75歳以降の保険について考える。保障の目的と考えるべき保険とは
配信日: 2019.08.04
「独身期(シングル期)」・「新婚期」・「子育て期」・「退職準備期」・「アクティブシニア期」と続けてきましたが、今回は、最後のライフステージである「終活期」の保障設計の目的について見ていきたいと思います。
執筆者:重定賢治(しげさだ けんじ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
明治大学法学部法律学科を卒業後、金融機関にて資産運用業務に従事。
ファイナンシャル・プランナー(FP)の上級資格である「CFP®資格」を取得後、2007年に開業。
子育て世帯や退職準備世帯を中心に「暮らしとお金」の相談業務を行う。
また、全国商工会連合会の「エキスパートバンク」にCFP®資格保持者として登録。
法人向け福利厚生制度「ワーク・ライフ・バランス相談室」を提案し、企業にお勤めの役員・従業員が抱えている「暮らしとお金」についてのお悩み相談も行う。
2017年、独立行政法人日本学生支援機構の「スカラシップ・アドバイザー」に認定され、高等学校やPTA向けに奨学金のセミナー・相談会を通じ、国の事業として教育の格差など社会問題の解決にも取り組む。
https://fpofficekaientai.wixsite.com/fp-office-kaientai
「終活期」に考えるべき保険とは?
終活期は、後期高齢者になる75歳から寿命に至るまでの期間をいいます。2016年時点での日本人の健康寿命は、男性72.14歳、女性74.79歳(※)となっています。健康寿命とは、介護を必要とせず、寝たきりなどにもならず、日常生活を過ごせる年齢のこと。
そのため介護が必要になる可能性の高い終活期は、保険の加入や見直しが極端に難しくなる恐れがあります。終活期における保障の目的は、基本的に、アクティブシニア期と同じことがいえます。
〔終活期における保障の目的〕
(1)病気やケガに備えるため
(2)万一のことが起こった場合の死後の整理
(1)では「医療保険」、(2)では「死亡保険」というのが一般的ですが、保険会社によっては新たに加入したり、見直しを行う場合はそもそも契約を認めていなかったり、保障内容に制限を設けていたり、また、加入できても保険料がかなり割高になる可能性があったりと、十分な注意が必要です。
特に、このライフステージでは、保険を契約するにあたり、ご家族の同意が必要になる場合があります。契約の際は、お子さんなどとしっかり相談したうえ、検討することが求められます。
また、健康保険制度としては、後期高齢者医療保険制度の被保険者になるため、治療費などでかかった費用の1割が自己負担額になります。そのため、あえて医療保険に加入する必要性があるかどうかということも考える必要があるでしょう。
死後の整理を目的とした死亡保険については、仮に新たな加入や見直しが認められる場合、保険料がかなり割高になってきます。そのため家計とのバランスもしっかりと考慮することが大切です。
保障があれば安心ですが、一方で、保険料が家計を圧迫するようでは、逆に何のために保険に入っているかがわからなくなります。
終活期では、病気やケガに備える場合も、万一の時に備える場合も、共通するのは無理をしないことです。ご家族と相談のうえ、しっかりと検討するようにしましょう。
「終活期」に考えるべき、その他の保険とは?
これ以外の目的もアクティブシニア期と似ていますが、終活期においては、介護保険や認知症保険への加入はできないため、むしろ、死後の整理の延長線上で、空き家対策や子どもへの財産の移転(相続・贈与)を目的に、保険の加入・見直しを図ることが有効と考えられます。
このような点においても、そもそも契約が認められるかどうかなどを確認し、また、ご家族とご相談のうえ、しっかりと検討していくようにしましょう。
今回でライフステージごとの保障設計の目的については終わりにします。次回からは、民間の生命保険を検討する前の段階として、「公的保障」について基本的なお話をしていきます。
出典
※厚生労働省第11回健康日本21(第二次)推進専門委員会資料「健康寿命の延伸・健康格差の縮小」
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)