更新日: 2019.01.11 インタビュー

人生100年のビジョンマップ ~心もお財布も幸せに生きよう~ PART9

メディエゾン代表 上野美和さんに聞く 第4回:日本人の老後の準備、それだけでいいの?

Interview Guest : 上野 美和

interviewer : 山中伸枝

メディエゾン代表 上野美和さんに聞く 第4回:日本人の老後の準備、それだけでいいの?
人生100年時代と言われるようになりましたが、はたして私たちはビジョンを持って「人生100年」を受け止めているでしょうか?
 
この対談企画では、様々な分野の方にお話をお聞きし、人生100年のビジョンを読者のみなさんと作り上げていきたいと考えています。今回は、海外での生活が長いメディエゾン代表上野美和さんに、アメリカ人の資産形成についてお話を伺いました。
 

Interview Guest

上野 美和

上野 美和(うえの みわ)

1964年、和歌山県和歌山市生まれ。大阪薬科大学卒業後、日本薬剤師免許取得。
 
1991年、渡米。ピッツバーグ大学附属病院でボランティアを始めたことをきっかけにアメリカの医療現場に興味を持つ。
 
1993年にヒューストンへ移住後、アメリカ最高のがんセンターと言われるMDアンダーソンがんセンターにてリサーチナースのボランティア中にリクルートを受け、骨髄移植の科にてリサーチナース、後に半年間のトレーニングを受けデータマネージャーとして従事。
 
その経験を元に、「より正確な医療情報を得る環境作り」を目指し、2002年にテキサス州公認のLLCメディエゾンを設立。MDアンダーソンがんセンター、NYメモリアルスローンケタリングがんセンターの協力の元、日本の患者さんへセカンドオピニオンサービスを、日本の医療従事者へ研修のアレンジ、科学論文添削を行っている。
 
また、「納得できるがん医療と向き合うために」という内容で、日本帰国時に講演を行っている。2018年4月から産経新聞関西版にて海外教育事情というタイトルで子育てにて経験した記事を書いている。
 

山中伸枝

interviewer:山中伸枝(やまなか のぶえ)

ファイナンシャルプランナー(CFP)

株式会社アセット・アドバンテージ 代表取締役 
1993年米国オハイオ州立大学ビジネス学部卒業。メーカーに勤務し、人事、経理、海外業務を担当。留学経験や海外業務・人事業務などを通じ、これからはひとりひとりが、自らの知識と信念で自分の人生を切り開いていく時代と痛感し、お金のアドバイザーであるファイナンシャルプランナーとして、講演・相談・執筆を中心に活動。

日本の医療費は驚くほど安い

山中:やはり日本と比べアメリカでの生活は様々なリスクと背中合わせなのではないかと感じます。医療保険制度しかり、雇用環境しかり。長くアメリカに住んでいらっしゃる上野さんから見て、日本ってどういう印象ですか?
 
上野:以前日本のテレビで、「いくらあったら老後は大丈夫か」といった番組を見て、正直「本当にその位のお金だけで過ごせるの?」って思いました。日本は生きていくうえで大切な教育と医療が安いですよね。そのうえ、老後だってこの程度で過ごせるなんてって驚きました。
 
山中:おっしゃる通りアメリカの教育費は高いですよね。
 
上野:うちの息子は、アメリカの中では低いほうの学費だったかもしれないですけど、年間の学費が5万ドル超えていました。
 
山中:日本の4倍ですね。
 
上野:それに日本は医療費も驚くほど安いです。
 
山中:日本は国が医療をコントロールしているから安い費用で全国民が一定の医療を受けられるけれど、一方で新しい医療技術や薬などが取り入れにくい。医療とはとてもお金がかかるものなのだから、お金が出せる人はどんどん出して、それを研究費に回していかないと発展しない、といった議論されていますね。
 
上野:医療の研究費って莫大です。MDアンダーソンがんセンターでは、かなりの富裕層が大きな金額の寄付をされることが多く、何兆円とか寄付してそれで病棟を建てたりしています。寄付は税金控除になるので、税金対策としても医療に寄付する方も少なくありません。
 
山中:先ほど日本人が考える老後のために準備しなければならないお金が少なくてびっくりしたとおっしゃいましたが、一般的にアメリカ人というのは、老後の備えってどのように考えていらっしゃるのでしょうか?
 
上野:一般的かは不明ですが、ファイナンシャル・アドバイザーの方達が勧めるのは億単位かもしれないですね。
 
山中:億ですか!
 
上野:そのため、良いアドバイスをしてくれるファイナンシャルプランナー、ファイナンシャルアドバイザーを探したり、紹介しあったりしています。
 
山中:投資にまわすお金って、家計のうちどの程度の割合になるのでしょうか?
 
上野:まずIRAや401k※関係は、余裕がある限りほぼ上限いっぱいです。※老後資産のための特別口座。日本におけるiDeCoのようなもの。
 
山中:税制優遇のある制度をめいっぱい使っていくんですね。
 
上野:お金を貯めること、増やすことはみなさん必死だと思います。
 

教育が自分の人生設計の土台

山中:お話をお聞きしていると、アメリカ人と日本人の差は、大きいですね。
 
上野:社会の仕組みが違うからでしょうけれど、ちゃんと収入があるうちに、やっとかなきゃみたいな感じです。また、貯めているだけだったら、増えていかないし、景気がよくなると物価が上がりますから、物価の上昇と貯めている分が合致していかないと、生活していけないって考えています。
 
山中:よく両国の意識の違いは教育の違いにあるなどといった話がありますが、そういうお金のこととか学校で教えてもらったりするのでしょうか?
 
上野:社会の仕組みという観点でいえば、政治についても子供たちに小さい頃からいろいろ遊びを通して教えていくんです。息子も3歳のときに「学校で選挙するんだ」みたいな話をしていました。
 
山中:3歳で!
 
上野:そのときは〇〇が好きだからといった、他愛ない理由で投票するんですけれど、それをすることによって、みんな政治に興味を持ち始めて、高校ぐらいになる頃には、大統領選とかに立候補した人たちのスピーチをテレビで見て、友達どうしで議論しあったり、あの人が言うことはまちがっているとかいうようなことも話し合います。
 
それと同時に、大学では教育費で借金をする生徒がたくさん出てくることもあって、お金のことなどにも興味を持っていくのかなって思います。
 
山中:なるほど。そういう教育が自分の人生設計の土台になるのでしょうね。
 
上野:年金だって勤め先によってちがいますし。そもそも大学卒業時に大きな借金を抱えている子もたくさんいるので、その借金を返さなければいけない、教育に投資した分を回収するという意識があったりするので、キャリアに対しても前向きです。今、生活ができる状況にあるのならば、将来のために最大限の努力をするのが当たり前という感覚です。
 
山中:とても参考になるお話ですね。ちなみに上野さんは今後日本に戻られるお気持ちもあるんですか?
 
上野:はい、いつかはと思っています。日本ってやっぱり安心感があります。アメリカだとスーパーの駐車場でも変な人がいないか自然と警戒してしまっていますが、日本だと女性一人でも安心して夜も出歩けます。以前息子が日本でお財布を失くしたことがあったのですが、まるまる全部残って帰ってきたことに息子はとても感動していました。やはり日本で得られる安心感は素晴らしいと思います。
 
山中:今日は日本の良さも改めて感じつつ、アメリカでのがん治療のオプションなど様々なことを教えていただきました。ありがとうございました。
 

 
interviewer:山中伸枝(やまなか のぶえ)
ファイナンシャルプランナー(CFP)
 

人生100年のビジョンマップ ~心もお財布も幸せに生きよう~ PART9

ライターさん募集