自動車保険で見る高齢者の自動車事故
配信日: 2019.09.29 更新日: 2020.04.06
認知症とまではいかなくても、年齢が高くなれば、反射神経が鈍りますし、判断力も衰えます。事故のリスクは高くなるため、自動車保険も高くなります。
執筆者:村井英一(むらい えいいち)
国際公認投資アナリスト
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、日本証券アナリスト検定会員
大手証券会社で法人営業、個人営業、投資相談業務を担当。2004年にファイナンシャル・プランナーとして独立し、相談者の立場にたった顧客本位のコンサルタントを行う。特に、ライフプランニング、資産運用、住宅ローンなどを得意分野とする。近年は、ひきこもりや精神障害者家族の生活設計、高齢者介護の問題などに注力している。
事故の発生率が高いと保険料は高くなる
自動車保険の保険料は、車種、走行距離、運転する人の範囲などによって異なります。それぞれ、事故の発生率にかかわってくるからです。自動車保険をはじめとした損害保険は、事故や火災が起きた際の損害額と、その発生率を基に保険料を決めています。
車種ごとに保険料が異なるのは、車種によって事故の発生率が異なるからです。家族向けの車であれば、無理のない運転をする人が多く、スポーツカータイプだと、スピードを出す人が増えるため、事故の発生率があがります。またブレーキサポートシステムの装備などによる違いもあります。
年齢も、事故の発生率に影響します。10代、20代では、どうしても乱暴な運転をする人が一定数います。もちろん、みながみな、そうだというわけではありませんが、年齢別の事故の発生率を見ると若い人は高くなっています。そのため保険料も高くなります。また高齢者についても事故の発生率が多くなるため、保険料が高くなります。
家族の年齢条件は若い人だけ
損害保険会社は、加入する際に被保険者(主に自動車を使用する人)の年齢によって、保険料を変えています。他の条件が同じであれば、40~50代がもっとも保険料が安くなります。10~20代は、それに比べて1.8倍から2倍近い金額となります。
高齢者も40~50代に比べると、保険料は高くなります。70代では1.5倍ほど、80代にもなると40~50代の2倍以上になります。
運転する人の範囲でも、保険料は違ってきます。保険会社によって異なりますが、本人限定、本人・配偶者、家族限定、限定なし、などの区分があります。本人限定以外は、範囲に含める運転者の年齢条件を指定することで、保険料が変わってきます。「30歳以上限定」「26歳以上限定」「21歳以上限定」「年齢制限なし」などに分かれます。
保険料は年齢制限が高いほど割安になります。家族に高齢者がいて、その人が運転する場合にも、年齢は問われません。70代の家族が運転する場合でも、保険料は被保険者(主に自動車を使用する人)の年齢によって決まります。運転者の範囲を「家族限定」「限定なし」にすることで保険料は高くなりますが、それでも7~8%程度です。
損害保険会社は、若い人については厳しく見ていますが、高齢の家族が運転することにはあまり神経質ではありません。昨今、高齢者の自動車事故が問題となっているのに、高齢者の年齢制限を設けないのは一体なぜなのでしょうか?
高齢者の事故の発生率はそれほど高くない
自動車事故における高齢者の割合は、確かに増えています。その大きな理由は、自動車を運転する高齢者が増えているからだと推測できます。しかし免許証保有者に対する事故の発生率で比較してみると、高齢者はそれほど高くはありません。70代、80代と比べ、圧倒的に10代、20代の方が高くなっています。
昨今、高齢者の事故が報道され、高齢者の運転が心配されていますが、現状ではそれほど事故の発生率は高くないのです。自動車保険の保険料が、若者ほど高くないのも、そのためだと考えられます。
逆に考えると、運転に自信があっても自分を過信しすぎると事故を起こす可能性は高くなります。自動車事故を防ぐ最大のポイントは、運転のテクニックよりも、安全運転を心がけることにあるようです。
執筆者:村井英一
国際公認投資アナリスト