更新日: 2021.05.19 その他暮らし
どうしよう、愛犬が隣人にかみついた!どんな法的責任が生じる?
そのような場合、どのような法的責任を問われることになるのでしょうか。また、こういった事態への備え(ペット保険など)は必要なのでしょうか。
執筆者:佐々木達憲(ささき たつのり)
京都市役所前法律事務所弁護士
相続・事業承継を中心とした企業支援と交通事故が主要対応領域。弁護士としての法律相談への対応だけでなく、個人投資家兼FPとして、特に米国株投資を中心とした資産運用に関するアドバイスもご提供。京都を中心する関西圏に加え、毎月沖縄へも通っており、沖縄特有の案件も数多く手掛けている。
愛犬が人にかみついてしまった場合の責任~その1 民事上の責任~
法的責任としては、大きく分けて2つの方面で問われることとなり得ます。
1つ目は、民事上の責任、いわゆる損害賠償責任です。動物の占有者、すなわち飼い主は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負います(民法718条1項本文)。
人にかみついてしまった場合に、その治療費や通院慰謝料等を賠償しなければならないだけでなく、物にかみついた結果その物を壊してしまったとか、他人のペットにかみついて傷つけてしまった場合の損害も、賠償責任がおよぶ範囲となります。
また、かみついた場合に限らず、飼い犬が飛び出していったために走行中の自転車に接触して運転者にけがをさせてしまった場合等も、同じく責任を負うこととなり得ます。
愛犬が人にかみついてしまった場合の責任~その2 刑事上の責任~
2つ目は、刑事上の責任、いわゆる犯罪が成立することに対する刑罰という意味での責任です。
飼い主の過失により、飼い犬が人にかみつきけがをさせてしまった場合、過失致傷罪となり30万円以下の罰金または科料に処する刑を受ける可能性があります(刑法209条)。
けがをさせるにとどまらず死亡させてしまった場合には、過失致死罪(刑法第210条)が成立します。さらに、「重大な過失により死傷させた」場合には、重過失致死傷罪として5年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金に処せられます(刑法第211条)。
なお、過失により飼い主が他人の物を壊してしまった場合やペットを傷つけてしまった場合は、刑事上の責任は負いません。器物損壊等罪(刑法第261条)は故意、つまりわざとやった場合のみを対象としており、過失でやってしまった場合を処罰する規定は存在しないからです。
条例の規定にも注意
法律とは別に各都道府県の条例でも、飼い犬に対する飼い主の責務が定められています。
例えば東京都の場合、東京都動物の愛護および管理に関する条例第9条で、飼い犬が走り去って他人に危害を加えないための遵守事項について定め、第29条では飼い犬が他人にかみついて危害を加えた場合の応急処置等、飼い主としてとるべき措置について規定しているのです。
事故発生に対する備え
前項で上述した条例の規定等に従い、事故が発生するのを防止する措置を常日頃からとっておくことが、まず何よりも大切です。
それと同時に、万が一飼い犬が人にかみつくという事故が発生してしまった場合の賠償に備え、ペット賠償責任保険等に加入しておくことも、考えたほうがよいでしょう。
飼い犬が人を傷つけ大けがさせてしまったら、思いもよらない高額な損害賠償責任が発生してしまうこともあり得ます。
もっとも、人によってはすでに加入している個人賠償責任保険でカバーできることもありますので、重複の加入とならないよう注意は必要です。
個人賠償責任保険は火災保険の特約で加入している場合もありますし、ご自身の加入している保険の内容についてしっかりと確認をしたうえで、検討をしましょう。
執筆者:佐々木達憲
京都市役所前法律事務所弁護士