生活保護を受給するための要件とは?
配信日: 2021.06.22 更新日: 2021.09.10
そこで注目されるのが国の支援制度の1つである生活保護です。ネットではさまざまな情報があふれていますが、改めてこの制度について整理していきます。
執筆者:秋口千佳(あきぐちちか)
CFP@・1級ファイナンシャル・プランニング技能士・証券外務員2種・相続診断士
生活保護の制度とは?
生活保護とは、憲法25条の「健康で文化的な最低限度の生活」を国民が送れるように、生活に困窮している人に対して、その困窮の程度に合わせて、必要な保護を行うとともに、自立を促すための制度です(※1)。相談・申請から支給までの概要は、以下のとおりです。
(1)手続き
生活保護の相談・申請窓口は、お住まいの地域を管轄している「福祉事務所」の生活保護担当です。
福祉事務所の一覧は厚生労働省のホームページで確認できます。(※2)
●制度の内容と必要書類等の説明
申請書を提出すると、以下に示すように、さまざまな調査が行われます。
●家庭訪問等による実地調査
●預貯金や不動産の調査
●三親等内親族に対する扶養義務者調査
●年金等や収入の調査
●就労の可能性の調査
●厚生労働大臣が定める基準に基づく最低生活費から、収入(年金や就労収入等)を差し引いた額を保護費として毎月支給
●保護費の受給期間中は、収入の状況を毎月報告する必要あり
生活保護を受けるための要件とは?
一番に気になるのは、生活保護を受けるための要件といくらもらえるのか、ということだと思います。
(1)要件
a 収入が厚生労働大臣により決められた最低生活費(次の(2)を参照)に足りない
b 病気などで働くことが難しい
働けるのであれば、その能力に応じて働く必要があり、それでも最低生活費に足りない場合や、病気などでどうしても働けない場合に認められます。
c 生活に利用されていない土地・家屋、貴金属などの資産を持っていない
生活していくうえで不要と考えられる資産については売却し、それを生活費に充てる必要があります。自動車やバイクもこの資産に該当しますが、体が不自由であるといったことで必要である場合は除きます。
d 年金や貸付制度など、可能な制度を使ったあとで、他に方法がない
生活保護は、国や地方自治体の他の制度を使ったうえでも最低生活費に足りないという状況のもと、最終的に選択できる制度なので、まずは利用できる制度がないか相談時に探すことになります。
e 親族から生活費を工面してもらえない
生活保護の申請書を提出すると、戸籍上の三親等内の親族には扶養義務があるとし、その親族には扶養できるかどうかの確認の手紙が送られます。相談時にこの親族には手紙を送らないでほしい、ということは伝えられるので安心してください。
なお、三親等内の親族とは、以下のとおりです。
●直系血族:両親、子ども、祖父母、孫など
●兄弟・姉妹
●(特別な事情があるとき)おじ・おば・めい・おいなど
(2)支給される保護費
生活保護の申請書を提出し、さまざまな調査や資産の精算が行われ、最低生活費から収入を差し引き、足りない部分について、保護費として支給されます。
最低生活費はお住まいの地域により異なりますので、詳細は相談時に福祉事務所にお問い合わせください。
最低生活費の計算方法とお住まいの地域の級地は厚生労働省のホームページでご確認いただけます。(※3、4)
まずは相談から
生活に困窮し、どうしたらよいか分からないときは、まずは福祉事務所を訪ねてください。そうすれば自分が進むための道筋の説明を聞くことができ、一筋の明かりが見えてくるはずです。1人で不安なときは、お近くのファイナンシャル・プランナーに相談してみるのも1つです。何事も深呼吸をし、まずは勇気を出して行動してみてください。
出典
※1 厚生労働省 生活保護制度
※2 厚生労働省「福祉事務所」ページ内「福祉事務所一覧(令和2年4月1日現在)」
※3 厚生労働省「生活保護制度」ページ内「生活扶助基準額について」
※4 厚生労働省「生活保護制度」ページ内「お住まいの地域の級地を確認」
執筆者:秋口千佳
CFP@・1級ファイナンシャル・プランニング技能士・証券外務員2種・相続診断士