子どもが生まれたら、「こども保険」は入るべきか 加入時に見ておきたいポイント
配信日: 2017.12.14 更新日: 2019.01.10
Text:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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こども保険のしくみとメリット、デメリット
一般的に、こども保険は、学資金を貯めるために加入する貯蓄型の保険です。被保険者(子ども)の小学校・中学校・高校や大学の入学に合わせて入学祝金、被保険者(子ども)が満期まで生存していたときに満期祝金が支払われるしくみとなっています。
契約者(親など)が死亡・高度障害の場合、以後の保険料が免除されます。保険料を支払わなくていいにもかかわらず、約束通りの入学祝金や満期祝金を受け取れるのが特徴です。
被保険者(子ども)が死亡した時には、死亡給付金(既払込保険料−既払済入学祝金)が契約者(親など)に支払われます。商品によっては、契約者(親など)の死亡時に満期まで育英年金が支払われる、育英年金付こども保険もあります。
育英年金付こども保険は、実質的にみると子ども(被保険者)と親(契約者・被保険者)の2人の被保険者が存在する連生保険といわれるものです。
近年は予定利率が低いので貯蓄商品としての魅力が薄れています。低金利時に契約すると、予定利率も低く、長期間、その利率で運用されますので、インフレによるお金の価値の目減りといったデメリットも考えられます。
しかも、他の保険同様、中途解約した場合には、既払込保険料よりも解約返戻金が少なくなります。
しかし、毎月、銀行口座から保険料が引き落とされるので、貯蓄が苦手な人でも確実に学資金が貯められることから、人気があります。学資金ということで心理的に解約しにくいといった面も確実に学資金を貯めることができる要因です。
ただし、中途解約では元本割れのリスクがあるので、継続できる保険料で加入するのがポイントです。また、保険会社によりますが、加入できる被保険者(子ども)の年齢は0歳~12歳です。5歳までといった商品もありますので、注意しましょう。なお、子どもが出生前から加入できます。
こども保険の加入のポイント
以下は、こども保険に加入する上での主なチェックポイントです。
〈貯蓄性の判定法〉
入学祝金、満期祝金の受け取り額の合計を既払込保険料累計で割った戻り率が大きいもののほうが、貯蓄性が高いといえます。100%を超えないものは避けましょう。
〈満期日に気を付ける〉
こども保険は、特に、大学等の学資金の準備として加入する方が多いようです。大学等の入学金等はAO入試や推薦入試の場合、高校3年生の秋ごろには納付しなければならないので、
18歳満期では入学金等に間に合わない可能性があります。18歳満期で契約した場合の満期保険金の受け取り時期は、一般に、「子こどもが満18歳になった後に迎える最初の契約応答日」となっているからです。
〈保険料の払込期間はいつまでにするか〉
満期まで保険料を払い続ける全期払いや、それよりも短い期間で保険料の払い込みを終える短期払いがあります。最近は予定利率の低下で、保険料の支払い総額が少なくて済む短期払いが増えています。短期払いの場合、契約者が死亡・高度障害になったときに以後の払込保険料が免除になるという、こども保険の魅力が全期払いに比べ薄れます。一方、短期間で保険料を支払い終えたほうが、保険料支払いの継続性の点からは安心といえます。
〈育英年金は必要?〉
育英年金付こども保険は、「契約者(親など)が万一の時、その後の保険料は不要になり、被保険者(子ども)が生存している限り、保険期間の満了まで毎年、育英年金が受け取れる」というものです。
この部分(保障)の保険料は掛け捨てですので、育英年金がないものに比べ貯蓄性が劣ります。
〈入学祝金あり、なし〉
入学祝金は保険料からの支払ですので、祝金なしに比べ、運用利益も含めた総受け取り額が少なくなります。一方、満期前に、万一、保険会社が破綻した場合、祝金ありのほうが、支払保険料の回収率がよいといえます。
〈遅くとも5歳までには加入の検討をする〉
商品によりますが、加入できるのが5歳や6歳までといった商品があります。12歳まで加入できる商品もありますが、比較検討できる商品の選択肢が狭くなります。
こども保険の税金
〈保険料〉
支払保険料は、生命保険料控除の対象となります。配当金がある場合は、積立配当(満期時支払い指定の契約)を除いて、配当金を差し引いた後の正味保険料が生命保険料控除の対象です。
〈入学祝金、満期祝金を受け取った場合〉
一時所得になります。計算式は以下の通りです。
課税所得={ 祝金−(既払保険料−それまでに収入を得るために支出した金額に算入した保険料の合計額-特別控除額50万円 }×2分の1
※それまでに収入を得るために支出した金額に算入した保険料の合計額は受けとった祝金と同額です。
たとえば、年間保険料12万円、祝金として、小学校入学(6歳)20万円、中学入学(12歳)30万円、高校入学(15歳)40万円、大学入学(18歳)50万円、満期保険金(22歳)60万円とすると、
・小学校入学祝金を受け取ったときの課税所得は
課税所得={ 20万円−(12万円×6回−0円)-50万円 }×2分の1となります。
・中学校入学祝金を受け取ったときの課税所得は
課税所得={ 30万円−(12万円×12回−20万円)-50万円 }×2分の1となります。
・高校入学祝金を受け取ったときの課税所得は
課税所得={ 40万円−(12万円×15回−50万円)-50万円 }×2分の1となります。
以下同様です。
〈契約者(親など)が死亡した場合〉
・死亡時の権利価額
約款にもとづく権利の承継者に対して、こども保険の権利価額が、相続財産として課税対象となります。権利価額は、原則として、解約返戻金の額で評価します。
・入学祝金、満期祝金を受け取ったとき
相続によって新契約者になった人は、親が負担した保険料も含め、自ら負担したものと同様に取り扱われます(相基通3-35)。したがって、契約者(親など)の死亡後に受け取る入学祝金、満期祝金の課税は一時所得と考えらます。
Text:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。
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