「保険証があれば医療保険はいらない」と聞きました。医療保険を解約して、その分を貯蓄に回すほうが賢明というのは本当ですか?
そこで本記事では、「保険証があれば医療保険はいらないのか?」「医療保険を解約して、その分を貯蓄に回すほうが賢明なのか?」について解説します。
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 上級心理カウンセラー
私がFP相談を行うとき、一番優先していることは「あなたが前向きになれるかどうか」です。セミナーを行うときに、大事にしていることは「楽しいかどうか」です。
ファイナンシャル・プランニングは、数字遊びであってはなりません。そこに「幸せ」や「前向きな気持ち」があって初めて価値があるものです。私は、そういった気持ちを何よりも大切に思っています。
保険証があれば医療保険はいらないのか?
「保険証があれば医療保険はいらない」は「公的医療保険に加入していれば私的医療保険に加入しなくてもいい」と解釈することができます。
公的医療保険とは、日本に住所を有する全ての人に加入が義務付けられている医療保険のことをいい、健康保険・国民健康保険などがこれに該当します。
私的医療保険とは、民間の保険会社が提供している医療保険のことをいい、加入する・しないは個人の自由です。
公的医療保険が強制加入、私的医療保険が任意加入であることに加え、保険の目的が「経済的リスクに備える」ことを踏まえると、公的医療保険と私的医療保険は「公的医療保険でカバーできない経済的リスクを私的医療保険でカバーする」関係といえます。
公的医療保険に加入していると、被保険者などの病気・けがに関して「療養の給付」が行われます。療養の給付とは、一部負担金を支払うことで「診察」「薬剤・治療材料の支給」「処置・手術・その他の治療」を受けられるというものです。一部負担金は、医療費に一部負担割合(自己負担割合)を乗じて算出します。
また、公的医療保険には「高額療養費」制度があり、一部負担金が著しく高額であるときに「高額療養費」が支給されます。この制度により、1ヶ月当たりの医療費(一部負担金)は一定の金額(自己負担限度額)に抑えられます。
私的医療保険に加入すべきかどうかは、最終的には公的医療保険と貯蓄残高を加味して検討します。つまり、「貯蓄・公的医療保険で経済的リスクをカバーできないなら私的医療保険は必要」といえます。
医療保険を解約して、その分を貯蓄に回すほうが賢明なのか?
保険に加入することと貯蓄をすることには、明確な違いがあります。保険は、加入直後であっても保険金給付の要件に当てはまれば、一定額の保険金を受け取れます。一方、貯蓄は一定額を貯めるのに時間がかかります。
このことから、先述の「貯蓄・公的医療保険で経済的リスクをカバーできないなら私的医療保険は必要」は「貯蓄が貯まるまでは、私的医療保険は必要」ともいえます。
私的医療保険が不要ならば、解約して貯蓄に回すほうが賢明です。その理由は、保険料の構成にあります。私的医療保険の保険料は「純保険料」と「付加保険料」で構成されています。簡単にいえば、純保険料は保険金に、付加保険料は経費に使われます。
貯蓄した場合、その金額の100%が自分のものとして積み立てられるのに対し、保険料を支払った場合、その金額の一部が経費として消費されます。
自分への還元率で考えると、私的医療保険に加入しているより貯蓄をするほうが賢明といえます。筆者としては、保険は最低限かけておけばいいのではないかと思います。
とはいえ、今加入している医療保険を解約して貯蓄に回すかどうかは、最終的には家計状況だけでなく精神的なもの(加入していることによる安心感など)も大きく影響するため、そのあたりのバランスもうまく取る必要があります。
まとめ
本記事では、「保険証があれば医療保険はいらないのか?」「医療保険を解約して、その分を貯蓄に回すほうが賢明なのか?」について解説しました。まとめると、以下のとおりです。
・貯蓄・公的医療保険で経済的リスクをカバーできないなら私的医療保険は必要
・私的医療保険が不要ならば、解約して貯蓄に回すほうが賢明
医療保険には公的医療保険と私的医療保険があり、私的医療保険で公的医療保険を補完するのが基本的な考え方です。したがって、「公的医療保険に加入していれば私的医療保険に加入する必要がない」とは、一概にはいえません。
また、医療保険と貯蓄では役割が異なるため、即座に「医療保険を解約して、その分を貯蓄に回すほうが賢明」ということはできません。それぞれの目的にかなったお金の使い方をすることが、何より賢明といえるのではないでしょうか。
出典
デジタル庁 e-Gov法令検索 国民健康保険法
デジタル庁 e-Gov法令検索 健康保険法
全国健康保険協会 協会けんぽ 療養の給付
全国健康保険協会 協会けんぽ 高額療養費
厚生労働省 医療費の一部負担(自己負担)割合について
執筆者 : 中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 上級心理カウンセラー
