失業手当の受給中に少しでも収入があったら、手当は受け取れなくなるの?
配信日: 2020.06.18
失業手当について、おさらいをしながら見ていきたいと思います。
執筆者:小山英斗(こやま ひでと)
CFP(日本FP協会認定会員)
1級FP技能士(資産設計提案業務)
住宅ローンアドバイザー、住宅建築コーディネーター
未来が見えるね研究所 代表
座右の銘:虚静恬淡
好きなもの:旅行、建築、カフェ、散歩、今ここ
人生100年時代、これまでの「学校で出て社会人になり家庭や家を持って定年そして老後」という単線的な考え方がなくなっていき、これからは多様な選択肢がある中で自分のやりたい人生を生涯通じてどう実現させていくかがますます大事になってきます。
「未来が見えるね研究所」では、多くの人と多くの未来を一緒に描いていきたいと思います。
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失業手当の支給対象となる人は?
失業手当とは通称で、正式には雇用保険の求職者給付である「基本手当」と呼ばれるものです。失業手当は、求職者が失業中の生活を心配せずに仕事探しに専念できるよう支援するために支給されるものです。
失業手当は仕事を辞めたからといって、必ず支給があるわけではありません。
失業手当の支給を受けるためには、まずは居住所を管轄するハローワーク(公共職業安定所)に求職の申し込みをし、受給資格の確認を受ける必要があります。受給資格は以下の2つに当てはまる人が対象となります。
1.失業の状態にある人(次の条件を全て満たす場合の人)
・積極的に就職しようとする意志があること
・いつでも就職できる能力(健康状態・環境など)があること
・積極的に仕事を探しているにもかかわらず、現在職業についていないこと
2.離職日以前2年間に雇用保険の被保険者期間が通算して12ヶ月以上あること
(倒産や解雇などにより離職した場合や、労働契約が更新されなかったため離職した有期労働契約者などについては、離職日以前1年間に通算して6ヶ月以上)
失業手当の日額や所定給付日数、支給期間
失業手当の日額は、原則として、離職した直前の6ヶ月間に支払われた賃金の合計金額を180で割った金額(賃金日額)のおよそ45%~80%で年齢ごとに上限が定められています。
令和元年8月現在
(※1より筆者作成)
所定給付日数については、離職の日における年齢、被保険者として雇用されていた期間や直近の離職理由などにより定められています。
(※2より筆者作成)
そして、失業手当の支給を受けられる期間(受給期間)は原則として離職日の翌日から1年間(所定給付日数が330日の人は1年間+30日、360日の人は1年間+60日)です。
実際に失業手当をもらうためには
受給資格が確認された人が、実際に失業手当をもらうためには「失業の認定」を受ける必要があります。原則として4週間(28日)に1回の指定された日(失業の認定日)に自身でハローワークに出向き、失業の状態であった(ある)ことを申告する必要があります。
具体的には、求職した活動実績や就労・手伝いなどの有無、収入の有無などを「失業認定申告書」に記入し、ハローワークの失業認定窓口に提出し係員の確認を受けます。失業認定を受けると、約7日後に失業手当が支給されます。
失業期間中に一時的な仕事などで収入があったら
失業手当は原則として失業の状態にある人のためのものです。そのため就職または就労した人には失業手当は支給されません。
しかし、短時間就労または手伝いなどの場合は、それで得た収入額によって、失業手当が全額もしくは減額されて支給される場合と、支給されない場合があります。
短時間就労または手伝いというのは、原則として1日の労働時間が4時間未満(雇用保険の被保険者となる場合を除く)である場合、もしくは、1日の労働時間が4時間以上だったが、1日あたりの収入額が賃金日額の最低額(2500円、令和元年8月現在)未満であった場合に該当します。
(※1より筆者作成)
上記条件の「収入」とは「収入の1日分に相当する額」から1306円(失業手当の減額の算定に係る控除額、令和元年8月現在)を引いた金額となります。
例えば、賃金日額が1万円だった場合、失業手当の日額と「収入」の合計が8000円(賃金日額の80%)以下であれば、失業手当は全額支給されます。
仮に、このときの失業手当の日額が5000円だとした場合、1日あたりの「収入」が3000円(控除額1306円を引く前の実際の労働収入は4306円)以下であれば、失業手当が全額支給されることになります。
減額支給される場合の計算は、失業手当と「収入」の合計の賃金日額の80%を超えた分に対して、失業手当から減額されます。つまり失業手当と「収入」の合計が賃金日額の80%になるように失業手当の支給額が調整されます。
(減額支給の場合の計算例)
賃金日額 1万円 賃金日額の80% 8000円
失業手当の日額 5000円
労働内容と収入 内職、1日、6000円
失業手当減額の算定に係る控除額 1306円
控除後の収入 4694円(労働収入-控除額)
1日あたりの減額分
4694円(控除後の収入)+5000円(失業手当の日額)-8000円(賃金日額の80%) = 1694円
減額後の失業手当
5000円 – 1694円 = 3306円
なお、不支給となった日の分については、支給残日数からは引かれず持ち越しとなりますが、支給期間を超えた持ち越しはされません。
まとめ
失業手当についておさらいをしながら、求職中に一時的な収入があったら手当がどうなるかを見てきました。収入の状況によっては失業手当も受給できる場合があることがわかりました。
ただし、失業手当は生活の心配をせずに希望する仕事探しに専念してもらうためのものです。求職中の一切の労働を禁止しているものではないようですが、仕事探しに専念できなくなるほどの労働となる場合に、失業手当の減額や不支給となる場合があるようです。
求職中の労働については収入の有無にかかわらず、必ず申告が必要となります。正しく申告しないと不正受給になり支給停止や返還命令を受ける可能性もあります。労働が失業手当の受給に影響がないかどうか判断がつかないときは、ハローワークの担当者へ相談するようにしましょう。
参考
※1 厚生労働省 「賃金日額等の改正前後の金額について」
※2 ハローワーク インターネットサービス 「よくあるご質問(雇用保険について)」
執筆者:小山英斗
CFP(日本FP協会認定会員)