなった場合の必要保障額は、<遺族の支出-遺族の収入>で求められます。それぞれに該当するものとして、下記のようなものがあげられるでしょう。
■遺族の支出
・お子さまが独り立ちするまでの住居費、生活費(食費、医療費等日常生活にかかる費用)
・独り立ち後、奥さまが亡くなるまでの生活費
・お子さまの教育費
■遺族の収入
・旦那さまの遺族年金(基礎年金・厚生年金・企業年金・個人年金等)
・旦那さまの死亡退職金
・奥さまの収入(育児休業中なら育児休業給付金も)
・児童手当
・奥さまの老齢年金(基礎年金・厚生年金)
旦那さまが亡くなった時点で、この必要保障額と同額をもらえる保険に入っていればお金の不足を防げて安心です。必要保障額は、日がたてばたつほど減っていくという特徴があります。特に、お子さまの教育費を全て支払い終えた後は、必要保障額も大幅に少なくなります。
額の減少に合わせて、受け取る保険金が徐々に少なくなる「逓減定期保険」や、一定期間、死亡保険金を年金形式で受け取れる「収入保障保険」を組み合わせると保険料も抑えられます。
さらに、亡くなること以外に心配なのが、病気やケガで仕事が続けられなくなったり、入院や手術が必要になったりした場合の支出増です。
困った時に助かる傷病手当金や高額療養費制度といった手当や制度を利用できます。それを考慮した上で不足額がいくらになるのか把握して保障を考えましょう。
医療保険やガン保険については、どういう状態になったら保険金が支払われるのか、要件をしっかりと確認のうえ、加入することが必要です。
住居費―頼りになる「団体信用生命保険」
家計の大きな割合を占める住居費についても考えておきましょう。住宅を購入するメリットとしては、まず、住宅ローンを利用したとしてもローン完済後に老後の住居費の負担を抑えられることが挙げられます。
同様に、先ほどの必要保障額を減らし、保険料を抑えたい、という方にも住宅の購入はオススメです。というのも、住宅を購入すると団体信用生命保険というお得な保険に加入することができるからです。
これは、契約者が亡くなったり、高度障害等所定の状態に該当したりする場合、住宅ローンの残債が保険金で完済される保険です。保険料は金融機関が払ってくれるケースがほとんどのため、住宅ローンと同額の死亡保障の付いた保険に入れることになります。
これにより必要保障額をかなり減らすことができます。最近は、団体信用生命保険にさまざまな保険を上乗せすることができる金融機関が多くなっているようです。
ただし、選択するものによっては、保険料相当分が住宅ローンの金利に上乗せされることがありますので、自己負担を抑えたい方は注意が必要です。
教育費―子どもが生まれたら「学資保険」はもう古い!?
日本FP協会「くらしとお金のワークブック」(2018年9月改訂)によると、子どもの教育費の目安は小学校入学から大学卒業までで716万円(全て公立の場合)〜2078万円(全て私立の場合)かかり、そのうち大学では244万円〜451万円かかっています(医学部、歯学部、薬学部等の場合はさらに高額になります)。
この多額の教育費については、高校卒業までのお金は日々の生活から捻出し続け、大学の費用は18年間でお金を積み立てながら増やせる「学資保険」を使って備える、というやり方が、一昔前は当たり前のように実施されていました。
ただ、子どもが小さいうちに世帯主が亡くなってしまうと、それまでに積み立てた額と運用益だけが受け取り可能な保険金となってしまう場合があり、欲しい額(大学で必要な総額)には達しなかったり、子どもが18歳を迎える年にならないと受け取れなかったりすることもあるため、現在では死亡保障付きの「終身保険」を教育資金の準備に活用する方が増えています。
また、現在の日本は低金利のため、日本円だけで運用する「円建て」のものより、海外の通貨(外貨)で運用した方がより増やせる、という流れから、外貨建ての終身保険に加入される方が増えていますが、損をする可能性もあります。為替リスクを十分に理解している方向けの保険ですのでご注意ください。
子どもが生まれてしばらくは生活が安定せず、あっという間に年月がたってしまいます。早めにご家族で相談し、予想されるリスクには早めに備えておきたいものです。
大前提になりますが、貯金が増えれば入るべき保険を減らせます。資産形成をしっかりと行いつつ、ご家庭の状況に合わせ、適正な保障を見極めたうえで、必要な保険だけに加入するのがよいでしょう。
【出典】
■「くらしとお金のワークブック~FPと考える生活設計~」
執筆者:国枝ゆたか
保険や投資信託等の金融商品を売らないファイナンシャルプランナー