更新日: 2019.08.27 その他暮らし
生活保護受給世帯の高校生のアルバイト等についての取り扱いはどうなっているのか?
入学前の入学金等に関しては、奨学金は利用できず、アルバイトや奨学金以外の貸付金に頼らざるを得ません。
しかし、生活保護受給世帯の高校生がアルバイトをして収入を得ても、その分保護費が減額されるとなると、大学等の入学金等に利用できません。
これでは、大学等への進学を諦めざるを得ません。アルバイトをした意味もありません。
そこで、生活保護受給世帯の高校生のアルバイト等についての取り扱いはどうなっているのか解説します。
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/
収入と保護費の関係
厚生労働大臣が定める基準で計算される最低生活費と収入を比較して、収入が最低生活費に満たない場合に、最低生活費から収入を差し引いた差額が保護費として支給されます。
収入には、アルバイトなどの就労収入、年金、児童扶養手当等社会保障給付、親族からの援助、借入金などが収入として認定されます(収入認定)。
収入認定の例外
収入がある場合、すべての収入を届け出る必要があります。しかし、届け出た収入がすべて世帯収入として認定され、保護費が減額されるわけではありません。
収入認定されないものとして、社会通念上収入として認定することが適当でないもの(祝金、香典、社会事業団体そのほかの臨時的に恵与された慈善的性質を有する金銭など)や、生活保護利用世帯の自立更生のために充てられる額(高校生のアルバイト収入を生業扶助では賄いきれない額に充てる場合など)、生活保護に上乗せする趣旨で給付される手当などがあります。
保護費から高校の教育費は支給されるか
保護費には、生活扶助、住宅扶助、教育扶助、医療扶助、介護扶助、出産扶助、生業扶助、葬祭扶助があります。義務教育の教育費は教育扶助が支給されますが、高校の教育費は生業扶助の技能習得費の一貫として、高等学校等就学費が支給されます。
具体的には、基本額(学用品費や通学用品費など)、教材代、入学料及び入学考査料・授業料(公立高校相当分額)、通学のための交通費、入学準備金、学習支援費です。
なお、改正により、高等学校の受験料支給回数の拡大や制服等の買い直し費用が支給されます。
高校の学習支援費がクラブ活動費に限定され、年額61,800円(金銭支給)から年額83,000円を上限とする実費支給に変更になります。従来の学習支援費の対象であった学習参考書や一般教養図書などは対象外になりました。
また、高校の入学準備金(制服等の購入費)が63,200円(実費上限)から86,000円(実費上限)に増額されます。
高等学校等就学費の不足分
高等学校等就学費の支給対象外となる、経費や基準額の範囲内でまかないきれない経費(修学旅行費や私立学校等における授業料不足分など)については、アルバイトや奨学金等の貸付金によりまかなうことは可能です。収入認定されません。
なお、必要と認められた額以上の貸付けを受けた場合、収入として取り扱われるため、生活保護費の給付が減額されるうえ、将来は返済しなければなりません。
貸付金を利用する場合は、事前に該当する福祉事務所または福祉保健所と相談のうえ、必要最小限度の額を利用するように注意してください。
高校生のアルバイト
高校生のアルバイトは、収入から基礎控除、未成年者控除を差し引いた金額を、高等学校等就学費の支給対象とならない経費等について充てた場合、修学のために必要な最小限度の額であれば収入認定されません。
経費等の範囲は拡大傾向にあり、私立高校の授業料の不足分、修学旅行費、クラブ活動費(学習支援費を活用しても不足する額)のほか、学習塾・家庭教師の授業料・教材費・交通費などの塾費用も収入認定の除外対象です。
また、各種学校または大学に修学するために必要な経費(事前に必要な入学料等に限る)も収入認定から除外されます。
ただし、収入がある場合、すべての収入を届け出る必要があります。収入が発生したら必ずケースワーカーに申告してください。収入を申告せずに隠していた場合、保護費の返還を求められる場合があります。
Text:新美 昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。