更新日: 2020.12.29 その他保険
失業してしまった……そんなときにもらえるお金には、どんなものがある?
失業等給付は、求職者給付、就職促進給付、教育訓練給付、雇用継続給付で構成されており、求職者給付の一部である「一般求職者給付」の中に失業者が受け取れる「基本手当」があります。
この記事では基本手当を中心に、失業してしまった方がお金を受け取れる給付制度について解説します。
執筆者:遠藤功二(えんどう こうじ)
1級ファイナンシャルプランニング技能士(国家資格)CFP(R) MBA(経営学修士)
三菱UFJモルガン・スタンレー証券とオーストラリア・ニュージーランド銀行の勤務経験を生かし、お金の教室「FP君」を運営。
「お金のルールは学校では学べない」ということを危惧し、家庭で学べる金融教育サービスを展開。お金が理由で不幸になる人をなくすことを目指している。
失業者の生活を支える求職者給付
求職者給付は、一般求職者給付、高年齢求職者給付、短期雇用特例被保険者の求職者給付、日雇労働求職者給付金に分かれます。1つずつ概要を説明していきます。
一般求職者給付の基本手当
基本手当は、労働の意思や能力がある一般の雇用保険の被保険者が離職をした場合に支給される失業手当です。離職の日以前2年間に被保険者期間が12ヶ月以上ある方を対象に、原則として離職日の翌日から1年間を限度として支給されます。
倒産、解雇などの会社都合により再就職の準備をする時間的余裕がないままに離職した「特定受給資格者」、または労働契約の更新がなかった、精神および身体的理由で仕事ができない、妊娠出産もしくは親の介護といった家庭の事情などを理由に離職した「特定理由離職者」については、基本手当を受給するための被保険者期間の要件は6ヶ月以上となります。
また、妊娠や出産、子育て、介護、配偶者の海外転勤への同行などの理由により30日以上仕事に就くことができない日を最大3年間、定年退職者は求職をしない期間を最大1年間、受給期間に加えることができます。
給付額(基本手当日額)は原則、離職前6ヶ月の賃金日額の45~80%ですが、上限と下限があります。2020年8月時点の基本手当日額の上限は8370円、下限は2059円となっています。
基本手当日額の上限金額(令和2年8月1日時点)
年齢区分 | 基本手当日額 |
---|---|
29歳以下 | 6850円 |
30~44歳 | 7605円 |
45~59歳 | 8370円 |
60~64歳 | 7186円 |
下限:2059円
※厚生労働省 「雇用保険事務手続きの手引き【令和2年8月版】」を基に筆者作成
給付日数は、被保険者であった期間と離職理由などにより異なります。以下の表のとおりです。
1. 一般の受給資格者
9年以下 | 10年以上19年以下 | 20年以上 | |
---|---|---|---|
64歳以下 | 90日 | 120日 | 150日 |
2. 障害者などの就職困難者
1年未満 | 1年以上 | |
---|---|---|
44歳以下 | 150日 | 300日 |
45歳~64歳 | 150日 | 360日 |
3. 特定受給資格者、特定理由離職者(契約更新がなく離職となった方)
1年未満 | 1年以上 5年未満 |
5年以上 10年未満 |
10年以上 20年未満 |
20年以上 | |
---|---|---|---|---|---|
29歳以下 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | ― |
30〜34歳 | 90日 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 |
35〜44歳 | 90日 | 150日 | 180日 | 240日 | 270日 |
45〜59歳 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
60〜64歳 | 90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
特定理由離職者は2022年3月31日までの離職が対象
※厚生労働省 「雇用保険事務手続きの手引き【令和2年8月版】」を基に筆者作成
就職困難者以外の方で2020年6月12日以後に基本手当の所定給付日数が終わる方は、特例として給付日数が延長になる場合があります。
基本手当給付日数延長の対象者
離職日 | 対象者 |
---|---|
2020年4月7日以前(緊急事態宣言の発令以前) | 離職理由を問わず全受給者 |
2020年4月8日〜5月25日 | 特定受給資格者および特定理由離職者 |
2020年5月26日以後 | 特定受給資格者および特定理由離職者、かつ新型コロナウイルス感染症の影響で離職を余儀なくされた方 |
※筆者作成
延長される給付日数は60日ですが、35歳〜44歳で所定給付日数が270日、45歳〜59歳で所定給付日数が330日の方は30日となっています。
なお、一般求職者給付には公共職業訓練などの受講中に支給される技能習得手当、求職中に15日以上傷病により働けない状態になったときに支給される傷病手当もあります。
高年齢求職者給付(一時金)
65歳以上で離職された方で就職する意思と能力があり、離職日以前の1年間に雇用保険の被保険者期間が6ヶ月以上ある方は、基本手当の代わりに下記表にある日数分の基本手当日額相当の高年齢求職者給付金を一時金として受け取れます。
高年齢求職者給付金額
被保険者期間 | 1年未満 | 1年以上 |
---|---|---|
給付額 | 基本手当日額相当の30日分 | 基本手当日額相当の50日分 |
※厚生労働省 「雇用保険事務手続きの手引き【令和2年8月版】」を基に筆者作成
短期雇用特例被保険者の求職者給付(特例一時金)
短期労働者で、離職の日以前の1年間に被保険者期間が6ヶ月以上ある場合は、基本手当の30日分(当分の間40日分)が支給されます。
日雇労働求職者給付金
失業した月の前2ヶ月間に、26枚以上の印紙の貼り付けが雇用保険日雇労働被保険者手帳にある日雇労働者は、印紙の貼り付け枚数に応じて13~17日分の給付金を受け取れます。給付金の日額は、賃金日額により第1級7500円、第2級6200円、第3級4100円に分かれています。
被保険者期間とは
雇用保険の被保険者期間の月数は、離職日からさかのぼって1ヶ月ずつ区切った期間において勤務日数が11日以上ある月を1ヶ月とします。また、2020年8月からは勤務日数が11日以上の月が12ヶ月ない場合、同じように区切った1ヶ月間に勤務時間が80時間以上ある月を1ヶ月として計算します。
就職促進給付
ここからは離職後、再就職した際に受け取れる給付金について解説します。就職促進給付には、再就職手当、就業手当、就業促進定着手当などがあります。
再就職手当
基本手当の給付日数の3分の1以上を残し、1年を超えて雇用される見込みのある職業に就いたときに、「基本手当日額×残りの給付日数×60%(残りの給付日数が3分の2以上の場合は70%)」で計算した手当が支給されます。2020年8月1日時点での日額の上限は6195円(60歳~64歳は5013円)となっており、毎年更新となります。
就業手当
基本手当の給付日数が3分の1以上かつ45日以上残っている状態で、再就職手当の支給の対象とならない職業(短時間就労など)に就いた場合に、「就業した日数×30%×基本手当日額」で計算した就業手当が支給されます。2020年8月1日時点での日額の上限は1858円(60歳~64歳は1503円)となっており、毎年更新となります。
就業促進定着手当
再就職手当の支給を受けた方で、再就職先の6ヶ月間の賃金が前職の賃金より低い場合、以下の式で計算した額が支給されます。
(離職前の賃金日額-再就職手当の支給を受けた日から6ヶ月間の賃金の1日分の額)×再就職後6ヶ月間の賃金の支払いの基礎となった日数
上限:基本手当日額×基本手当の支給残日数×40%(再就職手当の給付率が70%の場合は30%)
2020年8月1日時点での計算上の日額の上限は6195円(60歳~64歳は5013円)となっており、毎年更新となります。
その他の就職促進給付
その他、就職した際に引越しが必要な場合などに支給される移転費、広範囲の地域にわたる就職活動が必要な場合に支給される広域求職活動費、再就職のために短期訓練を受講した場合の費用が支給される短期訓練受講費、求職活動中の面接試験などのために子どもを預ける際に要した保育サービス費を支給する求職活動関係役務利用費などがあります。
教育訓練支援給付金
雇用保険の被保険者で、専門実践教育訓練の受講にかかる教育訓練給付金(支給額:教育訓練経費の50%、1年間の上限額40万円、総支給上限額120万円)の支給を受けている失業中の方には「基本手当日額の80%×支給日数」が支給されます。
高年齢再就職給付金
雇用保険の基本手当を受給したが再就職手当は受けておらず、基本手当の算定基礎期間が5年以上ある60歳~64歳の方が基本手当の支給残日数を100日以上残し、1年を超えて雇用されることが確実である職業に再就職した場合で、賃金が基本手当の基準となった賃金日額の75%未満となった際に実際に支払われた賃金の最大15%が支給されます。
まとめ
新型コロナウイルスの影響で、やむを得ず離職を余儀なくされる方は少なくありません。このようなときにはハローワークに相談に行って最新情報を収集しましょう。申請の手続き自体は、早すぎても遅すぎても給付を受けられませんので、事前にどのような予定で動けば良いのかを計画しておきましょう。
雇用保険の失業等給付の制度は、再就職を希望する方を支援する制度です。離職後に再就職の意思を持つことが前提になる点は覚えておきましょう。
出典
厚生労働省 雇用保険事務手続きの手引き【令和2年8月版】
厚生労働省 広島労働局 ハローワーク
離職されたみなさまへ <高年齢求職者給付金のご案内>
厚生労働省 都道府県労働局 公共職業安定所(ハローワーク)
日雇派遣労働者の方へ ~日雇労働求職者給付金について~
厚生労働省 都道府県労働局 ハローワーク
再就職後の賃金が、離職前の賃金より低い場合には「就業促進定着手当」が受けられます
執筆者:遠藤功二
1級ファイナンシャルプランニング技能士(国家資格)CFP(R) MBA(経営学修士)