保険に入るときは、公的保障をベースに考えよう
配信日: 2019.08.05
執筆者:重定賢治(しげさだ けんじ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
明治大学法学部法律学科を卒業後、金融機関にて資産運用業務に従事。
ファイナンシャル・プランナー(FP)の上級資格である「CFP®資格」を取得後、2007年に開業。
子育て世帯や退職準備世帯を中心に「暮らしとお金」の相談業務を行う。
また、全国商工会連合会の「エキスパートバンク」にCFP®資格保持者として登録。
法人向け福利厚生制度「ワーク・ライフ・バランス相談室」を提案し、企業にお勤めの役員・従業員が抱えている「暮らしとお金」についてのお悩み相談も行う。
2017年、独立行政法人日本学生支援機構の「スカラシップ・アドバイザー」に認定され、高等学校やPTA向けに奨学金のセミナー・相談会を通じ、国の事業として教育の格差など社会問題の解決にも取り組む。
https://fpofficekaientai.wixsite.com/fp-office-kaientai
入りすぎに注意! 民間保障は公的保障の上乗せとして考えよう
公的保障といえば、健康保険制度や介護保険制度、雇用保険制度、公的年金制度などが頭に浮かぶかもしれません。
他にも、自治体が用意している医療費助成制度や、いわゆる労災と呼ばれる労働者災害補償制度、企業が準備している企業年金制度や確定拠出年金制度など、数えたら結構たくさんあります。
なぜ、これらの公的保障・補償制度が重要かというと、民間の保険に入る際は、基本的にこれらの制度の上乗せ保障・補償という位置づけで考える必要があるからです。
例えば、話題の年金ですが、会社員や公務員の場合、公的年金としては厚生年金保険に加入されていることと思います。よくあるケースとして、「厚生年金保険とは別に、自分で保険会社を通じ個人年金保険に入っています」という方がいます。
このような方法は必ずしも間違いではありませんが、お勤めの会社で厚生年金基金や確定給付年金といった企業年金制度があったり、企業型の確定拠出年金制度を設けていたりするような場合、これらと比べ個人年金保険は節税効果が弱くなっています。
そのようなケースでは個人年金保険に加入する意義は、実をいうと、現行の制度のもとではかつてより薄れてきているのが実情です。
また、これもよくいわれることですが、お勤め先で入られている健康保険制度によって、現役世代の場合は原則、かかった治療費のうち3割を自己負担すればよく、さらに高額療養費制度も活用できます。
民間で医療保険に加入する際は、これらの点も考慮し、保険の入りすぎに注意しておく必要があります。
公的保障を理解して安心の老後生活を
さらに、40歳から加入が義務付けられている介護保険制度ですが、これに対応する民間の保険は「介護保険」や「認知症保険」とよばれるものです。
介護保険や認知症保険では、例えば、要介護状態や認知症になった場合に、保険商品によって異なりますが、一般的には、年金や一時金を受け取ることができるようになっています。
しかし、介護保険制度では、原則、自己負担割合が介護サービスなどの費用の1割となるため、足りないだろうと予測される金額を算出したうえで介護保険や認知症保険に入ることが必要といえます。
他にも、遺族保障の面では、例えば、世帯主に万一のことがあった場合に入る定期保険や終身保険、収入保障保険などの「死亡保険」があります。
これらについては、そのベースになる公的保障として、公的年金制度による「遺族年金」や、幸いにも存命だった場合、健康保険制度による「傷病手当金(国民健康保険制度にはない)」、公的年金制度による「障害年金」などからの給付が受けられるようになっています。
このようなことから、民間の保険に加入する際は、どの保険に対して、そもそもどのような公的保障があるかを理解したうえで検討することが必要です。
今回は、公的保障と民間の保険についてのおおまかな兼ね合いについて見てきました。次回からは、もう少し踏み込んで、まず「健康保険制度」と「医療保険」の関係性についてお伝えしていきたいと思います。
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)