更新日: 2020.10.09 生命保険
就業不能保険は必要? メリットとデメリットを解説
われわれも、池江選手と同じように、いままで健康であった人が突然病気になったり交通事故にあったりして、仕事ができなくなることはあるかもしれません。ちなみに、警察庁が発表している交通事故の人身事故発生件数は47.2万件(2017年)となっています。それだけ多くの人が人身事故に遭遇しているのです。
病気やケガになったら医療保険や傷害保険で保障を受けられますが、何ヶ月も働くことができなくなったらどうでしょう? 短期間の入院であれば、医療保険等でカバーできますが、長期間にわたって働けない場合には十分な保障がありません。
そこで、従来の保険ではカバーできない部分の保障、すなわち長期間に働くことができなくなるリスクをカバーする保険として登場したのが「就業不能保険」です。
今回は、この保険のメリットとデメリットについて確認してみたいと思います。
執筆者:堀江佳久(ほりえ よしひさ)
ファイナンシャル・プランナー
中小企業診断士
早稲田大学理工学部卒業。副業OKの会社に勤務する現役の理科系サラリーマン部長。趣味が貯金であり、株・FX・仮想通貨を運用し、毎年利益を上げている。サラリーマンの立場でお金に関することをアドバイスすることをライフワークにしている。
メリット
1.公的保障で対応できない生活費をカバーできる
会社員や公務員であれば、1ヶ月程度の休みであれば年次有給休暇制度を活用すれば、給料が減額することはありませんが、それ以上休むと給与が減額されます。ただし、社会保険に加入しているため「傷病手当金」の支給を受けることができます。この手当金は、最長で1年6ヶ月の間、給与の2/3の給付を受けることができます。
また、1年6ヶ月の期間を過ぎても、所定の条件を満たせば、基礎年金と厚生年金から「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の給付を受けることができます。
しかしながら、こういった公的保障でも元の給与水準と同等の給付を受けることができないため、その差額の生活費をカバーする必要があります。こういった事態に備えて「就業不能保険」があるのです。
特に、自営業の場合は、会社員や公務員と違って、社会保険に加入していないため「傷病手当金」を受け取ることができません。また、障害年金も「障害基礎年金」のみが給付されるので、働けなくなった場合のリスクは大きいといえます。「就業不能保険」に入っていると、このような場合に生活費をカバーすることができそうですね。
2.医療保険ではカバーできない部分を補うことができる
医療保険は、病気やケガにより手術代や入院費などの医療費をカバーすることができます。しかし、がんや心疾患、脳梗塞などの重篤な病気になったり、事故によって体に重い障害が残った場合には、入院が長引いたり、退院後に長期の在宅療養をすることが想定されます。こういった事態、つまり「就業不能状態」になった時に、就業不能保険によって生活費をカバーできます。
3.万一の時の経済不安を軽減できる
池江選手にように突然病気になったり、不幸にも交通事故に遭ったりする可能性は誰にでもあります。特に子どもがいる家庭では、世帯主がそのようなことになった場合には、教育費や住宅ローンなどの生活費が必要で、経済的に大変困ることになります。このような万が一の経済的リスクに備え、経済不安を払拭することが可能です。
デメリット
1.過剰な加入になるケースもある
会社員や公務員などは、自営業者に比べて会社独自の保障や公的な保障が手厚くなっています。また、(1)医療保険に加入している、(2)健康不安が少ない、(3)蓄えがある、(4)住宅ローンや教育費がほとんどかからない、こういった人が「心配だから」という理由だけで就業不能保険に入る必要はないかもしれません。加入にあたっては、保険に掛ける費用と経済的リスクを鑑み、よく検討をする必要があります。
2.就業不能になっても支払対象外の期間がある
就業不能になったからといって、すぐに保険金を受け取れるわけではありません。例えば『就業不能になってから60日間』などの支払い対象外の期間があります。その期間は、既存の保険でカバーできない費用は自分の貯金などから捻出する必要があります。また、その期間で就業可能になった場合は、給付金を受け取ることはできません。
3.うつなどの精神疾患が対象にならない保険もある
就業不能保険にはさまざまなものがあり、うつなどの精神疾患は対象外になっている保険もあります。どのような条件なら保険金が支払われるかをよく確認する必要があります。また、今の仕事に復帰できなくとも、別の職種で就業が可能であれば給付金の対象にはなりませんし、リストラなどで仕事ができないことに備える保険ではないことを認識しておきましょう。
「就業不能保険」にはさまざまな種類があります。加入する際には、上記メリット・デメリットを考慮しながら、各社の保険内容をよく比較することが重要です。
(参考)
政府統計の総合窓口「道路の交通に関する統計」
執筆者:堀江佳久
ファイナンシャル・プランナー
中小企業診断士