【単発アルバイトの場合】新型コロナウイルス問題で仕事が中止になった! 休業補償はどうなるの?
配信日: 2020.04.20
執筆者:上野慎一(うえのしんいち)
AFP認定者,宅地建物取引士
不動産コンサルティングマスター,再開発プランナー
横浜市出身。1981年早稲田大学政治経済学部卒業後、大手不動産会社に勤務。2015年早期退職。自身の経験をベースにしながら、資産運用・リタイアメント・セカンドライフなどのテーマに取り組んでいます。「人生は片道きっぷの旅のようなもの」をモットーに、折々に出掛けるお城巡りや居酒屋巡りの旅が楽しみです。
中止が相次ぐ試験で、副業にも影響が
政府からは、小・中・高の各学校への臨時休校要請に続いて、「換気が悪く、人が密に集まって過ごすような空間に集団で集まることを避けてください」という呼びかけが3月1日にされました(※1)。こうした状況もあって、この時期に多い各種試験でも中止・延期のケースが続出しました。
資格試験などの現地運営実務、実はアルバイトスタッフが多くを担っているケースは少なくありません。試験当日には、会場や各種体制の設営、案内、さらに個別の教室においては、受験票と本人の確認、問題用紙や解答用紙の配布・回収・枚数確認、試験中の見回りなどの業務で、多くの人手が必要です。
試験実施機関の職員など、自前スタッフで全部カバーすることは人数的にも難しく、中央本部詰めや各会場の責任者以外は、当日だけのアルバイトスタッフを人材派遣会社などから集めているのが実態です。試験規模が大きく多数の会場で実施する場合、特にその傾向が高まります。
また「働き方改革」の進展により副業をする人も増えている中で、土日祝日に実施されることの多い試験は、日程的にも副業アルバイトの対象として人気を集めているようです。試験の中止は、こうした人たちにも大きく影響します。
真逆に見える2つの対応
筆者の知人で、リタイア後に複数の人材派遣会社に登録し、近ごろは試験監督の単発アルバイトをする機会が多い人から、次のような話を聞きました。
(1)試験監督アルバイトが決まっていた3月の試験2件(派遣会社は別々)が中止になった。いずれも、新型コロナウイルス感染拡大を懸念した実施機関の判断によるものだった。
(2)派遣会社A社からは、試験中止による給与の支払いはしないと連絡があった。
(3)派遣会社B社は、支給予定給与の6割を休業手当として支払ってくれた。
やむを得ない状況による試験中止で仕事がなくなった点は同じですが、給与の支払いでは2社の対応が真逆なことに驚きました。
法定の「休業手当」とは
厚生労働省のサイト(※2)では、新型コロナウイルスに関連して労働者を休業させる場合の留意点として、次の骨子が説明されています。
・賃金の支払いの必要性の有無などについては、個別事案ごとに諸事情を総合的に勘案するべきだが、労働基準法第26条では、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合には、使用者は、休業期間中の休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払わなければならないとされている。
・不可抗力による休業の場合は、使用者の責に帰すべき事由に当たらず、使用者に休業手当の支払義務はない。
・上記の不可抗力とは「その原因が事業の外部より発生した」と「事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない」の2つの事故要件を満たす必要がある。
単発アルバイト(日雇い派遣)でも、派遣元には労働条件や就業条件を書面などで明示することが義務付けられ、これによって派遣元との雇用契約が成立することになります。知人のケースでは、2件とも書面などが交付されていました。
新型コロナウイルス感染拡大を懸念した中止理由は同じですが、休業手当の取り扱いでは、労働基準法の原則通り(B社)か、原則の例外(A社)かで真逆のような対応に分かれたようです。
まとめ
上述の厚生労働省のサイト(※2)では、「……欠勤中の賃金の取り扱いについては、労使で十分に話し合っていただき……」とあります。しかし単発アルバイトでは対応は難しく、結局、派遣会社のさじ加減次第なのが実情でしょう。
今回のケースは、【結局働いていないのだから、A社の対応が普通】なのか、【ほかの用事予定も入れずにあてにしていた稼ぎがなくなるのだから、休業手当は当然】と思うのか、意見もさまざまでしょう。
ともあれ、試験を受ける人やその試験を支える側にとっても、新型コロナウイルス感染問題の早期収束が大いに望まれるところです。
出典:
(※1)厚生労働省「新型コロナウイルスの集団感染を防ぐために」
(※2)厚生労働省「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」
執筆者:上野慎一
AFP認定者,宅地建物取引士