更新日: 2020.10.23 損害保険
自転車損害賠償責任保険の義務化の流れ。どう対処したらよいか?
2020年4月からは東京都でも義務化が始まり、都道府県ベースでいうと16ヶ所で自転車保険が義務化されたことになります。
この記事では自転車保険義務化の背景と現状、保険の加入方法や補償内容について解説したいと思います。
執筆者:浦上登(うらかみ のぼる)
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー
東京の築地生まれ。魚市場や築地本願寺のある下町で育つ。
現在、サマーアロー・コンサルティングの代表。
ファイナンシャル・プランナーの上位資格であるCFP(日本FP協会認定)を最速で取得。証券外務員第一種(日本証券業協会認定)。
FPとしてのアドバイスの範囲は、住宅購入、子供の教育費などのライフプラン全般、定年後の働き方や年金・資産運用・相続などの老後対策等、幅広い分野をカバーし、これから人生の礎を築いていく若い人とともに、同年代の高齢者層から絶大な信頼を集めている。
2023年7月PHP研究所より「70歳の現役FPが教える60歳からの「働き方」と「お金」の正解」を出版し、好評販売中。
現在、出版を記念して、サマーアロー・コンサルティングHPで無料FP相談を受け付け中。
早稲田大学卒業後、大手重工業メーカーに勤務、海外向けプラント輸出ビジネスに携わる。今までに訪れた国は35か国を超え、海外の話題にも明るい。
サマーアロー・コンサルティングHPアドレス:https://briansummer.wixsite.com/summerarrow
自転車損害賠償責任保険の義務化の現状とその背景
2020年9月30日時点で自転車損害賠償責任保険の義務化がされた地域は次のとおりです。
1. 都道府県
宮城県、山形県、埼玉県、東京都、神奈川県、山梨県、長野県、静岡県、滋賀県、京都府、大阪府、奈良県、兵庫県、愛媛県、福岡県、鹿児島県(計16ヶ所)
2. 政令市
仙台市、さいたま市、相模原市、静岡市、名古屋市、京都市、堺市、岡山市、福岡市(計9ヶ所)
仙台市や名古屋市のように県では義務化されていなくとも、政令市では義務化されている地域もあり、首都圏と京阪神を中心に自転車損害賠償責任保険の義務化が広まっています。また、義務化はしないまでも「努力義務」としている都道府県が11ヶ所、政令市が2ヶ所あります。
この背景には、自転車が歩行者に衝突して死亡させたり、重度後遺障害に陥らせたりする事故が多くなり、裁判で数千万円の賠償命令を出した事例などが増えてきたことがあります。
義務化といっても今のところ、条例違反に対する罰則はありません。
しかし、保険に入らずに事故を起こした場合、請求される高額の賠償金により自分自身の人生が狂ってしまうことになるので、義務化された地域か否かを問わず、自転車に乗る人にとって自転車損害賠償責任保険への加入は必要といえると思います。
「自転車保険」とは?
こうした動きを受けて、いくつかの保険会社が「自転車保険」を売り出しています。
市販の「自転車保険」は、義務化の対象となっている自転車損害賠償責任保険に加えて、自転車の運転者がケガをした場合の傷害保険等を組み合わせたものです。
大ざっぱにいうと、自転車保険とは自動車保険の自転車版ということができますが、もっと簡略化すると、自分が事故に遭ってケガをした場合を補償する「傷害保険」と、自転車で歩行者などの他者を死亡させたり、ケガをさせたり、人の所有物を壊した場合の損害を補償する「個人賠償責任保険」を組み合わせたものと考えればよいと思います。
先ほどの義務化の対象となる自転車損害賠償責任保険とは、「個人賠償責任保険」です。自分自身の傷害は自分の問題なので条例で義務化する必要はない、問題は他者に危害や損害を与えた場合の賠償がしっかりとできるようにするべきである、という考えに基づいています。
「自転車保険」への加入方法
自転車保険への加入方法には次の2とおりがあります。
1. 市販の自転車保険に加入する
2. 傷害保険と個人賠償責任保険に別々に加入する
それでは、この2つの方法の内容について検討してみましょう。
1. 市販の自転車保険に加入
この場合の補償は通常、次のとおりとなります。
A. 傷害補償
(1)死亡・後遺障害保険金(定額)
(2)入院保険金(日額)
(3)手術保険金(定額)
(4)通院保険金(日額)
B. 個人賠償責任(示談代行サービス付き)
C. ロードサービス
(自転車がパンクなどのトラブルで走行不能になったとき、自宅まで運んでもらう)
2. 傷害保険と個人賠償責任保険に別々に加入
この場合、補償の範囲では上記の市販の自転車保険の補償のうち、AとBに加入するということになります。
自転車保険への加入方法による補償内容の比較
A. 傷害補償
傷害補償については、自転車保険の場合は自転車事故によるケガに限定される可能性があります。傷害保険に加入していれば、自転車事故にプラスして日常生活におけるケガもカバーされるので補償範囲は広くなります。
B. 個人賠償責任
自転車保険であっても単独の個人賠償責任保険であっても、保険会社による示談代行サービス付きであること、賠償限度額は1億円以上であることが必要です。
示談代行サービスとは自転車事故が起きたとき、保険会社が被害者との間に入って損害賠償金などの交渉をしてくれるシステムです。また、不幸にして死亡事故や重度後遺障害事故になった場合、賠償金額は数千万円を超えることがあるので、賠償限度額は1億円以上でないといけません。
個人賠償責任でも、自転車保険の場合は自転車事故による賠償責任に限定される可能性がありますが、単独の個人賠償責任保険の場合は日常生活における賠償責任までカバーされるので、補償範囲が広がることがあります。
C. ロードサービス
傷害保険と個人賠償責任保険の組み合わせの場合はカバーされないので、無保険でやるか、別のサービスを探して加入する必要があります。
まとめ
自転車保険に加入する2つの方法についてまとめると、次のようになります。
1. 市販の自転車保険ではなく別々に加入する方法の方が、傷害補償も個人賠償責任も日常生活における事故までカバーしてくれるので、補償範囲が広くなる可能性が高い。まとめて自転車保険として掛ける場合には、日常生活もカバーしてくれるものにする必要がある。もし両方の条件が同じなら、保険料の安い方にする。
2. すでに傷害保険や個人賠償責任保険に入っているのなら、自転車事故もカバーするかどうかを確認し、もし補償の範囲であれば改めて自転車保険に加入する必要はない。
出典 国土交通省 「自転車損害賠償責任保険等への加入促進について」
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー