最終更新日:2019.09.03 公開日:2017.12.12
暮らし

生活保護世帯の子どもに大学進学支援金最大30万円支給へ 「貧困の連鎖」断ち切れるか

大学、短大、専門学校への進学率は、全世帯では約7割ですが、生活保護世帯では約3割にすぎません。今の生活保護制度では子どもは高校卒業後に働くことを前提としており、生活保護を受けながらの大学等進学は認められていません。
大学等に進む場合は「世帯分離」をする必要があります。

しかし、親の保護費が減る、子どもは学費や生活費を自力で賄わなければならず、このことが生活保護世帯の子どもの大学等進学を困難にしています。
この教育格差が親から子どもへの「貧困の連鎖」を生んでいるとして、対応を求める声が広がっていました。
新美昌也

執筆者:

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

詳細はこちら
新美昌也

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執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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大学等に進学するには「世帯分離」をする必要がある

高校では、「生業扶助」(高等学校等就学費)として、授業料、交通費、学用品費等が給付されます。大学や専門学校については、生活保護を利用しながら進学することは、現在の運用上は認められていません。
公共職業訓練については、生活保護を利用しながら就労に向けて技術等を身に付けるために職業訓練校に通うことができます。大学等に進学する場合は、生活保護を利用している親の世帯から、子どもを切り離す「世帯分離」をする必要があります。
「世帯分離」といっても、別居する必要はなく、そのまま同居を継続することができます。
 

世帯分離するとどうなるの?

世帯分離すると、子どもの分の「生活扶助」などが減らされます。例えば東京23区や大阪市で母と子2人の3人世帯なら、毎月支給される食費などの生活費が4万4千円、住宅費も4千~6千円ほど減ります。また、別世帯になった子どもは医療扶助の利用ができなくなります。
 
子どもは、国民健康保険(国保)にも加入することになりますので保険料の負担も増えます。子どもは、自分の学費や生活費も工面しなければならなくなります。これが、大学等進学を諦める要因となっています。
なお、国保の保険料が払えない場合は、保険料の軽減・減免措置や医療機関独自の助成制度として「無料低額診療事業」がありますので、知っておくと良いでしょう。
 
後者は、生活困難な方が経済的な理由によって、必要な医療サービスを受ける機会が制限されることのないよう、医療保険加入の有無、国籍は問わず、一定期間、無料又は低額な料金で診療を行うものです。事業を行っている医療機関は都道府県のホームページで公開されています。
ただし、仮に診療費の自己負担が無料になっても薬代はかかりますので注意してください。20歳になると国民年金に加入しなければなりませんが、国民年金保険料が納められない場合は、「学生納付特例」を申請しましょう。国民年金保険料の納付が猶予されます。
 

受験料や入学金の工面の方法は?

生活保護費は収入があると減額されます。「借入れ」も収入となります。ただし、保護の実施機関に事前の承認を得ることを条件に、子どもが大学や専門学校等に入学するために必要な経費(事前に必要な入学金等に限る)に充てるための借入れを、収入認定の除外扱いとしています。借入先としては、労働金庫(日本学生支援機構の入学時増額貸与奨学金を担保にした「入学時必要資金融資」)、母子・寡婦福祉資金、生活福祉資金の貸付金などがあります。
 
また、入学金等にあてるためのアルバイトも事前の承認を得れば収入認定の除外扱いとなっています。なお、18歳満期の学資保険の保有は認められていますので、入学金等に利用できます。

(参考)
「生活保護世帯から大学・専門学校へ進学するために」(反貧困ネットワーク神奈川)
http://wriver.my.coocan.jp/gakuhi/leaf_seiho_shingaku.pdf
 

進学後の学費や生活費の工面は?

基本的には、日本学生支援機構の奨学金やアルバイトで賄います。まず、借入れの前に大学独自の給付型奨学金や減免制度を検討しましょう。国立大学であれば家族が生活保護を受けていると授業料が免除になります。
大学独自の入学前予約型給付奨学金で入学前に奨学金の予約ができれば、入学後、確実に給付奨学金をもらえるので安心です。日本学生支援機構の奨学金には、もらう給付型の奨学金と借りる貸与型の奨学金があります。
 
貸与型の奨学金には、無利子の第一種奨学金と有利子(上限金利3%)の第二種奨学金があります。第一種奨学金の貸与額は、月額6.4万円~2万円、第二種奨学金の貸与額は月額3万円~12万円です。月額貸与とは別に、入学一時金として、月額の初回振込時に増額して借りることができる有利子の入学時特別増額貸与奨学金があります。
 
貸与額は10万円~50万円です。奨学金は、高校3年生(卒業年次)の春に予約できますので予約するようにしましょう。入学時増額貸与奨学金は採用候補者に決定されると、先に説明したように、労働金庫が入学前に必要な資金を融資(最高50万円)してくれます。
 
生活保護世帯の生徒であれば、日本学生支援機構の給付型奨学金も利用できる可能性があります。
ただし、採用枠が各高校数名程度と少ないので狭き門です。貸与奨学金との併用もできます。なお、日本学生支援機構の給付奨学金は、高校で申込む予約採用のみですので、注意しましょう。
 
進学後は申し込めません。給付月額は、私立下宿生が4万円、私立自宅生と国立下宿生が3万円、国立自宅生が2万円です。
 

大学進学等に一時金支給へ

政府は、生活保護世帯の子どもの大学や専門学校への進学を支援するため、2018年4月から入学時に一時金を支給する方針です。一時金の名称は「新生活立ち上げ費用」です。パソコンや教材のほか、一人暮らしを始める場合は生活用品などに使うことが想定されています。親元を離れる場合は30万円、同居を続ける場合は10万円とし、さらに生活保護費の住宅費の減額ルールをやめる予定です。
 
2018年の通常国会に提出する生活保護法の改正案に盛り込まれます。
なお、大学生協の調査(2016年度※)によると、下宿生の住まい探しの費用(礼金、敷金、仲介手数料、前家賃など)は地域により約15~26万円、新生活用品購入費用は約30~36万円となっています。

※全国大学生活協同組合連合会「親子で要チェック!大学生活ハウマッチ」
www.univcoop.or.jp/parents/howmuch/index.html
 
Text:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。
http://fp-trc.com/

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