人生100年のビジョンマップ ~心もお財布も幸せに生きよう~ PART9
メディエゾン代表 上野美和さんに聞く 第2回 チームで治療するアメリカの病院
Interview Guest : 上野 美和
配信日: 2018.12.27 更新日: 2019.01.11
この対談企画では、様々な分野の方にお話をお聞きし、人生100年のビジョンを読者のみなさんと作り上げていきたいと考えています。今回は、日本とアメリカの医療をつなぐメディエゾン代表上野美和さんより、アメリカのがん治療についてお話を伺いました。
Interview Guest
1964年、和歌山県和歌山市生まれ。大阪薬科大学卒業後、日本薬剤師免許取得。
1991年、渡米。ピッツバーグ大学附属病院でボランティアを始めたことをきっかけにアメリカの医療現場に興味を持つ。
1993年にヒューストンへ移住後、アメリカ最高のがんセンターと言われるMDアンダーソンがんセンターにてリサーチナースのボランティア中にリクルートを受け、骨髄移植の科にてリサーチナース、後に半年間のトレーニングを受けデータマネージャーとして従事。
その経験を元に、「より正確な医療情報を得る環境作り」を目指し、2002年にテキサス州公認のLLCメディエゾンを設立。MDアンダーソンがんセンター、NYメモリアルスローンケタリングがんセンターの協力の元、日本の患者さんへセカンドオピニオンサービスを、日本の医療従事者へ研修のアレンジ、科学論文添削を行っている。
また、「納得できるがん医療と向き合うために」という内容で、日本帰国時に講演を行っている。2018年4月から産経新聞関西版にて海外教育事情というタイトルで子育てにて経験した記事を書いている。
interviewer:山中伸枝(やまなか のぶえ)
ファイナンシャルプランナー(CFP)
株式会社アセット・アドバンテージ 代表取締役
1993年米国オハイオ州立大学ビジネス学部卒業。メーカーに勤務し、人事、経理、海外業務を担当。留学経験や海外業務・人事業務などを通じ、これからはひとりひとりが、自らの知識と信念で自分の人生を切り開いていく時代と痛感し、お金のアドバイザーであるファイナンシャルプランナーとして、講演・相談・執筆を中心に活動。
アメリカでは患者さんを中心にしてのチーム医療が徹底される
山中:上野さんが提供されているアメリカのセカンドオピニオンサービスは、どちらの病院が協力されているんですか?
上野:実際に渡米してうけるセカンドオピニオンはMDアンダーソンがんセンター、日本でセカンドオピニオンを待つサービスは、ニューヨークメモリアルスローンケタリングがんセンターです。アメリカでは、US NEWS & WORLD REPORT が毎年アメリカ全土の5000病院の中から疾病毎にベストホスピタルを選ぶのですが、いずれも、がんの分野で1位、2位を取得する権威ある病院です。
山中:アメリカの病院と日本の病院はどちらが良いのかとか、簡単に判断できないと思いますが、違いはどのあたりにありますか?
上野:最も特徴的なところは、患者さんを中心にしてのチーム医療の徹底だと思います。アメリカの医師は、自分の専門領域がはっきり決まっていて、それを超えるときは色んな人の意見を擦り合わせする、できる限り正しい情報を患者さんに伝えるという考えが基本です。日本でもチーム医療を取り入れ始めている病院もありますが、これからの課題も多いと聞いています。
山中:なんとなく、イメージはドクターXです(笑)。
上野:また腫瘍内科医の数が圧倒的に違います。アメリカと日本の人口比が2.5倍くらいだとすると、アメリカの腫瘍内科医の数は、日本の腫瘍内科医の18倍くらいなんです。
山中:そんなに!?
上野:単純に計算するとアメリカでは専門医に出会う可能性が高くなりますよね。日本だと、良い病院を選んでも、医師を選ぶ必要があるという話を聞きますが、アメリカの場合は、だれでも良い病院を選べるし、そこに良いチーム医療があるので医師を選ばなくても治療法が一定しています。
医師の選択に関わらず同じ治療が患者さんへ提供される
山中:確かに、日本はカリスマドクターが注目されますが、その医師に診てもらえるのかというと、まず無理ですよね。
上野:アメリカの場合、専門が細分化されているので、定期的にカンファレンスが開かれ、主治医の先生以外にも外科医、放射線医、看護師など医療従事者も入り意見をすり合わせます。そうすることで医師の選択に関わらず同じ治療が患者さんへ提供されます。
山中:医者個人の技術の違いは排除されているのですね。
上野:そもそもそこまでいくまでに皆さんものすごいトレーニングを受けているんです。腫瘍内科医の場合、大学で4年、そのあと医学校が4年、内科医のトレーニングが3年、内科専門医試験を受けて、3年間腫瘍内科医のトレーニングがあり腫瘍内科医の専門医試験を受けます。そこまでに、自分の領域の線引き、自分なりにわかっていても専門医に聞かなければいけない、コミュニケーションがどれほど大切かとかそういうことを学んでいきます。
腫瘍内科医として開業するにも、医学校をでたあとに6年間の研修をうけて、専門医の資格試験を受けなければいけない。資格試験も1回受けたら終わりではなくて、5年ごとに更新が必要とか、とにかくハードなのです。
山中:日本の場合は、医師の評判とか、極端なはなしレベルの違い、当たり外れがあるけれど、アメリカの場合には、開業医も総合病院も、基本的な治療に差がないということですね。
上野:もちろん最高に素晴らしい医師も多くいますが、皆が同じことができることを優先しているところも違う点かもしれません。例えば、外科手術についても、誰もが同じことができるように「やり方」をあみだし、技術の底上げをすることが大切だと言われています。また良い病院には、世界的に高名な医師も多く集まってきます。
山中:うちの病院には、こんな有名な先生がいますよ、ではないんですね。上野さんが、日本人の方にセカンドオピニオンを届けるサービスを始めたのは、そういうアメリカの医療体制に魅力を感じたからなのでしょうか?
上野:私は元々MDアンダーソンがんセンターのリサーチナースという立場で、ボランティアで仕事を始めたんです。臨床試験のデータを集める仕事です。日本では薬剤師の資格を持っていますが、アメリカでは使えないこともあり、トレーニングを受けデータマネージャーになって、毎週20人位の骨髄移植を受けにくる患者さんのデータを管理していたんです。
日々100枚くらいのカルテを見ながら、必要なデータを打ち込むのですが、本当にアメリカ中、そして世界中から患者さんがやってきて治療法を相談していることが分かり、このがんセンターの良いシステムを理解でき、日本の方が簡単にアクセスできるようになったら、がん治療の選択肢が増えてお役に立てるのではないだろうか?と思いました。それが、きっかけです。
interviewer:山中伸枝(やまなか のぶえ)
ファイナンシャルプランナー(CFP)
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