医療費が心配…医療費負担を軽減できる公的制度とは?(2) ~人工透析の場合~

配信日: 2020.05.19

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医療費が心配…医療費負担を軽減できる公的制度とは?(2) ~人工透析の場合~
重い医療費負担を軽減できるものにどんなものがあるか、前回は人工透析が必要になったAさん(後期高齢者)の紹介と、高額療養費制度を見てきました。高額療養費制度はAさんだけでなく誰にでも適用できる制度でした。今回は人工透析が必要なAさんが利用できる制度を見ていきます。
 
小山英斗

執筆者:小山英斗(こやま ひでと)

CFP(日本FP協会認定会員)

1級FP技能士(資産設計提案業務)
住宅ローンアドバイザー、住宅建築コーディネーター
未来が見えるね研究所 代表
座右の銘:虚静恬淡
好きなもの:旅行、建築、カフェ、散歩、今ここ

人生100年時代、これまでの「学校で出て社会人になり家庭や家を持って定年そして老後」という単線的な考え方がなくなっていき、これからは多様な選択肢がある中で自分のやりたい人生を生涯通じてどう実現させていくかがますます大事になってきます。

「未来が見えるね研究所」では、多くの人と多くの未来を一緒に描いていきたいと思います。
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特定疾病療養(マル長)

特定疾病とは「長期特定疾病」のことです。俗にマル長と呼ばれています。長期にわたって療養が必要な疾病について、医療費が助成されます。対象となる疾病は血友病、人工透析を必要とする腎不全、血液製剤によるHIV感染症です。
 
Aさんの場合は人工透析が必要となり、特定疾病療養の対象となります。
 
この適用を受けるためには加入している健康保険などで申請書を入手し、申請書内の「医師の意見欄」に医師の証明をもらい、健康保険証を添付して健康保険の窓口へ提出します。
 
申請した月の1日から適用されますので、人工透析を受けることになった月内に早めに手続きすることが必要です。申請すると「特定疾病療養受療証」が交付されます。特定疾病療養受療証には有効期限がなく、更新は不要です。
 
特定疾病療養受療証を医療機関の窓口で提示すると、1ヶ月間の医療費の自己負担額上限が1万円(人工透析の場合の上位所得世帯は2万円)までになります。
 
前回説明した高額療養費制度で、月の自己負担限度額が1万8000円だったAさんも、特定疾病療養受療証を提示することにより、1ヶ月の自己負担上限(人工透析に関わる診療・治療分)が1万円となりました。

重度障害者医療費助成

身体障害者手帳1、2級(一部の県では3級まで)の障害者が医療を受けた場合に、医療保険などの自己負担分に対して、各都道府県や自治体が独自の制度として助成を行う「重度障害者医療費助成制度」があります。条件や助成内容は各自治体によって異なります。
 
腎臓機能障害は身体障害の1つとして認められており、腎臓機能が一定のレベルまで低下し回復が見込めない場合、透析治療の有無に限らず、身体障害者手帳の交付申請が可能です。
 
申請するためには指定医(身体障害者福祉法第15条により、都道府県知事が障害ごとに定めた医師)の診断を受け、身体障害者診断書・意見書を作成してもらいます。そして本人の住民票がある市町村の福祉担当窓口に申請します。
 
Aさんの場合、人工透析を受けることになり身体障害者手帳の申請をし、1級の認定を受け手帳が交付されました。そして横浜に住むAさんは横浜市に重度障害者医療費助成の申請をして「重度障害者医療証」が交付されました。
 
重度障害者医療証交付後は健康保険証とともに医療機関の窓口へ提示することにより、自己負担がかからないで診療を受けられます。Aさんの場合は横浜市の重度障害者医療費助成を受けているので横浜市内の医療機関での診療の保険対象分の自己負担がゼロとなります。
 
これは人工透析のための通院でも負担がかからなくなります。また医療保険を使って訪問看護を受けているAさんは、こちらの保険対象分の自己負担もなくなります。
 
Aさんのケースは横浜市でのケースです。条件や助成内容は各自治体によって異なりますので注意が必要です。
 
なお、身体障害者手帳を持っている人は交通機関(タクシー、鉄道、バス、飛行機、有料道路など)の料金割引などの福祉サービスでの利用や、所得税・住民税の控除、自動車税(種別割・環境性能割)の免除・減免など税制面での優遇措置を受けられることもあります。

まとめ

長い療養生活での医療費を心配されていたAさん。しかし、これまで見てきた制度を利用することにより、その費用負担が軽くなることで安心して生活を送られています。
 
今回はAさんのケースで利用できた制度を見てきました。他にも国の制度として医療費や薬代を軽減できる自立支援制度や生活費を支援する傷病手当、認定された病気によっては助成がある制度などがあります。
 
日本は病気やケガに対しての制度がいろいろ用意されています。しかし、どの制度も申請が必要ですので、利用できる制度をしっかり確認しましょう。各自治体や病院のソーシャルワーカーに相談するのもいいでしょう。
 
(参考)
中四国エイズセンター 特定疾病療養(マル長)について
横浜市 重度障害者医療費助成
 
執筆者:小山英斗
CFP(日本FP協会認定会員)


 

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