児童手当特例給付が廃止。いつから? 対象者は?
配信日: 2021.05.01
現在、児童手当の支給には、所得制限が設けられており、世帯主の年収が約960万円を上回ると特例給付対象となります。
2022年10月より、この特例給付の所得制限が見直しされます。今回は児童手当特例給付の見直しについて解説します。
佐賀FPオフィス 代表、ファイナンシャルプランナー、一般社団法人日本相続支援士会理事、佐賀県金融広報アドバイザー、DCアドバイザー
立命館大学卒業後、13年間大手小売業の販売業務に従事した後、保険会社に転職。1 年間保険会社に勤務後、保険代理店に6 年間勤務。
その後、コンサルティング料だけで活動している独立系ファイナンシャルプランナーと出会い「本当の意味で顧客本位の仕事ができ、大きな価値が提供できる仕事はこれだ」と思い、独立する。
現在は、日本FP協会佐賀支部の副支部長として、消費者向けのイベントや個別相談などで活動している。また、佐賀県金融広報アドバイザーとして消費者トラブルや金融教育など啓発活動にも従事している。
児童手当の制度と見直しについて
児童手当は、家庭の生活の安定に寄与するために設けられています。0歳から中学校卒業までの児童を養育している方が対象です。このように、「家庭の生活の安定」が目的とされている児童手当ですが、厚生労働省の調査によると、世帯年収が高くなると、「使う必要がなく残っている」という回答が増えています。
このような背景の下、2022年10月より、所得制限の見直しが行われることが決定しました。
児童手当、いくら支給されてるの?
現行制度の児童手当の支給額は、0歳~3歳未満まで一律1万5000円、3歳~小学校修了まで1万円(第3子以降は、1万5000円)、中学生は一律1万円です。ただし、児童手当の支給額には、特例給付として所得制限が設けられています。
児童手当、何が変わるの?
現行制度の児童手当の支給額には、所得制限が設けられており、世帯主の年収が約960万円(子ども2人の専業主婦の場合)を上回る場合、支給額は一律5000円となります。この所得制限が特例給付対象として扱われます。
今回の児童手当の見直しは、世帯主の年収が約1200万円を上回る場合、この特例給付が廃止となります。つまり、一律5000円の児童手当の支給がなくなることになります。
なぜ、児童手当の見直しがされるの?
今回の見直しにより、特例給付の廃止対象の子どもは約61万人で、年間で約370億円の財源が得られることが見込まれています。また、この財源は、待機児童対策に充てられることになっています。
では、少子化対策が叫ばれる中、なぜ児童手当を見直すことになったのでしょうか? 今回の児童手当の見直しの背景には、社会保障費の増加が挙げられます。まさに、政府として、財源確保は待ったなしの課題です。
2019年10月より幼児教育・保育無償化が始まり、子育て世代の支援は手厚くなったことがあります。また、前述したように世帯年収の高い世帯は、児童手当を使う必要がなく残っているという回答も増えています。このような背景より、年収の高い世帯の児童手当カットが決まったことが想像できます。
ただ、今回の児童手当の所得制限の見直しですが、問題も指摘されています。所得制限が世帯年収ではなく、夫婦一方の年収だけで判断されるためです。仮に、夫婦ともに年収900万円で、世帯年収1800万円の場合でも、児童手当を満額受給できることになります。
今後も少子化対策として、財源確保について議論されることでしょう。全ての世帯に全く不公平感のない政策実現は難しいのかもしれません。ただ、政府には十分な説明と制度設計を期待したいところです。
<出典>
内閣府 児童手当制度のご案内
厚生労働省 「平成24年児童手当の使途等に係る調査」の結果を公表 ~使い道と使用金額を調査~
執筆者:廣重啓二郎
佐賀FPオフィス 代表、ファイナンシャルプランナー、一般社団法人日本相続支援士会理事、佐賀県金融広報アドバイザー、DCアドバイザー